第一章 6【いざ、ダンジョン攻略。】
人に救われたとして、その救ってくれた人物と出会ったときどう反応すれば良いのだろうか。俺はナビリアさんと再会したのは良いけれど動けないままでいた。
「『久しぶり。』というには早い再会だな、君の旅は順調か?」
「順調ではないですね。ですがナビリアさん、宿やお金までありがとうございます。助かりました。」
「お礼なんて言わなくていいさ、君からの礼をもらいに再会した訳ではないからな。」
「えぇーと、コイザキ…この人知り合い?」
「あ、ごめんごめん、この人俺が最初死にかけて倒れているときに宿まで運んでくれた恩人『ナビリア』さん。」
「俺タイトです。コイザキの、その…」
「友人です。」
「コイザキ…お前…!」
タイトがキラキラした目で俺を見てくる。ま、まぁ俺は一時期お前の立派な友人だったしぃ、今この場で友人と言っても悪くない訳でぇ…
「改めてタイトです。こいつの友人です。」
「ハハ。君達は随分仲が良いんだな、私は少し嫉妬心を抱いてしまうよ。」
「えっと君たちは今からこのダンジョンを探索するんだっけか。」
「はい、そのつもりです。」
こういうしっかりとした話はタイトに任せる。俺は自分のステータスを弄ることにした。
「よし、それなら早速行こうか。このダンジョンは初心者のレベル上げのためにあるダンジョンだ、多分今の君達でも攻略できるだろう。」
「分かりました!その前にお互いにステータスを確認しませんか?その方が攻略もしやすいと思いますし。」
「そうだな。それなら私から。」
ステータスを弄り終え二人を見るとお互いにステータス画面を広げていた。俺も便乗する。
PN 恋咲
LV.2
STR 6 CON 8 DEX 12
INT 10 POW 4 LUCK 20
《特殊技能》
火球(45)
《能力》
弱者の徴
《装備品》
「始まりの装備」
※この装備はセットのため部分ごとに外すことはできない。
《所持品》
200アト 初心者向け魔導書
PN タイト
LV.9
STR 10 CON 8 DEX 9
INT 17 POW 8 LUCK 13
《特殊技能》
デコイ(90)
《装備品》
「騎士の証」
※この装備はセットのため部分ごとに外すことはできない。
《所持品》
600アト
PN ナビリア
LV.32
STR 27 CON 15 DEX 21
INT 22 POW 31 LUCK 18
《特殊技能》
氷撃(90)
ドレイン(72)
ドロップ(20)
《装備品》
???
《所持品》
???
「装備品と所持品が見えなくなっていると思う、これは隠しているという訳ではないんだが…すまないが納得してくれ。」
「分かりました、にしてもナビリアさんLV高いですね…」
「君達より早く始めたにすぎないよ。」
「お互いにお互いを少し分かったところでダンジョン探索行こうか。」
「分かりました。コイザキも行けるよな?」
「おk、行ける。行こうか。」
俺は仕切っていたタイトを横に勝手に申請する。
「あ、そうだ。言い忘れていたが、このダンジョンではダメージに応じて経験値が入り、パーティーの中で一人でも死者が出た瞬間終了するから気を付けてくれ。」
「「え?」」
光が差し込み辺りの景色と雰囲気が変わった。
「ナビリアさん今の発言マジですか?」
「タイトくんだっけ?あぁそうだ。」
なんかそれマズくないか?俺を守りながらだろ…
「攻略のカギは俺を守りながら敵を撃退…か…」
俺は決心した表情で二人を見て高らかに宣言する。
「今からコイザキ防衛前線を張るッ!」
三人しかいない草原の真ん中で空気が凍ったのを感じた。
「ハハ!防衛前線か…そうしなきゃいけないよな!」
多分きっと空気を和めようとしたのだろう。逆にその発言が戦力外通告を受けてるみたいで辛い無視してくれて良いのに。
「ピンチになったら私が助けよう。基本的に経験値を集めてほしいから私は手を貸さない。」
そんな空気感で始まったダンジョン攻略第一層、イカレたメンバーを紹介しよう。
まずは俺『レベル2!初心者からクソザコに格上げ!!自爆持ちのニート!コイザキ!』次はこいつ!『守るプロフェッショナル!!だが使うスキルは俺のスキルに喰われた!!タイト!!』最後にこの人『ぶっちゃけダークホース!LVと黒いコートしか情報なし!!でも多分良い人ッ!ナビリア(さん)!!』これ行けるかぁ…?
