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王国には参謀が必要です!  作者: G-20
第2章 白き魔女
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【第6話】 救援

~オークの洞窟~


 青年は額から血を垂らし、必死に抵抗を続けていた。


 もう、この剣は限界だ......。あと一振りしたら、使い物にならなくなるだろう。あれから何匹仕留めただろうか......。


 辺りはオークの死体の山ができている。しかし、それでもオークの数は減っていない。青年が死ぬのは時間の問題である。

 彼は初級冒険者でありながら、かなり持ちこたえた方である。普通の冒険者であれば、既に体力は尽きて、今頃は身体を解体されて奴らの餌となっていてもおかしくない。


 血豆が潰れた手で青年は剣を握り、オークへ駆ける。


エルヴィン

「っ......スラッシュ!!」


 剣を振り上げて、一閃を放つ。


 ズシャ!!


 剣で斬り上げて、オークを仕留めたが、その反動で刃が折れて弾け飛ぶ。


 バキィイイン......!!


エルヴィン

「ここまでか......」


 青年は折れた剣を悔しそうに見つめた。これでもう抵抗することすら出来なくなってしまった。兵士を目指すものとして、どうせ死ぬならば、戦って死にたいことだろう。


 青年のからは涙が溢れ出しす。


エルヴィン

「ちくしょう......、ちくしょう......ちくしょう!!」


 人に嵌められ、負傷をし、剣も折れ心も挫かれる。

 泣き崩れて動けない青年に、オークは首を掴み持ち上げた。


エルヴィン

「ウッ......」


 嫌だ......。死にたくない。

 誰でもいい助けてくれ。

 怖い......。誰か......。



 遠くからこちらへ、向かってくる足音が聞こえる。

 その音はやがて大きくなっていく。



 ズッシュ!!



 何かが抉れる音と同時に、噴水のように真っ赤な血が宙に噴き出す。

 オークの手が緩むと、エルヴィンはその光景を眺めながら逆さから落ちてゆく。

 

 ――ドサッ!


 エルヴィンは地面に後頭部を強く打つ。その衝撃で一瞬、頭が真っ白になった。


 痛い。

 何がおきたのだろうか......?


 理解できずにいるエルヴィンに男が声をかける。


「おい、大丈夫か? 今、助けに来た。もう安心しろ!」


 エルヴィンは声のする方へ、ゆっくりと見上げる。

 その声の主はゴードンであった。

 エルヴィンはそれを見て目を見開いて驚いた。


 なぜ、俺を助けたのだろうか?


 ゴードンとは以前にパーティを組んだことがよく覚えていた。ただ、そのパーティーで依頼を受けた時にエルヴィンの勝手な行動によってケガをさせてしまった。さらに、エルヴィンは、その時に怪我の原因が弱いメンバーのせいであると責任を転換したのだ。


 エルヴィンはその時のことを思い出して、なぜ助けたか理由を尋ね始める。


エルヴィン

「俺は......。俺のせいで傷を負ったのに......なぜ助ける?」


 基本的にパーティーを組んでいなければ、モンスターに襲われている冒険者を助ける義務はないのだ。

助けに入ることで、自分がモンスターに襲われて命を落とすかもしれないからだ。


 自分の命は自分で守る。これが冒険者の鉄則であるのだ。

 そして、王国やギルドもこれを前提としており、危険な職業であることを了承の上、活動を認めていたのだ。


ゴードン

「......覚えていてくれたんだ。」


 ゴードンも前回のパーティーのことを覚えていた。


エルヴィン

「な、なぜ? なぜ、俺を助ける?!」


 エルヴィンにはゴードンが自分を助ける理由がわからなかった。助けて何のメリットがあるのだろうか? 恩を着せるためだろうか? 金か?


 そんなことを考えるエルヴィンにゴードンは優しく言った。


ゴードン

「助けたいから、助けるんだ! 君の為でもあるし、俺の為でもあるんだ!」


 ゴードンは鼻を擦り、オークの方へ剣を構えて走り出す。


ゴードン

「連続スラッシュ!」


 3つの斬擊がオークに命中する。手、首、胴と綺麗に切り落としていく。

 次から次へと現れるオークをゴードンは素早く倒していった。





ゴードン

「はぁはぁ......」


 あれから、十数匹は倒しただろう。ゴードンも次第に息が上がり始める。


ゴードン

「きりがないな......」


 助けに来たはいいが、全てを倒しきれていない。

 逃げに転じたいのだが、エルヴィンが負傷しているため直ぐに追いつかれてしまうだろう。


 ズッシズッシ......


