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王国には参謀が必要です!  作者: G-20
第2章 白き魔女
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【第5話】 それぞれの思い

 嵌められた。

 こんなはずではなかった......。俺はこんなところで、死ぬのだろうか......?


 薄暗い洞窟の中で一人の青年が必死に剣でモンスターを倒している。

 その青年は、短髪で茶色く、瞳がブルーで目付きが少し鋭い。そんな、彼が剣で切り倒しているのが、オークである。この洞窟はオークの住処であるのだ。オークにも様々な個体が存在し、中には非常に危険な個体も存在するのだが、この洞窟には通常の個体が多く、初心者者や下級冒険者などが、よく討伐や素材採取の為に訪れる。ただ、いくら強くはないと言っても、それは他のモンスターと比べた時であり、初心者などは油断をして、死んでいくのだ。

 ただ、この青年に関しては油断はしていなかった。パーティーも組んだ。一応、傷薬なども持参していたのだが、本来いるはずのメンバーがおらず、一人で戦っていたのだ。


 数体のオークが青年を囲み始めた。なぶり殺すつもりなのだろう。下卑た笑みを浮かべながら丸腰で迫る。


 こいつら、雑魚モンスターのくせに調子に乗ってやがる......。倒しても倒しても、何処からか湧いて出てきやがる。


 青年は今日集まった、パーティーメンバーの様子が変だったことを思い出す。顔合わせの時に自己紹介で全員が初対面のはずだったが、青年を除くメンバー同士の連携が異様に上手かったからだ。普通ならば相手を気遣ったり、配慮したりして少し動作が鈍くなるものなのだ。


 青年は唇を噛み締める。


 これも、奴等の思惑通りというわけか......。

 知らない間に、色んな奴から恨みを買っていたのか......。

 いや、本当は気づいていた。ただ、俺は強く在りたかったんだ。兵士を目指すものとして、弱いところを見せないためにも自分を偽ってきたんだ......。

 ここで、活動し始めても、劣等感を感じたくないから他人のせいにしていた。その結果、人から恨まれてメンバーに嵌められたのか......。


 青年は覚悟を決めて剣を強く握めて叫びあげた。


エルヴィン

「このクソ豚共めぇええ!!」



~数時間前~


 今日の冒険者ギルドは閑散としていた。


 この前までアラウネ出現によってギルドは慌ただしかったのだ。報告を受けたギルドは王国と直ぐに連携を取り、大々的な調査を開始したのだ。しかし、それから一週間近く経つが、アラウネによる被害の報告が上がっていないのだ。しかも、アラウネを目撃したとされる山岳付近には、その住みからしき洞穴は見つからずにいたのだ。

 そのため調査は打ち切られて今では嘘のよう静まり返っていた。


 緩く気の抜けた声が、ギルドに響き渡る。


受付譲

「あー、暇だわー。今日も忙しなると思って、死ぬ覚悟で出勤したのに、これだよ......」


 声の主は、明るい茶色の髪をした女性であり、その髪は後ろに編み込まれてまとめられている。顔立ちは整っており、清楚な雰囲気を醸し出していた。

 彼女はギルドの受付譲であり、冒険者の男達はその美貌に惹きつけられて、受付でいつも心を奪われるのであった。

 ただ、その性格は、見た目とは反対に自堕落であり、夜に歓楽街で色んな男性と遊んでいることから、それを知った男たちはそのギャップに驚くのである。


受付譲

「これも全部、アルト君のせいだよ!?」


アルト

「すみません、でも被害を出すわけには行きませんし......」


受付譲

「君ねえ......真面目すぎなんだよ? もっと楽することを覚えた方がいいよ? そんなに細かいこと気にしているからモテないんだよ?」


アルト

「は、はぁ......。そうですね......」


受付譲

「あーあ、こんなんなら今日の夜の食事の誘い断んなければ良かったなー」


 受付譲は毎日、男達から夜の食事に誘われて、ただ飯を食べに出かけていたのだ。自分がいかに、お金を使わないか、いかにして楽するか、計算高い人間なのである。そんな彼女こそ参謀にふさわしいのかもしれない......。


 バンッ!! 


 1人の少女が慌ただしくギルドの扉を開けた。


 少女の金色の髪はひどく乱れており、息が切れている。

 その少女は今にも泣き崩れそうだ。そんな少女が弱々しい声で叫ぶのであった。

 アルトはその少女とパーティーを組んだことがあり、よく覚えていた。


ミリア

「助けてください! ゴードンさんが!」


 必死に助けを呼ぶミリアに何事かと思い、アルトと受付嬢は駆け寄る。


アルト

「何があった? 怪我はないようだけど......。 まずは落ち着いてミリア。ゴードンがどうしたの?」


 震えるミリアに深呼吸を促す。

 少し落ち着いたところで、ミリアは口を開いた。


ミリア

「ゴードンさんが、一人でオークの洞窟へ向かったんです。それで......」


 ミリアは経緯を説明しだした。


 聞けば、ゴードンとミリアはいつもの様にパーティーを組んで、依頼を受けて街を出た矢先に、質の悪い冒険者達がエルヴィンを嵌めて痛い目にあわしたという話をたまたま耳にしたのだった。それから直ぐに、ミリアを置いてゴードンは助けに向かったと言うことだった。


アルト

「いくらゴードンが経験が豊富だからといってオークに囲まれては助からない......」


 助け出したいと思うアルトは、受付譲の方を見る。

 そんな視線に彼女は、はぁ......とため息をついた。


受付譲

「......。君、死ににいくの?」


 初級冒険者の貴方が行ったところで、死体が一つ増えるだけと伝える。と言っても、受付嬢はアルトの性格を仕事を一緒にしていくうちに理解はしていたのだ。


受付嬢

「 ......って、どうせ私が止めても助けに行くんでしょ? いいわよもう......私に仕事を押し付けなさいよ!」


アルト

「ありがとうございます! 彼らの救援に向かわせてもらいます。先輩は緊急の応援要請をお願いします。では、行ってきます!!」


受付譲

「ったく、命知らずな人......。全く! もう仕方ないやつだなー! もう、一肌脱ぎますよー!!」


 アルトの後姿を見送って、受付譲は腕まくりをする。


 さあ、また忙しくなりそうだ。中級から上級冒険者への救援要請、ギルドマスターへの報告。質の悪い冒険者の捜査と冒険者ギルドからの除名。それから......。


 受付嬢はいつものだらしない表情から、真剣な顔に変わる。

 面倒なことや、自分がやりたくないことはアルトにやらせるが、その代わりに自分の出来ることはきっちりとこなすのだ。そんな彼女の良き面を知っているため、アルトは一応彼女に敬意を払って先輩と呼んだのだった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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