「とりあえずこれって何層まであるんですか?」
「正直言うと私には分からないんだ。最高30層までは行ったんだが噂では『100層に到達した。』なんて聞く。初心者はLV上げ目的。ある程度やったプレイヤーは素材目的やランキングなどなどって感じだな。」
「「素材?ランキング?」」
「君たちはこの世界にあまり興味がないのか?」
ごもっともな意見だ。多分常識であろうその素材やランキング、俺たちはそんな常識がないのだ。他の人はなにか目標があって始めたのだろう。こいつは友達と遊ぶため、俺は…俺は…。
「それならしばらくは敵もスポーンはしないはずだ、簡単な説明をさせてもらおう。」
「素材というのは武器や装備品あらゆるものを作るのに必要なものだ。そのまま素材=素材と思ってもらって構わない。ランキングというのは『実績』『装備の質』『武器の質』『LV』その他etcを合算し、下に何人いるのかを分かりやすく表現したものだ。」
「なるほど…それならランキングに乗ることが目標の人が多そうですね。」
「いやそんなことはない。ただ『強くなる』というのを目標にする人は少ない、スローライフに興じる人も多いからな。」
「決めましたよ、ナビリアさん。」
「コイザキくん?何を決めたんだい?」
「あ、いきなりですみません。このゲームの目標を考えていて…それで決めたんです。『このゲームのランキングで一位になる』って。」
「良いじゃないか。というか私は最初から君がそれを目標にしてると思っていたよ。」
「ん?何でですか?」
「なにせ『放者』を選ぶんだ。このゲームを純粋に楽しむつもりなのだろう?」
「フッ、そうですね。」
俺は最大限の虚勢を張り、ナビリアに背を向ける。まさか『気分で決めた』なんて思われるのがなんか嫌だった。俺のスキルと合わせてM属性があると思われたら困る、俺は被害者なんだクソ製作者によって作られた哀れなヒロインってやつ。
「二人とも来るぞ!『デコイ』ッ!!」
「あ、それ意味n」
前からこん棒を握り走ってくるゴブリンが俺の顔を思いっきりぶん殴る。コイザキ防衛前線崩壊の瞬間である。
≪HP変化10→8≫
「コイザキごめん、忘れてたわ!」
「タイトッ!お前ェェェ!!」
「フフッ。」
「ナビリアさんも笑ってる場合じゃないですよ!!」
俺は気を取り直し、俺だけが気を取り直し太刀を握る。
「クソッ!序盤のゴブリン如きがッ!!」
俺は握った太刀でゴブリンの足を切る。
「フッフッフー、これでお前は動けなくなったな!」
「やっぱお前の戦い方なんかキモイよ。ね、ナビリアさん。」
「ま、まぁそのなんだ。君は容赦がないんだな。」
二人が軽蔑にも等しい目で俺を見てくる。やめてくれよ。
「ほ、ほらお前もこいつにダメージ与えて経験値分けようぜ。」
「助かる。」
タイトは短剣でゴブリンの心臓に狙いを定め一気に突き刺す。ゴブリンは経験値を残し体が透明になり無くなった。
「とりあえずはおめでとう。一層ではあとゴブリンを9体倒したいかな。」
「「了解です。」」
俺たちのダンジョン攻略が始まった。
余暇乃です。ステータスの数値はあくまでこんなもん程度に思っといてください。