 そこへ重たい足音が響き渡る。

 武装したオークが現れた。

 そいつは、先ほどまでのオークとは雰囲気が異なる。取り巻きを統率しており、ふんぞり返った態度を見るにオークの上位種であるだろう。手に持つ剣は切先が大きく四角い出刃包丁のような形状だ。身体は一回り大きくて、鎖かたびらを装着していた。

 後ろの取り巻きオークも武装をしており、一匹は大きい盾とブロードソードを持ち、もう一匹は杖を持ってこちらの様子を見ていた。


オーク・ソルジャー

「ブヒッイイイイ!!」


ゴードン

「こいつは、厄介だ......」


 ただでさえ、大量のオークで体力が消耗しているのに、上位種なんて相手にしていられない。早い所、片付けたい。

 ゴードンは回復を担うオークへと剣を突き刺そうとする。


盾オーク

「ブッフ!!」


 しかし、大きな盾を持つオークがゴードンの前に立ちふさがる。


ゴードン

「クソ......! スラッシュ!!」


 キィーン!!


 ゴードンは斬擊を放つが、オークの盾によって弾かれてしまった。


盾オーク

「ブッフフフ!」


ゴードン

「はぁああ!!」


 ゴードンは盾の一点に狙いを定めて、腕を引いて力をためる。


ゴードン

「これなら、どうだ!!」


ゴードン

「ブレイク・ブレード!!」


 ゴードンは飛び上がり、剣を振り上げてから、重い一撃を放った。


 ビッギィィイ......!!


 派手な音が出た割には盾へのダメージが小さい。ほんの少しのヒビが出来た程度だった。


ゴードン

「ダメか......」

 

オーク・ソルジャー

「ブヒヒヒヒ」


 この技は、隙が大きく何度も使えるようなものではなく、他に有効な技がある訳でもない。

 ゴードンは決意してエルヴィンに向けて叫ぶ。


ゴードン

「このままでは共倒れになってしまう! 先に行ってくれ!!」


 ゴードンは時間を稼ぐつもりだろう。


エルヴィン

「ふざけるな! 俺を助けて死ぬつもりか?!」


ゴードン

「俺なら大丈夫だ、ここで死ぬつもりはない。だから、先に逃げて助けを呼んできてくれ! 頼む!!」


エルヴィン

「ちくしょう......ちくしょう!! 絶対に死ぬんじゃないぞ!!」


 エルヴィンはゴードンを背にして、唇を噛みその場から離れた。


ゴードン

「......」 


ゴードン

「......君こそ死ぬんじゃないぞ」


 ゴードンは小声で呟いてから、剣を構えてオーク・ソルジャーの前へ立つ。

 懐かしい記憶が蘇る。



 ............。


 あの時も、こんな感じに足止めをして、守ろうとしたんだっけな......結局あのときは俺が弱すぎて、足止めにならずに仲間を失ったんだ。

 ああ、何で俺だけ助かったんだろうか......? なぜ俺は強くなかったんだろう?


 ゴードンは皮肉にも全てが終わったときに、"足止め"という能力(アビリティ)が解放されたのだった。

 そして、この"足止め"は仲間を逃がす際に非常に有用な能力(アビリティ)であり、その効果は著しい体力の向上によって、長期の防戦が可能となるものなのだ。


 

 ゴードンの目に迷いはない。彼はオークを睨みつけて、覚悟を決めた。

 

オーク・ソルジャー

「ブフフフフ!」


 オーク・ソルジャーは巨大な剣でゴードンに斬りかかる。


 ガッキン!!


 ゴードンはオークの重い一撃を剣を受け止める。

 しかし、横からゴードンの腹にめがけて、蹴りが入る。


ゴードン

「ぐっ!!」


 吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。

 能力(アビリティ)は発動している。ダメージは先ほどよりも軽減されている。

 それなのに、怖いのだ。また、守り切れずに失ってしまうのではないだろうかという、不安で心が押しつぶされそうになる。ゴードンはそのせいで、全力を出すことが出来ないのだ。




 ここまでか......。

 くそ......結局、また時間を稼げなかった......。


 オーク・ソルジャーが剣を振り上げて止めを刺そうとする。

 ゴードンはゆっくりと目をつぶった。


オーク・ソルジャー

「ブッフフフフ!!」


???

「オル・サンダー!!」


 オーク・ソルジャーがゴードンへ斬りかかろうとしたその時に電撃が炸裂する。


 バヂヂヂイイイィ!!


 激しい音と共にオーク・ソルジャーの身体は発光し火花を出す。


 ゴードンは眩しそうに目を開けた。


 あれは......?

 エルヴィン君と......ギルド職員? いや、アルト君なのか?!


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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