【第1話】 冒険者ギルド
――数日後――
アルトは冒険者ギルドにいた。あの日から、冒険者ギルドで働いていたのだ。アルトは真剣に自分のことを考えた結果、今までに得た幅広い知識が冒険者の支援に役に立つと判断していた。その技術を生かすために冒険者ギルドに足を踏み入れたのだ。アルトのその判断は正しかったのだ。アルトの行うモンスターの素材などの鑑定技術は正確であり、ギルド職員として冒険者ギルドの受付で大いに貢献をしていたのだ。
まぁ、週二でのアルバイトだが。
週二かい! って突っ込みたくなるがこれには理由がある。一つはまだ試験の結果が出ておらず、正式に発表があるまでは正式に職探しをすることが出来ないのである。仮に合格発表前に他の職に就いたとして、その後に参謀として任用されたら、前職は辞めなければならないのだ。第二に、他の三日は冒険者として活動をしているからだ。冒険者はほとんどが、その日暮らしの生活を送っており、冒険者は雇用関係にはないのが特徴である。そのため、参謀の任用には影響がないのだ。
しかしなぜ、アルトが冒険者として活動するようになったかというと、冒険者のしつこい勧誘に負けてしまったからなのだ。
冒険者ギルドの受付で働き始めて直ぐに、アルトをパーティーに勧誘する連中が現れた。アルトの鑑定やモンスターに対する知識、魔術士並みの能力。オールラウンドに出来るタイプは冒険者におらず大変珍しい存在であったため目立ったのだ。
中級冒険者以上であれば役割分担が徹底されて専門性が高い者が求められるため、アルトみたいなタイプは好かれないのだが、初心者や下級冒険者はそもそも知識や能力は高くない。せいぜい、アルトと同じくらいの能力だ。そのアルトには他にもたくさんの知識や能力がある。一人で下級冒険者数人分だ。それも受付では珍しい”男性”なのだ。泥臭い仕事を女性よりも進んで行っている。モンスターの解体や依頼場所への現地調査もそつなくこなしていたのだ。それを見ていた他の冒険者は心を惹かれたのだ。アルトは残念ながら同性にモテるのだった......
そんなこんなで、アルトは熱い勧誘に負けてパーティーを組んで依頼をこなしていたのだ。最初はいやいや冒険者稼業をしていたが、最近では慣れたのか、黙々と依頼をこなしていた。よく魔法を使ってモンスターを撃破することが多かったため、最近は無詠唱で魔法を放つことが出来るように成長もしていた。
ただ、成長はしているのだがアルトは冒険者としては初心者クラスであった。擬似ダンジョンではスケルトンやオーク、ラミアなど数々のモンスターを倒していたが、その実力を証明するすべがないため、まだ初心者として扱われている。
なお、冒険者のクラスは以下になる。
特級冒険者
上級冒険者
中級冒険者
下級冒険者
初級冒険者
冒険者の人口で一番多いのが中級~下級の冒険者で全体の6割がこれを占める。次の2割が初級だ。上級は1割強存在し、その上の特級冒険者はほとんどいない。いても、魔道士とかの人間場馴れした奴等が兼業をしているのだ。
冒険者のランクは依頼の達成数や難易度の高い依頼をこなしていくことによって、階級が上がる仕組みなのだ。階級を上げたければ、被害の大きいモンスターを討伐すると早い。また、最近ではダンジョン踏破の見世物が流行しているため、ダンジョンのモンスター討伐が人気でもあった。
モンスターは通常個体からその上位種が発見されており、上位種は大抵、群れて行動しているため、冒険者はパーティーを組んで討伐することが推奨される。パーティー推奨のモンスターは依頼の難易度が1つ上がる仕組みである。例えば、スケルトン・ナイトの討伐は下級冒険者がパーティーを組んで依頼を引き受けることが推奨されているが、これは中級ソロ程度の強さを表しているのだ。
さて、アルトは今日、パーティーでモンスターを討伐しに行くのだが......集合場所へ向かったら、すでにメンバーは集まっており、その中に一人、どこかで見たことのある青年が待っていた。
兵士を目指している青年
「......。」
青年はアルトをジロジロと見てきた。そんなアルトは、気さくにも軽い挨拶をした。
アルト
「始めまして、俺はアルト! よろしく!」
青年は黙ってアルトを見ている。そんな彼にアルトは握手を求めた。青年は少し間をおいてから、握手する。
兵士を目指している青年
「あ、ああ......よろしく、俺の名はエルヴィンだ」
青年はアルトと馬車乗り場で会っていたことを覚えていたが、あえてそのことについては言及しないようである。アルトもどこかで会ったような気がするが、どこで会ったか覚えていない様子だったのだ。
無垢な娘
「は、始めまして、私はミリアです。よ、よろしくお願いします!」
それから、緊張しているアコライトの少女が挨拶をする。年は16歳くらいだろうか。垢抜けておらず、連れていくのは不安である。しかし、それは心配無用と言った感じで陽気な男が挨拶をした。
パーティーの依頼をしてた男
「やぁ、始めまして! 俺がパーティーの募集をしたゴードンってんだ。よろしくな!!」
男は一番年長者だろう。見た目は20代後半くらいだ。彼は自己紹介をして、全員集まったことを確認すると早速依頼の内容を共有するために依頼書をみんなに見せた。
ゴードン
「これが、依頼書だよ。パーティーの募集内容に相違があれば俺に言ってくれ」
ゴードンは出発前に全員の意思を確認するために、依頼書を確認するように求められたのでアルトは確認をする。
―――――――――
難易度 ☆☆
討伐
ゴブリン10体
ゴブリン・ソルジャー1体
報酬
1金貨
追加報酬
ゴブリン一体につき、5銀貨
上限 50銀貨
依頼者から
助けてください。ゴブリンに徒党を組まれて、農地を荒らされて困っています。
―――――――――
依頼書を見てエルヴィンが不満そうにゴードンに言う。
エルヴィン
「いくら初級だからと言って、ゴブリンごときにパーティーを組まなくてもいいだろ。俺一人で十分だ」
ゴードンは、まあまあといった感じで、エルヴィンの肩を叩いた。
ゴードン
「それは、危険な考えだよ。ゴブリン一体ずつ倒すなら君でも問題はないが、奴等は群れている。それに指揮者もいるから油断していると、痛い目にあうよ」
それからゴードンはミリアを見て話を続ける。
ゴードン
「それから、この依頼は初めて討伐の依頼を受けるミリアのためとも言えるからね」
エルヴィン
「......。ああ、わかったよ」
エルヴィンは少し眉を潜めるが、震えているミリアを前に頷いたのだ。ゴードンはそれを見て安心した。
ゴードン
「それじゃあ、行こうか」
アルトから見てゴードンはそれなりに冒険者として経験を積んでいるように見えた。メンバーの心情や配慮、持ち物なども少ないが、必要最低限の持ち物は持っているのだ。アルトは今回の依頼では自分の能力を発揮する機会はあまりないだろうと思いながら、彼らの後ろに付いて行く。
こうして、一行は依頼場所である王都から離れた農村部へと向かうのだった。
通貨の単位を変更しました。
これから、モンスター討伐編が始まります。ヒロインはまだまだ先です。
これからもよろしくお願いします。




