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王国には参謀が必要です!  作者: G-20
第2章 白き魔女
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【第2話】 ゴブリン討伐

 アルト達は王都から馬車に乗り農村地区へ到着した。

 畑の奥には森があり、山々が聳えるルプスア山脈が見える。山から農村まで川が流れており、透き通っている。

 その川の近くで、なにやら緑色の体色で小さく飛び跳ねて畑を荒らすモンスターが見える。


エルヴィン

「アイツらか......」


アルト

「依頼書に書いてあるゴブリンで間違いない......」


 冒険者一行は、ゴブリンを捉えると戦闘の準備に差し掛かる。エルヴィンとゴードンは剣を抜き、アルトは魔法の詠唱の準備をする。その中に一人だけ震えている少女がいた。ミリアだ。

 ミリアは初めてモンスターを見るのか、とても緊張しているのか、涙目になっている。


ゴードン

「ミリア、肩の力を抜くんだ。緊張していては、神に祈りを捧げられないよ」


ミリア

「は、はい......頑張ります」


 か細い声に、アルトはミリアが心配になって神に祈りを捧げた。


アルト

「我らに悪しきものを倒すための勇気を......ブレイブ!」


 アルトが神に祈りを捧げ終えると少女の顔からは恐怖が消えて、落ち着きを取り戻した。それを見たゴードンはアルトの万能さに驚き、思わず褒めたのだ。


ゴードン

「アルト君、君はそんなことも出来るのか! 凄いや噂は本当だったんだな!!」


アルト

「ええ、まぁ、ありがとうございます。ただ、本職の方と比べると効果はあまり期待できないので油断は禁物です」


 あまり、ハードルを上げないでほしいと思うアルトとは反対に、ミリアもアルトの祈りの効果に絶賛した。


ミリア

「アルトさんは凄いです......神の祈りは日々の修練が物を言うのです。ここまでは普通の人は出せませんよ! それに比べて私なんか......」


 アルトを自分と比較して、落ち込み始める。そんなミリアにゴードンはフォローする。


ゴードン

「アルト君はアルト君。ミリアはミリアの出来ることをすればいいのさ! 人と比べだしたら、きりがないないしね!」


 アルトもゴードンと同じようにミリアに言う。


アルト

「ミリアは俺よりも歳が下だ。出来なくて当たり前だよ。それに、これを機に成長すればいい話さ!」


 二人からの気遣いに感謝する。ミリアは元気を取り戻し、明るくなった。

 そこで、エルヴィンがゴブリンの状況を伝え始める。


エルヴィン

「話の水を差すようだが、ゴブリンがこちらに気が付いたようだ。数は7体だ。俺が全員始末する」


 そう言って、一人で突っ走るエルヴィンにゴードンが止めようとする。


ゴードン

「ちょっと待ってくれ、単独行動は危険だ!」


しかし、エルヴィンには声は届かず、どんどん距離が開いていく。


アルト

「彼をサポートします! ゴードンさんはミリアを守ってください!!」


 ゴードンはアルトの冷静な判断に頷いて守備を固めた。そして、アルトはそれを確認すると素早く前に出て、エルヴィンの支援に向かった。


ゴードン

「ミリア、俺の後ろに下がってて」


 ミリアは黙ってうなずきつつ、神に祈りを捧げる態勢をとった。



 アルトが到着したころには、エルヴィンはゴブリンとすでに交戦していた。すばしっこい相手で剣を振るうが中々当たらない。ゴブリンは剣をかわして走り去る。


エルヴィン

「クッソ! 取りこぼした。」


 ゴブリンが3体、ミリアたちの方へ走っていく。


エルヴィン

「こいつ......! スラッシュ!!」


 ズシャ!!


