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巣立ち

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 家を建てた次の日、ゴブリンキングはガイアの家を訪れた。

「どうしたんだ? 何かあったか?」

「いえ、少しご相談がありまして……」

「じゃあ家に上がって」

 ゴブリンキングは【人化】を使い、出来たばかりのガイア家に入る。

 

「お茶とかあればよかったね」

「いやいや! そんな気遣いはしないでくだされ」

 2人が席につき、落ち着いたところでゴブリンキングが話し始める。

「マスターに、相談なのですが……」

 ゴブリンキングはいつも以上にかしこまり、俯きながら話していた。

「なになに? 遠慮しないで言ってごらん」

「あの……外に出てみたいのです」

「え!? なんで!? 何か不自由なことでもあった?」

 ガイアは不安になった。

 誰よりも魔物のことを考えており、我が子のように接しているのに、何か至らない点があったのかと考えを巡らせる。

「そういうことではないんです!」

「じゃあどうして」

「我々ゴブリンは弱すぎる。だから命懸けの暮らしを経験する必要があると考えます」

「それで、外に出るということか」

「……はい」


 確かにゴブリンキングのいうこともわかる。

 アークデーモンとも話したが、俺らには圧倒的な力がない。戦力増強の意味も込めて、武者修行に行かせることは選択肢としてありだと思う。

 しかし外は危険だ。どんな奴がいるかもわからない。他の魔物に襲われることもあるだろう。だから、大事な子をそんなところに行かせたくはない。


「……どうしても行きたいのか」

「はい。この経験が結果としてマスターのためになると考えております」


 ゴブリンキングの強い意志を感じた。

 ここはやはり、父として子の気持ちを優先するべきか……。


「……わかった。許可しよう」

「マスター! ありがとうございます!」

「ただし、約束してくれ! 必ず戻ってこい。結果として強くなれなくてもいい。生きていればそれでいい」

「承知! 必ずやその約束、守って見せましょう!」

 ゴブリンキングは決意を胸に家を出ていった。


 子どもを送り出す親の気持ちって、こんな感じなのかな。


 ゴブリンキングが歩いていく背中を、見えなくなるまで見続けていた。



 1人で家にいるのは寂しすぎたので、水晶の部屋でアークデーモンと過ごすことにした。

「親ってしんどいな」

「それはマスターが、我々を大切に思うからこそ感じることでございます。みんなマスターのことを慕っております」

「ありがとな」

「いえ」

 その後2人の間には、しばらく沈黙が流れた。



 その日の深夜、ダンジョンの入り口にはガイアと全てのゴブリンが集まっていた。

「行くのか」

「はい。人目につかない方がいいと思いますので」

「そうだな……。寂しくなる……」

「また会えます」

「……約束、守れよ」

「わかっております」

 ガイアは涙を堪え、必死に言葉を紡ぐ。

「それじゃあ……元気でな! ……強くなってこいよ!」

「承知! いざ、参るぞ!」

 そういってゴブリン達は歩き出す。

「がんばれよー!!」

 親愛なるマスターの声に反応するように、ゴブリン達は武器を掲げ進んでいく。


 その日の夜空は雲ひとつなく、綺麗な三日月が輝いていた。

読んでいただきありがとうございます!!


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