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===9===

 

「で、どうするつもりなの?」

「ん?んー……まずは、誰にも邪魔されない所が欲しいかなぁ」


 俺はリアの質問に、唇に指を当てながら答えた。すると、リアはじとりとした目でこちらを見つめた。


「……勉強をさぼりたいって事?」

「ちゃんと勉強はするって。そうじゃなくて、実験室みたいなのが欲しいわけ!」


 そう、言うなれば、秘密基地とかアトリエとか、そういった何かだ。

 というのも、魔法の研究やらなにやらでこれ以上屋敷の庭に色々とダメージを与えるわけにはいかないのだ。周りには配慮していたが、屋敷の中となると限界がある。だから、もっと別の所が欲しいわけである。


「ねーえー、リアー。なんかいい方法とか、いい所ねーかなぁ?」

「うぅん……そうだなぁ……」


 俺がダメ元でリアに無茶ぶりをしてみると……それでも真剣に考えてくれているようだ。


 ほんと、コイツ良い奴だよな。将来悪い奴に騙されたりしないか心配だ。そのうち、不埒な奴を自動でぶっ飛ばすみたいな魔法を開発してやろうかな。


「んー……一つだけ、心当たりがあるんだけど」

「え、あんの!?」

「なんで振っておいて驚いてるのさ……」


 いや。まさか、本当に心当たりが出てくるとは思っていなかった。俺的に「ごめん思いつかないや」っていう感じの回答になるんだろうなぁと思って「だよなぁ」という回答を心の中で用意していたくらいだ。


「で、で、で、その心当たりって?」

「……町の離れた場所に、レインズ家名義なのだけれど使ってない空き家があったはず」

「おー!いいじゃんいいじゃん!」


 なんと、ピンポイントに空き家があるらしい。しかも離れた場所という事は、多少爆発とかしても大丈夫かもしれない。なんというご都合展開!素晴らしい!


「でも、以前からゴーストが出るとかで封鎖になっていたから、無理かなって」


 ……と、そんなトントン拍子に事が進むわけではなかったようだ。


 前世では、ゴースト……いわゆる心霊現象というのは、見間違いだったり、加工されていたりと信憑性に欠くものが大半なのだが、この世界では普通に存在している。魔法とかそういった物の作用で思念が実体化するものがゴーストだ。強烈な意思の名残といえば良いだろうか。

 これが割と厄介で、普通の物理的な攻撃は効かず、教会で特殊な祈りを捧げた護符やら神聖魔法と謳っている魔法を駆使して消してやらないと、そのまま残り続けるのだ。そして、教会にいわゆる寄進を大量に行わないと、基本的には教会は動かない。

 ゴースト自体も邪悪な思念でもなければそこまでの害はないし、発生することも稀だから、放置されることが大半というわけだ。


「うーん、ゴーストかぁ……一度見に行ってみるか」

「いや、ダメだよ。ヤバい奴だったら僕たちだけじゃ対処できないでしょ」

「むー……護衛が必要、か」


 今の俺はぶっちゃけ魔法がなければそこいらの子供より弱い。腕っぷしは専門外なのだ……ま、まぁ、前世でも別にそこまで体が強いわけじゃなかったけど。ともかく、もし逃げるにしても、護衛は必要になるだろう。

 ただ、俺の護衛……今日、撒いてきたアイダとかに頼むと、母上に大々的に知られることとなってしまう。そうすると、また監視の目が厳しくなりそうだ。あくまでレインズ家に遊びに行っているという体で事を進めたい。うーん、護衛……。


「アンジェロ兄上……とか」

「……首突っこむと面倒なの知ってるでしょ」

「うん、言ってみただけ……」


 アンジェロ兄上とは、リアのお兄さん……レインズ家の次男だ。今年14歳で、ディアス兄上やティアナ姉上と同年代だ。

 腕っぷしは強いのだけれど、如何せん面倒な性格……まぁ、有体に言うと脳筋なのだ。ティアナ姉上の事が気になっているらしいが、本人からは鬱陶しがられていたりする。だから、俺が何か頼もうものなら「よっし!じゃあ今度ティアナに会わせてくれ!!」となるわけで。ティアナ姉上に迷惑が掛かってしまう。


 兄弟の中で行くと……レインズ家の一番上のお兄さん、フェリック兄上だと、今は王子の元で国政を勉強していて居ないし、セリーン姉上やティアナ姉上を巻き込むわけにもいかない。

 ディアス兄上……だけ、ちょっと望みはあるけれど、兄上って強いのだろうか。あんまり剣術とかの稽古をしているのを見たことがない。

 あとは……護衛の皆さんの中から……となるが、ワイズマン家やレインズ家に雇われていて、父上に報告義務がある人材はなるべく避けたいし……。


「んー……どうしたものかぁ……」

「あら、シャーリー。遊びに来てたのね」

「あ、はいこんにちは。セリーンあねう……え……?」


 俺は声を掛けられて反射的に生返事をしてしまったが……え、な、姉上……?すぐさまバッと声がした後ろを振り返ると……俺の真後ろにセリーン姉上が腰に手を当てながら立っていた。


 正面に向き変えると、リアが「あーぁ……」という顔をしている。ま、まずい。見つかった……。


「あの……えと……えへっ。お、俺がここにいることはご内密にぃー……」

「やっぱり、抜け出してきたのね。もう、お転婆さんなんだから……」


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