翳りの微笑
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
圧倒的な善性と、真反対な悪性。
二面性を持つ彼女の話。
耽美奇譚っぽいですね。異常者の闇。
死ネタあるので、残酷な描写タグ入れてます。
「ごめんね。ちょっと厄介な事案を抱えててさ」
久しぶりに会った彼女は何時も通り明るい、太陽のような笑顔を浮かべた。人混みに塗れたら、直ぐに分からなくなる程、さして特徴のない顔。けれどもその人懐っこい表情は、顔さえ整っていればアイドルとタメを張りそうだった。
そんな彼女は最近どうにも厄介な事を抱えているらしい。従兄弟筋の男が、突然神経系がおかしくなり、誰彼構わず文句を垂れる様になったと。いいや、文句なんて可愛らしいものではない。モラハラと言っても差し支えがないと、彼女は話していた。
それ故に彼女自身も周りに迷惑が掛からない様に孤立していた。連絡先を調べ上げて、鬼電でもされたら困るから……と。
「物理的にも、精神的にも距離を置いた方がいい」
「そうね。でもそしたらね、妹に連絡入れてるんだって。『鐘はやってんだろうがよ!! 何も出来ないグズがよ!!』って。あの子、優しいから見捨てられないのよ」
困ったように笑うと、僅かに小首を傾げて俯いた。私が言った助言など、毒にも薬にもならない有り体なものだ。彼女はそんなもの、きっと望んじゃ居ない……。でも弱り切った人に何て声を掛けたら良いんだろう……?
彼女は大きな溜息を一つ着くと、一度目を閉ざした。それから焦れったくなる程、ゆっくりと瞼を開けた。目に……光が無い……。さっきまでの甘い微笑が全て嘘であるように、無表情だった。
「でも……あんまりにも五月蝿いからね。鬱陶しいからね」
女の瞳孔が真夜中のように開く。煌びやかな光ではなく、どす黒い闇が灯った。
「殺しちゃおうかなって。腹を指すなり……いや、証拠が残るな……。毒殺の方が良いか……ヒ素って残りにくいって言うもんね」
「……っ」
薄ら笑いが怖くて、それ以上何も言えなくなった。
あれから数ヶ月後、彼女から連絡があった。事態が落ち着いたから、また二人で遊ぼうと言うものだった。特に断る理由もないし、またあの明るい笑顔が見たかったから直ぐに了承した。
駅前のベンチでスマホを弄っていると、遠くから彼女のハイトーンが。顔を上げると輝かんばかりの微笑。
「久しぶり〜!! 元気にしてた?」
「うん。そっちは?」
私が一つ問い掛けると、表情が変わった。確かに同じ笑顔の筈なのに、顔を暗雲が覆ったように翳りが差した気がした。それからこの間のどす黒い虹彩を灯したまま、小首を折った。
「あれからね、事態が好転したんだよ。気狂いが死んだの。突然、ぽっくりと」
「…………そっか」
「葬儀なんかしてやらないわ。せいぜい地獄で藻掻けば?」
徹底的なまでの善性と、それを真逆にひっくり返す程の悪性。その一面を横殴りにされた気がした。あぁ、信実は闇の中。けれども……きっとこの子は。
誰に対しても聖母ばりに優しい子が持つ、どす黒い闇。
人間だと思わなくなった瞬間に、蝿でも殺す様な顔。
三次元だと恐ろしいのに、二次元だと大変魅力的。
だって人では無くなったでしょう? じゃあ殺しても問題ないでしょう? ゴミはさっさと焼却炉に入れないと。腐敗臭撒き散らして困るでしょ。
葬儀? 貴方、生ゴミに葬儀をするお人?