 エルヴィンは素早い斬撃を繰り出して、ゴブリンを一体両断した。油断していたゴブリン達は、それを見ると後退し始めた。

 しかし、再びこちらを睨みつけてから、ゴブリンは近くにある石を拾ってエルヴィンに投げ始めた。


ゴブリン

「クッキャキャ!!」


 石や泥をぶつけられて、エルヴィンはイラつき始める。ゴブリンに近づいて攻撃するのだが、単調な攻撃になり、避けられる。しかも、ゴブリンはそれを知ってか、石を投擲しては逃げるを繰り返していた。


エルヴィン

「クソ!! 正々堂々と勝負しろ!!」


 エルヴィンはゴブリンに怒鳴るが、ゴブリンは馬鹿にしながら石を投げ続けている。そこへアルトが魔法を放つ。


アルト

「ブリザー!!」


 氷の魔法を放ち地面を凍らす。ゴブリンたちの足元は身動きが取れなくなった。


エルヴィン

(クソ......余計なことを......)


アルト

「左の2体は任せる!!」


エルヴィン

「......ああ、わかった!!」


 アルトは再び魔法を唱え始めた。


アルト

「......エル・ウィンド!!」


 ズバッ!!


 風の刃がアルトの手から放たれて、2体のゴブリンの首を跳ね飛ばした。

 アルトはゴブリンの死体を確認すると、エルヴィンの方からも、こっちも始末したという声が聞こえた。


 アルトはミリア達のことが気になり始めた。いくらゴードンに冒険者として経験があるとは言え少女をかばいながら戦闘するのは難しいだろう。アルトはすぐさまエルヴィンにミリア達のところへ戻るように注意するのだが......


エルヴィン

「流石に下級冒険者でもゴブリンを始末できないほど、やわじゃないさ」


 そう言って、エルヴィンは聞く耳を持たない。アルトはエルヴィンに説得をする。


アルト

「しかし、先みたいに遠距離から投擲されたら厄介だ。彼らには遠距離で奴らを倒す術を持っていない。一度、合流するべきだ!」


 エルヴィンはそれを聞いて、呆れた。


エルヴィン

「何のためにアコライトがいるんだ?! 防御の祈りをすればいいじゃないか! それすら出来ないのなら......」


 エルヴィンが最後の一言を言おうとしたところに、手斧がエルヴィン目がけて飛んできた。


アルト

「ストーン!!」


 アルトは間一髪のところで、石の壁を作り、攻撃を防いだ。石壁は斧の攻撃を防ぐとガラガラと地面に崩れる。攻撃してきた方向を見ると、残りの3体のゴブリンと、その真ん中で殺意を向けてくる武装したゴブリンがいる。


アルト

「あれが、ボスのゴブリン・ソルジャーだ......さっき見たいに油断しないようにな」


エルヴィン

「助けてもらわなくても自分で何とか出来る。それと、ボスは俺が仕留める、手を出すな!!」


 アルトは彼の態度を不服に思い、反発する。


アルト

「一人は危険だ! 一旦引いた方がいい!!」


エルヴィン

「いちいち指図をするな!!」


 そう言うとまた一人で突っ走り始めた。エルヴィンは周りが見えなくなっていた。早く手柄を取りたいのだろうか。アルトはやむを得ず、エルヴィンのサポートに徹することにしたのだ。


アルト

「悪しきものから我らを守りたまえ! バリア!!」


 アルトは続ける。


アルト

「悪きものを、倒すため我らに力を! パワー!!」


 エリヴィンはゴブリン・ソルジャーに斬撃を放つ。


エルヴィン

「連続スラッシュ!!」


 斬撃の連撃はゴブリン・ソルジャーに命中するも、踏み込みが浅いのか、傷が浅いため効いていないようだ。

 アルトは取り巻きに手を向ける。


アルト

「拘束せよ! オル・バインド!!」


 ゴブリンの手足を拘束すると、ゴブリンは拘束を解こうと必死に手足をばたつかせる。ゴブリンの腹はがら空きだった。そこへ目がけてアルトは魔法を放つ。


アルト

「貫け! エル・ブリザー!!」


 ズシャズシャ!!


