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BNT‐新世界‐ ~新しき第2の人生~  作者: 余暇乃
第一章 『OPEN THE WORLD』
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第一章 3【格差社会】

 『水俣 袋渡(みなまた たいと)』は悪い奴ではない。むしろ良い、いや完璧と言える人間だ。成績優秀、品行方正、スポーツセンス抜群おまけに顔が良い。唯一欠点があるとするなら俺と関わりがあるくらいだ。


 水俣 袋渡(こいつ)恋窪 八尖()の関係は、よくある一般的なもので高校で身長順に並んだ時、たまたま前後に並んだだけの関係だ。孤高の俺は話すつもりはなかったのだが、こいつは初対面とか関係なく話せるタイプらしく、話を聞いているか聞いていないかすら分からない俺にマシンガントークをぶっぱなしてきた。俺は専門的な話にすればこういうタイプは自分から避けていくのを知っている(2敗)まずはジャブとして。


 「ファイソやってる?」


 と聞いた。『ファイアーソード』俺が中学の頃やっていたクソゲー。中古で500円で売られていたのを見て買ったのを今でも覚えている。RPG方式で進んでいくターン制ゲームだ。最後の街まではおかしいところはなく(中学生基準)良ゲー、神ゲーの匂いすらする。しかし、最後の街で事態は急変した。題名を冠する武器ファイアーソードが手に入り即装備をしエンカウントした敵に攻撃してみると…ランダムでゲームが落ちる。たまたま落ちず攻撃が相手に当たると高攻撃力の反動としてHPが3割削れる。つまりゲームが落ちる不安を抱えながら攻撃→回復→攻撃→回復…のループを強制してくるのだ。え?「んじゃ装備外せよ」だって?それで済むならどんなに良かったことか、ラスボスに対してファイアーソード以外の攻撃はゼロだッ!ウケるだろ?笑えねぇよ。そんなクソゲーをてめぇはやったこと無いだろ!ふんっ雑魚がッ!!


 「『ファイアーソード』だっけ?あれラスボス戦の攻略意味わかんないよな!」


 …マジかよ。




 そんな訳で最初は同じタイプのゲーマー(ベストフレンド)だと思っていたんだが…一緒にいればいるほど分かる俺とあいつの格差。俺が100%悪い分どうすりゃ良いんだ。俺はそんな劣等感に襲われ、水俣袋渡と関わることを避けてきた。


