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屑鉄の巨人  作者: 露人
2/2

出会い:ファーストコンタクト

グレイブヤードエリアの奥地に足を踏み入れたリア達。

そこで彼らは信じられないものを目にする。

それは無数の腕に支えられ立ち尽くす謎の白いタイタンだった……

「なんだ……こいつ?ロック、わかるか?」

「…りません…」

「え?」

「わかりません……ハモンド社のヴァンガードシリーズに見られる腰のナイフソケットがないし……かといってスターク社のAMシリーズの特徴的な背部スラスターもないし……でも日機創研のレイジングシリーズのk……」

「ストップストップ!……タイタン狂いのお前でも知らない機体ってあるんだな」


タイタン狂いの岩峰でさえ知らない機体。それはリアにとって超絶怒涛の激レア機体であること意味する。しかもこの立ち尽くしているアレは墓場に転がっているその他大勢とは違い、ボディに多少のサビがあるが目立った傷がなく、パーツが欠けていない五体満足のタイタンだ。このままオークションにぶん投げても利益が出ることだろう。


「んー……どうすっか、コレ?」

「持って帰りましょう!絶対に!なんとしてでも!何があっても!!」

「まぁそうだよな」


なんとしてでも持って帰りたい。その気持ちはリアとて同じだ。もう少しだけ小さかったら可能性はあった。だがアイツは目視で6m近い。間違いない。絶対に荷台に載らない。もし載ったとしてもトラックが動く訳がない。


「ばらして持ってくか?」

「いや無理ですよリア先輩!アレをバラす道具なんて持ってないですよ!?」

「そうだよな……でも他に方法ってあるか?」

「う~~~ん……」


『諦めるしかないか』そんな言葉がリアの心のなかで反響する。だが諦めたくはない。何かいい案はないか、二人でウンウン唸っているとそれに共鳴したのかどこからか低い唸り声のようなものが聞こえ始めた。


ゥゥーーーーン・・・・


「「え?」」


困惑し、見つめ合う二人。二人の間に言いようのない恐怖が立ち込め、あたりを見渡して声の主を探していると目の前の銅像のように沈黙していたタイタンがひときわ大きい唸り声を上げ始めた!


ギュイィーーーーン!!!


「「うぉ!?(ピギャーー!!)」」


どうやら唸り声の主は二人の目の前で眠っていたタイタンのエンジンだったようだ。二人はパニックに陥り、恐怖で抱き合って動けない。


「オイ!なんでアイツのエンジンが動いてんだ!?」

「し、知りませんよ!?というか先輩が『ばらして持ってくか?』なんて言ったから怒ったんですよ!!ホラ、先輩!責任持ってどうにかしてくださいよ!!!」

「んな無茶な!?俺より詳しいお前がなんとかしろ!!」

「ああっ!?パワハラっすよソレ!!後輩の失敗は先輩の指導管理不足が原因ですよ!!」

「あ!テメェ!!ここぞというときだけ先輩扱いしてくんzy……」


シィ!  ステ ムゥ……ウウ!!…さい 起  動ぅォ…ォ!?

……自リツ行   動   にィ!  移コォォ……  


「ギャーー!!なんで喋ってるのォ!!!?」

「ちょ、静かにしろ!ロック!!」


遂に動き出し、システムの再起動が完了したことを告げたタイタン。だがソレを読み上げる機能の調子はだいぶ悪いように思える。おどろどおろしいそれのせいでただでさえ限界であった恐怖を更に高め、完全に二人は腰が抜けて立てなくなってしまった。そんな二人にタイタンが話しかける。


現 ザァァイ!!!の損   ショー率……3   5%ゥォ!?

機  体燃 料、残 り10%。機タァァイィ!!修 理と補ゥォ! 給を

希!!望しままますす


「え?今修理って……」

「せ、せ先輩…助けて……」


リアを見つめ、目に涙を浮かべながら助けを求める岩峰。クソ!これだから顔がいいやつは!!そう思いながらリアはヤツの言ったことを反芻する。


(損傷率35%で、なおかつ燃料は10%の尽きかけ。修理と補給を希望している。会社に行けば多少の補給は出来るはずだし、修理も……音声読み上げ部分はなんとかできるだろう。問題はここから会社までこいつを運べるk……ん?別に運ばなくてもいけんじゃね?)


何やら思いついたようだ。リアはタイタンに向かって叫ぶ。


「おいお前!俺らについて来たら修理も補給もしてやるぞ!」


そ  れ゛ワァ!? ほんとおおおお  でしょう!   かぁあ?


「ああ!……でも見てくれ!俺らはあのトラックでここまで来たんだ。お前のそのでかい図体じゃ多分車には載れない!だからお前の足で俺らについてっもらうことになるけどソレでもいいか!?」


一抹の不安が頭の中によぎりながら、タイタンの返事を待つ。その間両者の間を何分にも何時間にも思える程の緊張感漂う沈黙__実際は数秒しか立っていない__が通り過ぎる。冷や汗を垂らしながら待っていると返事が帰ってきた。


その提  案を!ォ!  承認し?  ます。 ゥゥーー!?  

