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ある風景  作者: 月明影
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追跡その1

 大通りは次第に、朝の渋滞から落ち着きを取り戻してきていた。


大通りと言っても都会を走る3車線、4車線もある訳でなく、地方都市の2車線道路だ。


これといった建物もなく、田園に交じり、ガソリンスタンド、コンビニ、国道沿いに建てられた家などが視界に入る。


国道は途中で河を横切り、一級河川に架かる橋を渡る。

橋を渡り更に進むと、駅前の混雑した道に入り、車の流れが悪くなり始めた。


三田の住む町は、駅裏の少し込み入った場所にある。


大村は、駅前のコインパーキングに車を停め、歩く事にした。


――30分300円。1日、最長1200円――、長く停めても1200円程度なら有り難いものだ。


駅の構内を抜け、駅裏に向かった。


 駅裏は、開発に取り残された寂しさがあった。


昔はそれなりに賑わっていた商店も、今では、高齢化の波に押され、シャッターが降りてる店があれば、近所の常連の為に、そして、今日も元気に何とか過ごしてる事を周囲に伝える為に、半分シャッターを開けている店などあるが、大概はシャッターが降りており、ここ何年も、人の出入りを見ないものばかりであった。



車が何とかすれ違う事の出来る、細い一本道を歩くと、立体道路が見えてきた。


そこを抜け、しばらく歩くと、道路沿いから少し奥まった場所に、年季の入ったアパートが現れた。


二階建てのアパートで6部屋あり、1階の入り口前に駐車スペースが設けられ、丁度6台分停められるように、左右にそれぞれ向かい合う形で、3台分ずつ別れて区切られている。


各部屋には特に表札は無く、ポストも無い。


ドアに投函口が付いており、手紙や葉書類、ガス、電力、水道の請求書などは、そこに投入する。


1階の部屋の前には、自転車や雑誌を紐で縛り束ねた物などが並んでいた。


2階も似たようなもので、ビールの空き缶がパンパンに詰まったゴミ袋が山の様に積まれ、酒瓶も裸のままドアの前に放りだされている部屋もあり、普段の生活状態が垣間見られた。


三田が何号室に住んでいるのか、書き留めるのを忘れてしまった。


ただ、三田の乗っている車はよく覚えていた。


それを頼りに、駐車場をみる。


2台停まっているが、三田の乗っている車は見当たらない。


――何となく予想はしていた。やはり、病院をあたるしかないな。


来た道を引き返す。


 ジーンズのポケットに入れていた携帯電話が、ブッ、ブッ、ブ~と、一定のリズムで振るえ、お尻に振動を伝えた。


裕子からの電話だ。



「もしもし、健ちゃん、おはよう」


「あっ、もしもし、おはよう」


「傷の具合はどう?それと、ちゃんと眠れた?」


「う~ん、ちょっと腫れが目立つかな~。中々寝付けなかったけど、少し眠れた。それと、今日は臨時休業にして、病院に今から行こうと思ってる」


「そっか~、やっぱり痛むよね、傷。」


「裕子はちゃんと眠れた?」


「う~ん、私も余り眠れてないな~。健ちゃんのケガの事や遠藤って男が話した、訳の分からない事のせいで、頭、こんがらがっちゃった。でも、ちゃんと病院に行くって聞いて、安心した」


「裕子、色々と心配かけて、ごめんね。」


「うんん、私は平気だよ。心配しなくて大丈夫だよ」


「本当に、ごめんね。あっ、それと、何か身の回りで不審な事があったら直ぐに連絡して。遠藤って奴が付きまとう事があるかも知れないから」


「今の所、変わった事は無いけど……。用心しておくね」


「何かあったら直ぐ連絡。約束だよ?いいね?じゃ、そろそろ行ってくるから。話の続きは、また後で」


「うん、分かった。健ちゃん、無理、しないでね?それじゃ、また後でね」



電話を切り、駅前のコインパーキングへと急いだ。



Ⅰ時間も停めていなかったので、ワンコインで事足りた。



 昼時が近づき、駅前の混雑が再び訪れていた。



混雑する駅前通りから市街地へと車を走らせ、三田の入院している病院へ急いだ。


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