―――――――――――――――――――――――――――――


 「恋窪は公園で何してんの?」


 「お前こそ10時30分だぞ、何してんだよ。」


 秘儀質問返し。めんどくさい人間に関わりたがる人間はいない。これおススメの処世術。


 「それ恋窪が言える事か!?…まぁいいや俺は寝坊したから今から登校。」


 クソッ!遅刻したら友達に「どうしたんだよ?」「今日何かあったの?」って聞かれる人間だ、授業中に教室に入る恐怖を知らない弱い人間めッ


 「…でその今から登校される水俣様は何を持っているのでしょうか。」


 水俣は片手にビニール袋を持っていた。その中にうっすら見えるゲームソフトのような影。


 「バレたか、実は学校でこれやろうと思ってささっき買ってきたんだ。」


 水俣はパッケージを見せてくる。パッケージには『BNT‐新世界‐』と書かれていた。


 「発売して半年だからちと遅いスタートだけどな。恋窪はやってる?BNT。」


 「やってるやってる。今日含めてもう初めて始めてから計17時間は経ってるね。」


 「もしかしてお前昨日始めたな?」


 適当な言い回しでも伝わるのが嬉しい。こういうところがモテる所以なんだろうな。メモしとくか。


 「やばっそろそろ行かなきゃ3限に間に合わねぇ!じゃあな!!」


 「おけ、…またな。」


 その『またな』はいつに向けての『またな』なのか、俺はそんなことを考えるとすぐに返事ができなかった。


 「家に帰ったら飯食ってまたBNT再開するか。」


 俺は水俣と別れた後、だらだら歩いて帰った。


―――――――――――――――――――――――――――――


 「お客様、起きてください。お連れ様が行ってしまいましたよ。」


 あれ、俺なんで宿屋で目覚めてるんだ?と当然の疑問が脳を過る。確か昨日の段階で到着はしていないはずだしそれに『お連れ様』?悪いが俺はソロプレイヤーだ。


 「あ、あのお客様?」


 「あーすみません、代金ですよね。…いくらになりますか?」


 とりあえず今は『お連れ様』より目の前のかわいいNPCだ。正直、金は全く持ってないから最悪働くかクエストでもやってやるか。


 「お客様の分も、お連れ様が払って行かれましたよ。」


 「え?」


 「え?」


 「ちょ、ちょっと待っててください!」


 俺は急いで宿を出る。あたりにそれっぽい人は…分からねぇ…


 「あ…あのぉ…店主さんそ、そのぉ『お連れ様』の名前とか分かりませんか…?」


 店主は訳の分からない様子で俺に『お連れ様』の情報を教えてくれた。まぁそりゃ仲間だと思うよな。金まで払ってくれたのにまさか他人だとは思わないだろ。ってかNPCすげぇなこりゃプレイヤーとの見分け方はPN確認するしかないな。


 店主さんの話をまとめるとその『お連れ様』というプレイヤーは『女性』、『黒いコートを着ている』『ナビリアという名前でサインをした』という事が分かった。店主にお礼を言い宿屋を後にしようとした時、店主さんは俺を呼び止めた。


 「お客様!忘れ物です!」


 店主さんは小さい袋を持って所持品ゼロの俺(放浪者)に駆け寄ってくる。


 「すみません、ありがとうございます。」


 貰えるものは貰っておこう。


 店主が渡してきた袋の中には金と紙が入っていて、紙にはこう書かれていた。


 「君が町の近くで倒れているのを見かけて、この町まで運んできてしまった。私のお節介だ気にしないでくれ。またすまないが、君が寝ている間にステータスと所持品を見させてもらった。君は茨の道を進むんだな。私は君の道を応援している。これは少ないが私からの気持ちだ。受け取ってくれ。」【PN.ナビリア】


 久しぶりに人のやさしさに触れ泣きだしそうになったが、さすがに泣くのは恥ずかしく俺は店主に礼を言いその場を去った。




 「ナビリア…ナビリアさんね、ありがたく受け取っておこう。」


 まだ顔も知らない相手に大きすぎる恩を作ってしまった。…まずは鍛冶屋に行ってイノゴ狩りでも始めるか。


―――――――――――――――――――――――――――――


 「いらっしゃい、あんちゃんまずは職業を教えな。」


 「フッ、放浪者(ニート)です。」


 「はは!お前良いな!!」


 俺はイケオジの店主に気に入られたみたいだ。




 よくよく見たらイケオジの頭にはPNが表記されていた。


 「おっちゃんプレイヤー?」


 「そうだ。鍛冶屋になりたくてな、でも現実だと色々都合が悪いからここ(BNT)でやってるって訳だ。」

 「ここだと俺が作った武器が堂々と活躍させれるからな!ガハハハッ!」


 「いいねぇ流石『第二の人生』。おっちゃん!楽しんでるねぇ!!あはははは!」


 二人の笑い声が店に響きあう。おっちゃんに武器作ってもらいてぇ~。


 「まぁまぁさてさて、俺の店に来たってことは()()だろ?」


 「分かってるねぇ…なんか良い武器おっちゃん作れる?」


 「結論を言うなら作れる。だが職業がな…。」


 「やっぱし、放浪って職業は無し…?」


 「否定はしねぇよ、お前の選んだ職だ。」

 「だが安心しろ!必ずてめぇが気に入る武器作ってやんよ!!コイザキッ!」


 あぁ、今日は良い奴に会いすぎた。

 余暇乃です。「」の後にそのまま「」が続いているなら同じ人物が喋っている。と考えてください。自分で分かりにくいと思ったので一応メモしときます。

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