君には「おっぱいの大きい聖女」ポジについてもらう!(なお貞操逆転世界)
『と、いうわけで、君には「おっぱいの大きい聖女」ポジションについてもらう!』
いきなりの女性の声に、『彼』は困惑していた。
車に引かれて死亡したと思った彼、高橋光は唐突に純白のだだっ広い空間へと存在している事に困惑し、目の前の燃えるような赤毛の緩やかなウェーブロングヘアーの赤いフリルのついた豪奢なドレスを身にまとった美女の言葉にさらに困惑した。
思わず何言ってるんだこいつ、と思いながら、彼はその言葉を繰り返す。
「おっぱいの大きい聖女ポジ。」
『イエス!「おっぱいの大きい清楚で可憐な聖女」ポジション!!
もう気づいてると思うけど、君はもう死んじゃったんだよね。
いやぁ、人を助けようとするその根性、お姉さんすっごく感銘を受けたよ。まさに”英雄”ですね。
というわけで君を転生させてあげます!はい、パチパチ~。」
ゆったりとした衣服に、銀髪の緩やかなウェーブロングヘアーの豊満なスタイルの燃えるような赤い瞳の女性。
ドレスのあちこちに豪華な宝石を身に着けたまさしく女神のような文字通り女神の微笑みに魅入られそうになってしまう彼だったが、その状況の異様さにそれどころではない、と気を取り直す。
何せ見渡すばかり、地平線に至るまで全て白で覆われた空間なのだ。
こんな空間が地球上に存在するわけはない。美女だが、その異様なハイテンションとこの異常な状況についていけず、彼は何とか言葉を振り絞る。
「ええと……ということは、TS、女性化……いや、女性として生まれ変わるって事?」
そんな彼の疑問を目の前の女性は笑い飛ばす。
「ははは、ポジションって言ったでしょ。当然、男性のままだよ。
そう!いわゆる『貞操逆転世界』ってやつだね!記憶と人格を持ったまま異世界に行けるなんてチートですよチート!やったね!
まあ、ここは地球ではない異世界に通じる空間とでも言っておきましょう。
え?私ですか?うーん、まあ神……の化身みたいな物だと思っておいてください。』
にこにこと微笑みながら到底正気とは思えない発言をする赤い彼女。
神の化身?現代日本で生まれ育った彼にとっては、到底信じられない事だった。
何故自分を選んだのか?その疑問に、彼女は哄笑しながらこう答える。
『それは貴方がいい玩具……げふんげふん、もとい、自己犠牲と救済に焦がれるとてもいい魂をしていたからです!おめでとうございます。貴方は選ばれた存在ですよ!
向こうの世界には、メンタルが壊れまくった女騎士が山ほどいます。彼女たちを救ってもらいたいのです。』
もちろん、タダでやらせるとは言わない。チート能力はあげます。あなたの特性に合わせた能力『心を癒す能力』をあげましょう。修行をつめば肉体を癒せる能力を獲得できるかもしれません。
そう囁く胡散臭い女神を名乗る女。どこからどう見ても詐欺か目の前にうまい餌をちらつかせて獲物を捕ろうとする狩人だ。
だが、そんな彼女の吊り下げたニンジンに、彼は何のためらいもなく答える。
「やります。(即答)」
このままでは何もなく彼は消え去るしかない。
それに比べて、たとえ異世界の人間だろうが何だろうが、人間を救えるのなら彼は迷いなく飛びつく。それがメサイアコンプレックスの持ち主なのだ。
そんな彼にニコニコと深紅の少女は笑いながら言葉を放つ。
『うーんナイス!実にいいメサイアコンプレックスです!
それじゃ、貞操逆転世界でめっちゃ頑張ってね~。ああ、お約束のこの言葉を放っておこうか。
二度と再び■の■■たる我に会う事を祈るがいい。我こそは―――。」
そのこの彼女の言葉は聞こえることはなかった。
ただ、純白の空間に、燃えるような三眼が―――。
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