 ゴブリンの急所に氷の刃が突き刺さり、取り巻きゴブリンたちは絶命した。こちらは始末した。エルヴィンは大丈夫だろうか......。アルトはエルヴィンの方を見た。まだ戦っている。どうやら苦戦をしているようだ。支援するために、エルヴィンの剣に向けて魔法を放った。



アルト

「ブリザー!!」


 突然、剣に氷塊をぶつけられて、エルヴィンはこちらを睨んだ。しかし、彼は着弾し剣を確認すると、外傷はなく、剣から冷気が出ていた。


アルト

「武器に氷系統の魔力を付与した! それでそいつを仕留めろ!」


 エルヴィンは再び眉をひそめたが、すぐに意識を敵に向けた。ゴブリン・ソルジャーは盾を構えて防御の態勢をとっている。エルヴィンは渾身の力を込めてとびかかる。


エルヴィン

「スラッシュ!!」


 バギッ! 


 ゴブリン・ソルジャーの盾は真っ二つに両断される。


 ズシャ!!


 盾が破壊されたと同時に身体に深い斬撃が入る。


ゴブリン・ソルジャー

「ガアアアアアア!!」


 傷口から凍りついていく。ゴブリン・ソルジャーは必死にもがくが、氷はどんどん全身に広がっていく。

 やがてゴブリン・ソルジャーは氷の彫刻のようになって、身動きが取れなくなっていた。

 そして、氷から亀裂が入り、ソルジャーの身体はバラバラになり砕け散った。


 アルトはそのバラバラになった死体を確認するとすぐに、ミリア達の方へ駆けていった。彼女らが心配だった。エルヴィンの声が聞こえたが無視をした。

 彼女らのいた場所へ行くと、ゴブリンたちの死体と、血だらけで横たわるゴードンの姿があった。

 

ゴードン

「こっちは何とか大丈夫だ......うっ......」


 ゴードンは傷だらけだったが、そこまで深い傷ではなく、治療すればすぐに動けるものだった。ミリアの方は怪我はないようだが、ずっと彼の横で泣きながら謝り続けている。


アルト

「意識はあるようですね。良かった。今傷薬を渡します」


ゴードン

「すまない......助かる。そっちも終わったようだな......」


 ゴードンは安堵した。アルトは傷薬を使って怪我の処置に入った。


 そこに、アルトに追いついたエルヴィンは泣いているミリアを見て、見下すようにミリアに言い放つ。


エルヴィン

「本当に呆れる。お前は何のためにここにいるんだよ? 回復すら出来ないのならいない方がましだ」


 それを聞いたアルトはエルヴィンに近づいて、怒鳴った。


アルト

「では、なぜ君はゴブリン如きに苦戦をした? なぜ、全て倒すと言いながら取りこぼした?!」


 アルトは我慢の限界だった。一人が勝手な行動をするとパーティーは崩壊する。部隊が乱れないように助言をして、効果的に戦果を出すのは参謀としての基本中の基本だ。今回は戦いに勝っても、戦略的に失敗であった。

 仮に失敗であっても人として成長するならば、アルトは目をつぶる。それどころか歓迎する。

 しかし、今回、ゴードンの負傷の原因を作ったエルヴィンに反省の色が見えないことに、アルトは憤りを感じたのだ。


エルヴィン

「俺は苦戦などしていない! それと少し魔法が使えるからっていい気になるな!!」


 ピリピリとした空気が流れ始める。

 そこで、大声で少女が叫んだ。


ミリア

「もう、やめて!! 私が悪いんです!! 何もできない私が......」


 ミリアは再び泣き崩れてしまった。彼女の鳴き声が響き渡る。


 ゴードンは傷だらけの身体を起こして彼女の頭を撫でた。


ゴードン

「みんな、今日はありがとう。俺の傷は見かけほど深くないから心配ない」


 そう言うと、ギルドに戻るよう案内した。


 アルトは馬車のあるところまでゴードンの肩を組み彼を支える。時々、彼の怪我が少し心配になって声をかけるのだが、ゴードンは心配ない。すまない。とだけ言って会話が続かなかった。そして、馬車を停めている場所へ到着するとゴードンはゆっくりと乗り込んで眠ってしまった。アルトやミリアも黙って乗り込む。エルヴィンは距離を置いて乗り込んだ。馬車は動き出して、王都へ向かう。馬車の中は静まり返り、誰一人言葉を発さなかった。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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