先ゥ!導をおおお願い    します


……言葉が怪しいが納得してくれたようだ。ビビりすぎて固まった岩峰を抱きかかえてトラックに戻り、エンジンをかけ走り出す。……無事ついて来れているようだ。こうしてリアたちは会社に向かって走り出した。大きなお供を連れて。





「社長!只今戻りました!!」

「お、リアちゃーん!どうだっt……ってぇぇ!!!?」

「何なのようるさいわね!!まーた腰でもやっちゃっt……ァァァァ!!!!!?」


出迎えた社長とオバちゃんは絶叫した。まぁしょうがないだろう。後ろにバカでかいタイタンがこちらを見下ろしているのだから。


「リ、リアちゃん!?アイツどうしたの!?」

「ま、まさかアンタ!?盗んできたんじゃ……」

「ちょ、んなわけないじゃないですか!人聞きの悪い!!アイツは墓場から着いてきたんです!」

「ええ……そんな訳が……」

「嘘じゃないですよ!?信じてください!」


リアとオバちゃんが口論を始める中、社長は一人誰にも聞こえないような小さな声で呟いた。


「イヴ、なんでお前が……」

「しゃちょー?どうしたんですか?」

「ぁあ、いーや!なんでもないさ岩ちゃん!というかあのタイタンはなんでついてきたんだ?」

「あ、それはですねーー……」

「目ゥ!的地にィ…到着……修理と補  給ををォォォ!!

キ希ィ  望しまァす……」

「……ってことっす」

「なーるほど?そういうことね?」

「社長頼みます、こいつの修理をさせてください!金は俺の給料から引いてもいいんで!」


リアが社長に直談判する。お金に厳しい社長のことだ。売り物になるかわからないヤツを修理するのは一筋縄では行かないと思ったのだろう。だがそのリアの予想に反して社長は


「なに水臭いこと言ってんだリア!さっさと取り掛かるぞ!」

「え?本当に良いんですか!?」

「当たり前だろ?こんなおもしろいヤツ……直さないほうがおかしいぞ!」


予想外のゴーサイン。他のタイタンと何が違うのか?そう疑問に思いながらリアと社長はとりあえず話を聞こうと音声読み上げ部分を修理し、燃料を補給した。


「燃料補給ありがとうございます。そして現在の損傷率は32%」

「あ、直った」

「さらなる修理を希望します」

「まぁ待て。まずお前は誰だ?まだ聞いてないぞ」

「申し遅れました。私はサファイア級タイタン、型番は【TF−000-P1】。機密保持のため詳しくは語れませんが、研究所では【イヴ】と呼称されていたタイタンです」

「え!?サファイア級って……あの幻の!?」


【サファイア級】その言葉に無類のタイタンオタクである岩峰は息を荒らげ食いついた。異様な食いつき方を見せる岩峰に何も知らないリアは質問する。


「サファイア級?なんだそれ?幻?」

「え!?まさか知らないでこれまで生きてきたんですか!?」

「そうだよ、なんか文句あっか?」

「いや……簡単に言うとサファイア級ってのは都市伝説のように囁かれてた存在なんです!まさかこんなところで出会えるなんて……!!」

「ほーん……あ、そうだ。なぁお前のことなんて呼んだら良い?」


岩峰の熱い語りもそこそこにリアは謎のタイタンに質問する。


「呼称ですか……そうですね。イヴと呼ばれていたので今度もそう読んでくれればいいかと」

「じゃあイヴちゃん!イヴちゃんはなんで意思疎通が出来るんすか?普通のタイタンはそういうこと出来ないじゃないすか」

「い、イヴちゃん、ですか……。私は研究用の機体であり、その一環で戦闘補助を担うAIがこの機体に搭載されました。それが私、イヴAIです。私の呼称もそこから取られました」

「へー!AIが搭載されてるからなんすね!珍しい……本当に会えて良かった!!」


感涙にむせび泣く岩峰を尻目にリアは社長に質問する。


「社長、コイツどうします?オークションに出してみますか?」

「ちょ、先輩!?そんなコト本人の目の前でしちゃダメですよ!」

「そうですよ、リア。そんな人はノンデリと言われてしまいますよ」

「ファ!?お前そんな言葉も覚えてるのか!?」

「もちろん。なぜなら私は戦闘補助を担うAIですから。パイロットとの意思疎通を円滑にするために研究所でこういった事もラーニングされていました。……もっとも、小粋なジョークというのはまだ勉強中でしたが」

「ハハハ!!!コイツは良い!」

「ちょ、社長!笑わないでくださいよ!てか本当にどうするんですか!」

「よし決めた!コイツはオレたちの会社、【トレジャー&リペアリング】のマスコットにするぞ!!」

「「へ?」」


予想外の言葉が飛び出して固まるリアと岩峰。速攻で売りに出すと思っていた二人にとって社長のその言葉は意外以外の意味を持たなかった。


「なんだお前ら?いい案だと思わないのか?」

「いや、意外だなと…てっきり速攻でオークションにぶん投げると思ってました」

「私もです。すぐににバラして部品で売り飛ばしちゃうと思ってました」

「お前らなぁ……よく考えてみろ。もしバラして部品で売ろうにも型番に信憑性がないから絶対売れない」

「そうですね」

「だからといってオークションに回したとしても物好きな企業でもない限りゴミ捨て場から拾ってきたコイツを高い金出して買おうとは思わないだろ?」

「まぁ確かに」

「売れ残ってまたこいつを墓場にぶちこんじまうよりかはコイツを広告塔にした方が良いんじゃないかと思ったんだ」

「なるほど!凄いよく考えていますね!!さすが社長っす!見直しました!」

「おい、見直したって何だよ!?……まぁというわけで今日からイヴはこの会社に務める新入社員だ!お前ら異論は!?」

「「ないです!」」


こうしてオレたちの会社、【トレジャー&リペアリング】に新人……いや、新タイタンが入社した。

……だが、皆はコイツが俺たちの明日を大きく変える存在であるとは皆知る由もなかった。

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