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第四話 修道院へ

そして、貴族の嫡男から神官になったエルは、大地母神を崇める修道院へと向かう事になった。通常、貴族の嫡男から修道院に入るなど、よほどの素行の悪さがない限りあり得ないことである。

 例えば女性遊びが酷く、貴族の嫡男である自覚がない者、例えば妾に産ませて跡継ぎ問題で面倒な人間、あとは暴力癖が酷く、気性の荒い男らしくない貴族の嫡男たちが花婿修行として修道院へと行かせられる。

 ここで一生飼い殺しされるパターンもあるが、当主の女性騎士たちが全て死亡した際などにも急遽呼び返されるパターン、政略結婚の駒として活用されるパターンなどもある。


 そして、当主である女性騎士たちは一体何と戦っているのか?

 それは”狂魔”と言われる人外の狂気をそのまま具現化した怪物たちである。

 この世界で女性が上位にあるのは、神である”星の戦士”たちの血を引き、その血の力を引き出せるのは霊力の高い女性こそが狂魔と戦う戦士にふさわしいからである。


 だが、星の戦士たちの力で狂魔と戦えるとはいえ、それには代償が存在していた。

 それは、彼女たちの心、いわば正気度である。

 力こそ狂魔とは戦えるが、通常の人間の心である彼女たちは狂魔の狂気とその異形の姿のため、たちまち心が貪り食われて発狂してしまう。

 そんな彼女たちの心を癒し、あるいは深い狂気に陥ってもう絶望的な女性騎士たちを一般社会と隔離する。それが修道院の役割である。

 だが―――。


「ようこそ。聖癒病院修道院へ。お前の役目はその体で女騎士どもを癒すことだ。

 せいぜい女たちに媚を売って頑張ってくれ。」


 そう彼を出迎えたのは到底シスターとは思えないほどやさぐれた雰囲気を持つ、ロングヘアーのアッシュグレイの灰色の髪、青い瞳をしたクラリスと名乗る20代ほどの女性シスターだった。貞操逆転世界でおけるこの世界では、男性より女性のほうが遥かに地位が高いため、恐らくこの修道院の長なのだろう。

 だが問題はそこではない。修道院の内部の部屋からそこかしこから聞こえてくる喘ぎ声。酒に酔った女性騎士たちのカン高い嬌声、それに応じる男たち。

 そう、ここは神の家などではない。

 女性騎士たちを癒すための売春宿そのものである。

 その状況に対して、エルは思わず頭に血が上る。

 売春宿自体はまあいい。大目に見よう。だがそれは専門の売春宿にいくべきだ。


「全く、ここに来た男たちは皆同じ態度を示すな。

 安心しろ。一週間もすればお前も女に対して腰を振って、女に対して媚びだすさ。

 それがここで一番暮らしやすい生き方なんだ。それが一番楽なんだから大人しくしておけばいい。分かったな?」


 エルから睨まれても淡々と答えるクラリス。

 神、旧神に仕える彼女としてもこれが間違ったことである事は理解しているだろう。

 だが、それでも女性騎士たちの精神を癒すためにはこれしか方法がない、と現実的手段を行っているのだ。

 旧神も星の戦士も人々を救わない。神の住む家など欺瞞だ。ならば、ここを売春宿にして女性騎士たちを癒すのに何が悪い。

 そんなクラリスの諦めと現実的判断は理性では理解できる。

 だが、良識というより、彼の持っている人を救いたいというメサイアコンプレックス。それがこの状況を許しはしなかった。


「―――救う。それでも救う。俺にはそのための手段がある。」


エルはそれだけを言うと、嬌声が響き渡る修道院内部へと足を運んでいった。



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