敗戦報告
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リゼがベッタダンジョンから去った後の処理が大変だった。
ウーラノスは狂気化状態のハイクイックラビットを、力ずくで気絶させて落ち着かせ、エルフ達はまだ息のある仲間達に回復作用のある秘薬を飲ませた。ドワーフ達は壊れた武器や防具の修復。ラビット達はダンジョン部屋の修復をした。
「はー。疲れた」
「本当にありがとっちゃ・・・。つい【狂気化】を使っちゃったっちゃ・・・」
「使うなら俺のいないとこでやれよ? めんどくせぇから」
「・・・はいっちゃ」
ウーラノスはハイクイックラビットを気絶させた後、ガイアに報告を行っていた。
犠牲者がいると聞いた時はかなり取り乱していたが、オリジンヴァンパイアと一緒にいたようで、なだめられていた。
「そういえば、そのうちマスターが来るって」
「マスター! あっ、もしかしてオイラを怒るために・・・! それはまずいっちゃ!」
「それは無いと思うけどな」
「いや、怒られるに決まってるっちゃ! もっと強くならないと・・・!」
ハイクイックラビットはそう言って空中を【光速移動】で飛び回り始めた。
目にも止まらぬ速さのハイクイックラビットをウーラノスは眺めている。
「怪我すんなよ」
「うぉおーちゃ!!」
その頃リゼはフェイダンジョンに戻っており、ミフロスにベッタダンジョンでのことを報告していた。
ミフロスは自分専用の椅子に腰掛け、リゼから話を聞いている。
「坊ちゃん、ごめんなさい。負けてしまいました・・・」
「あまり戦力を割かなかったとはいえ、リゼでも危うい敵か。ベッタダンジョンってミノタウロスじゃなかった?」
「そのように記憶してましたが、現在はグリフォンが管理をしている模様です」
グリフォンと聞いて、ミフロスは飛び上がった。
「グリフォン!? すごい! そんな奴がいるなんて!!」
「ダンジョン攻略ができずに申し訳ございませんでした」
リゼは任されたことが達成できず、とても悔しい思いをしていた。
ミフロスに頭を下げ、精一杯の謝罪をしている。
「いいのいいの。グリフォンがいるって情報もくれたことだし。それに謝ってばっかりはリゼらしくないよ?」
「坊ちゃん・・・」
いつもであれば、ミフロスの無茶振りや冗談にツッコミを入れていた。ミフロスは早くそんなリゼに戻ってほしいのだ。
その優しさに気がついたリゼは目に涙を浮かべている。
「早くいつものリゼに戻ってね。頼りにしてるよ」
「・・・!? はい!」
「まあ、ベッタダンジョンのことは様子見ということで・・・」
リゼの顔色が良くなったところで、ミフロスはいきなり歩き始めた。
「どちらに向かわれるのですか?」
「ちょっと頼み事をしにね。あの子のところに行く」
「あの子だよ。ちょっと頭がぶっ飛んでいる子」
フェイダンジョンにある一室にそいつはいた。
ボロボロに破れ、色もくすんだ白衣を身に纏っている。髪はボサボサでシワが多い男だ。
部屋には埃まみれのベッド、大型のノコギリ、ホルマリン漬け。それ以外にも気味の悪いものが無造作に置かれている。
その男によって手足を拘束され身動きの取れない男が一人。口も塞がれ、話すことはできない。
「んんっ・・・!」
「君のことが知りたいな・・・。君が本当になりたいものは何なのか・・・」
「・・・んんっ!!」
男は必死に抵抗を試みるが、頑丈に拘束されているため何もできなかった。
「君のことを教えてね・・・!」
「んんっ!!」
白衣の男は拘束している男の頭に両手を置き、魔法を唱える。
「【記憶読込】・・・!」
「んんん!」
白衣の男は目を瞑り、記憶を自分の頭の中に読み込ませている。
「そうかそうか。そんなことがあったのか・・・」
「んぁぁん!!」
白衣の男は記憶を読み込み終わると目を開け、拘束している男の心臓に手を当てた。
「君も力が欲しかったんだね・・・。わかるよ、わかる! みんなと同じだ・・・」
「んんっ!」
「望み通りにしてあげるよ・・・」
「んんんっ!!!」
「・・・フェイルくん」
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