対戦イベント閉幕
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「以上をもって冒険者対魔物の対戦イベントを終了いたします。ロッディ様、ルロイ様には賞品がございますので中央へお越しください」
タルタロスの案内の元、賞品授与が行われていた。観客も少しずつ退場を始めており、出入り口は少し混雑している。
フードを深々と被っている2人も退場を始めていた。
「なかなかに面白いイベントだったな」
「・・・そうですね」
「私の脅威にならなければいいんだけどね」
「・・・」
人が多すぎるため、何度か人にぶつかりフードが外れてしまった。すぐに被り直したが、何人かに顔を見られてしまう。その顔を見た人達は、とても驚いた。
「あの人は!」
「あなた見た?! あそこのフードの人!」
「グレット様だ!」
「あの勇者様か!」
「しまった…。バレてしまった。急いでダンジョンを出るよ」
「・・・はい」
このグレットという男、かつて王女を助けたことで勇者と呼ばれている。全冒険者ギルドのトップ、グランドマスターに君臨している。
「追いかけよう!・・・あれ?」
「どこいった?」
あれほど人が見ていたというのに、全員がグレットを見失っていた。
闘技場中央ではタルタロスより賞品の授与が行われていた。
「ロッディ様、ルロイ様おめでとうございます」
「こんなにいいものをもらって良いのか…」
「もちろんでございます」
「これを使えばもっと強い奴に勝てるようになれる。ありがとう」
「もし機会がございましたら、またアルフダンジョンにいらしてください。いつでも模擬戦を受けますから」
「うむ…。そのときは頼む…」
「俺も頼む」
こうして、対戦イベントは無事終了した。
監視ルームでガイアとユキは戦いを観続けていた。ユキは賞品を受け取っているルロイをよく観察し、どこで会った人なのか考えていた。
「うーん」
「まだ、考えているのか?」
「はい…。ルロイ・・・ルロイ・・・は!」
「思い出したのか?」
「はい! ちょっと、あの人と話してきます!」
「わかった」
ユキは監視ルームを飛び出し、ルロイの元に向かった。
ユキが冒険者の控室に向かうと、戦斧の手入れをしているルロイがいた。他の冒険者は全員帰っており、ルロイしか残っていなかった。
「ルロイ様!」
「? 君は?」
「いや、ルロイ・ローブタール様」
「なぜその名前を!?」
ルロイは思わず立ち上がり、手入れしていた戦斧を落としてしまった。
「お久しぶりです。私はユキ・ジグフィードでございます」
「君が!」
「はい。今は家名を捨てて冒険者として生活をしております」
「・・・そうか、君が。大きくなったね」
「覚えていただいてましたか。前にあったのは10年ほど前かと思いますが」
「そうだね。あの頃が懐かしいよ」
「ルロイ様も冒険者になられていたのですね」
「ああ…。いろいろあってね。王都、魔物襲撃事件を知っているかな」
「はい。話を聞いたことはあります」
「あの時、王女といたんだよ」
「エリザベス・グレース第一王女様ですか?」
「そうだ。昔から仲が良かったんだよ。魔物の襲撃があった時、俺には力がなかった。だから、他のやつに間一髪で俺もエリザベスも助けられたんだ」
「そんなことが…」
「あの時から強くなるために冒険者になった」
「そうだったのですね。最近、公の舞台に出ていませんでしたが今度結婚するらしいですよ」
「なに! そうなのか!? 相手は?」
「勇者様らしいですよ」
「勇者だと!・・・あいつがエリザベスと」
ルロイは驚きの表情を浮かべた後、すぐに落胆した顔になった。
「何かあったのですか?」
「何があったってわけじゃないが、何となく嫌な感じがするんだよ。あいつからは」
「人気のある方ですけどね」
「一度、王都に行って確認してみよう。教えてくれてありがとな」
「いえいえ。私も実家から王女の結婚式には参加しろと言われておりますので、もしかしたら会うかもしれませんね」
それから一言二言話した後、2人は別れた。ユキはそのまま水晶の部屋にいるガイアの元へと向かった。
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