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魔王と創造主(さくしゃ)と数字

 「さ……」


 エラルティスが高らかに言ったその単語を聞いたギャレマスは、唖然としながら目をまん丸にする。


「……“さくしゃ”だと?」

「そうですわ。“創造主(さくしゃ)”ですわ」


 当惑するギャレマスに向けて、勝ち誇るように頷いたエラルティスは、エヘンと言いたげに豊満な胸を張ってみせた。


「――先ほど、あなたたちのダラッダラした締まりの無い尺稼ぎな戦いを見ていた時に、天から降って来た声を聴いたんですの。有象無象の愚民どもには聴こえない――万物の霊長の更に頂点に立つ“聖女(わらわ)”の耳にしか届かない――そう、創造主(さくしゃ)の声がね!」

「……お、おう、そうなのか……」

「……? なんか、妙にリアクションが薄いですわね? 言いたい事でもあるんですの?」

「あっ、いや!」


 思ってたよりも反応が鈍かった事に怪訝な表情を浮かべたエラルティスの問いかけに、ギャレマスは慌てて首を左右に振る。


「実は、余も――あ、いや、何でもない。ええと……そ、それで?」


 そして、『作者(そうぞうしゅ)の声が聴こえた』とドヤっている彼女の機嫌を損ねかねないと察し、喉まで出かかった言葉をグッと飲み込んで、話の先を促した。

 そんな魔王の態度に引っかかりを感じたエラルティスは、一瞬不機嫌そうに眉を顰めたものの、すぐに気を取り直して口を開く。


「――それで、創造主(さくしゃ)は、わらわにこうおっしゃいましたの。『このままじゃ総合ポイントがヤバい……』って」

「は?」


 エラルティスの口から出た聞き慣れぬ言葉に、思わずギャレマスは首を傾げた。


「な、何なのだ? そ、その……“総合ポイント”というのは?」

「正直、わらわも良く分かりませんでしたけど、どうやら、この“世界”の()()につながる何からしいですわ。『この戦いを書き始めてから、星5評価が二つも消えた……』とか『げーっ! ブクマも減ったぁ!』とか『これは評価を消されたんじゃない。きっと評価してた読者さんが退会したんだそうに違いない!』とか、そんな事を()()()()でギャーギャー喚いてらっしゃいましたわ」


 と、形の良い顎に指を当て、その時聴いた内容を思い出しながら答えたエラルティスは、「とにかく――」と言葉を継ぐ。


「どうやら創造主(さくしゃ)は、その“総合ポイント”が減ってしまった原因こそが、あなたがゾンビどもと無駄に長々と戦い続けているせいだ――と結論付けたようですの」

「ちょ、ちょっと待てい!」


 ギャレマスは、エラルティスの言葉に思わず声を荒げた。


「で、では何だ? その“総合ポイント”とかいう“評価”が下がったのは、余のせいだと言うのかっ?」

「そういう事になりますわね」


 エラルティスは、ギャレマスの上ずった声にあっさりと頷く。

 そんな彼女に、ギャレマスは顔面を朱に染めながら反論した。


「そ、そんな事は無いであろう! だ、だって、古今東西、主人公の戦いというのは盛り上がるものであろうが! か、仮に評価が下がったとしても、それはきっと一時的なもので……」

「……『だぁかぁらぁ、そういう作品じゃないんだって、ウチは』……そう(のたま)ってますわね、創造主(さくしゃ)


 エラルティスは、聞き耳を立てるように手を翳しながら、更に言葉を続ける。


「……『この前も言ったでしょ? この作品は、本格バトルファンタジーとかじゃなくて、王道展開をパロったズッコケコメディだ――って。だから、最近みたいな白熱したバトル展開なんて、あんまり望まれてないって事なんだと思うよ。実際に評価ポイントが下がっちゃってる訳だし』……ですって」

「ぐ……!」


 エラルティスが代弁する“創造主”の御言葉に、ギャレマスは臍を噛む。

 そんな彼に冷ややかな視線を向けながら、エラルティスは口を開いた。


「――という訳で、そんなあなたたちのグダグダバトルをとっとと終わらせてくれと“創造主(さくしゃ)”に頼まれたから、わらわがこうして一肌脱いで差し上げましたの」


 そう言って、イキビト二号を拘束する聖鎖をドヤ顔で掲げ上げるエラルティス。


「謹んでわらわに感謝なさいな、魔王……いえ、魔駄王(マダオ)! おーほっほっほっ!」

「ええ~……」


 高笑いする聖女を前に、頬を引き攣らせて心底嫌な顔をする魔王。

 と、エラルティスは、捕らえたイキビト二号に向けてクイッと顎をしゃくってみせた。


「さあ……わらわの聖鎖法術(ホーリーチェーン)で動きを止めている間に、その死体人形(ゾンビ)を仕留めてしまいなさいな、更に“総合ポイント”とやらが下がってしまう前に!」

「え、えぇ……?」


 エラルティスに急かされたギャレマスは、思わず躊躇する。


「い、いやぁ……せっかく、伝説の“霹靂王”との一騎討ちなのに、最後にこういう幕切れっていうのは、少し盛り上がりに欠けるのではないだろうか? もっとこう……『血戦の末に』みたいな劇的な結末で……」

「……『だから、この作品にはそういうの要らないんだって言ってんじゃん』……と、創造主(さくしゃ)は申しておられます」

「ぐ……!」


 グチグチとゴネていたギャレマスだったが、エラルティス――が代弁した作者の言葉にやり込められ、ぐうの音も出せない。

 そんな彼に、エラルティスはウンザリ顔で言った。


「モタモタしてたら、わらわが代わりにトドメを差してしまいますわよ。魔族の上に死体人形(ゾンビ)ですから、わらわの対魔完滅法術で塵ひとつ残さず消し去れますから」

「わあ! ま、待てい!」


 エラルティスの言葉に、ギャレマスは慌てて声を上げる。


「あ、相分かった! ここは、不本意だが作者の言う通りにしよう! せっかくのトドメシーンをお主に掻っ攫われるよりはマシだ……」

「はぁ……どうせ殺るんだったら、グダグダ言わずにさっさと殺っちゃいなさいな。まったく、魔王のクセに判断が遅いですわねぇ」

「……」


 ギャレマスは、エラルティスが上げた溜息混じりの呆れ声に顔を顰めながら、身体に巻きついた聖鎖を何とか外そうともがいているイキビト二号に向き直った。

 そして、自分に良く似た面立ちの先祖に、「ガシオ様……」と、しみじみとした声で語りかける。


「このような形ではありましたが、“霹靂王”と称された貴方様と、互いの力を競う事が出来て嬉しゅうございました。再びあの世へお帰しいたしますゆえ、安らかにお眠り下され」


 そう告げたギャレマスは、万感の思いを込めて、両手を打ち合わせた。


「雷あれ――」






「……って、結局トドメのシーンは描写しないんかいぃっ!」

「……『だって、いい加減疲れちゃったんだもん』……と、創造主(さくしゃ)は申しておられます」

「作者ああああああああああっ!」

……総合ポイントが下がったのはガチです(´;ω;`)ウゥゥ

読者の皆様、もし評価がまだでしたら、この機会に是非とも評価をオナシャス!


……あ、ほ、☆剥奪はやめてえええええっ!

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