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第5話 精神治療開始

エルはクラリスへ背を向けると、そのまま男女の嬌声が響き渡る礼拝堂へと足を踏み入れる傍にある布を扉代わりにしている一室に入り込む。

 そこでは酒でベロベロになって酔って真っ赤になっている半裸の女性と男性が抱き合っていた。むわっとした酒気と化粧と男女の熱気、いきなり乱入してきた男にも関わらず、男と抱き合った半裸の女性は、酒に酔った赤い顔でへらへらと笑う。


「おお~男二人とか気が利いてるじゃん!ね、三人で気持ち良くなろ!!

 どうせアタシは次の狂魔の戦いで死んじゃうんだからさ!

 気持ちよくなっておかないと損だよね!!」


 それに答えず、エルは片手を半裸の女性に向かって向けると自分の覚えている呪文を唱える。

 ここに来る前に確認した所、どうも自分は攻撃魔術などは使用できないが、精神操作系、精神を癒す魔術は使えることができるらしい。

 それは彼がセラピスト見習いとして学んでいたことに起因するのだろう。


「【鎮静】【精神賦活】」


 鎮静と精神賦活の魔術をかけられた女性は瞬時に酔いが覚め、不思議そうに自分の体を見る。鉛のように重い体を何とか酒で動かしていた今までとは打って変わって羽のように体が軽くなっているからだ。

 これは、摩耗した精神がエルの魔術で回復した影響だろう。


「えっ……?なにこれ凄い!体が軽い!今までの重い体とは違って羽根が生えたみたい!!」


「どうやら鬱病になりかかってようですね。これでしばらく何とかなるでしょう。

 お大事に。」


 なんだなんだ?と個室から出てきた半裸や下着をつけた女性騎士たちに対してエルは彼女たちの相談に乗ってやり、次々と精神を癒す呪文をかけて彼女のメンタルを治療していく。

 不安で鬱状態になったりしている彼女たちは、猛烈な肉体の重さなどに悩まされている。薬などない時代に彼女たちはアルコールなどでようやく何とか体を動かしているのだ。そんな体が異常に重い状況で瞬時に体が軽くなるなど信じられない状態だった。


「なるほど。貴女は眠れない……不眠症ですか。【鎮静】【安眠】

 これでしばらくすれば安眠ができるでしょう。お大事に。」


「戦場に出るのが怖くて仕方ない。男と酒がないと生きていけないと。

【鎮静】【勇気】と。これでしばらく様子を見てください。お大事に。」


「何もする気力がでない。体自体が動かないと。

【生命力供与】【体力供与】【精神賦活】これでどうですか?

 体が動く?それはよかった。ではお大事に。」


 半裸の状態の女性たちの精神を魔術で次々と癒していくエル。

 狂魔との戦いで荒廃した精神を何とか酒と男で癒していた彼女たちは、まるで生まれ変わったかのような賦活された精神を得て、生き生きと飛び出していく。

 精神の負荷は人間の肉体にも多大な影響を及ぼす。

 荒廃した精神に加え、まるで鉛のように重い肉体で、精神を食らいつくす狂魔たちに戦えるはずはない。

 だが、精神力が回復した今の彼女たちならば、また狂魔と真正面から戦えるようになるはずである。

 次々と半裸の女性騎士たちの相談に乗ったり、精神回復魔術をかけて回復させて心身ともにリフレッシュして生き生きと出ていく女性騎士の姿を見て、彼女たちのメンタルをいともあっさりと回復させていったエルを見ながら、クラリスは畏怖の目でエルを見ながら呟く。


「アンタ……。一体何者だ?」


 酒や男で何とか最低限の精神回復を行っていたのに、それ以上に次々と女性騎士たちのメンタルを魔術で癒していくエルを見て、クラリスは思わず畏怖の目でエルを見る。

 それに対して、彼は淡々と答えを返す。


「俺は、ただの心理士見習いさ。」


心理士?と聞きなれない言葉に、思わずクラリスは呆然としていた。



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