表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王国には参謀が必要です!  作者: G-20
第1章 参謀試験
24/31

王国Ⅱ種参謀官吏任用試験 二次試験

 参謀の二次試験は1週間かけて行われる。そのうちの1日を試験本部から指定されて受験者は試験を受けることになる。合格通知が郵送されるまで、どの日が試験日になるかわからない。そのため、一月くらい予定などはいれられないのだ。


 アルトはまわりを確認する。待合室には50人分くらいの席が用意されていた。まだ、試験開始まで時間があるためか、席がほとんど埋まっていない。


アルト

(早く来すぎたか......?)


しかし、数分もしたうちに受験者がぞろぞろと入ってきた。何人か一次試験で見かけた人もいる。


しばらく経つと今度は2名の試験監督が待合室へ入ってきた。一人は前回と同じ女性試験監督で、もう一人は初めてみる男の試験監督だ。特徴がなく、無個性である。その試験官は説明に入る。


無個性な試験監督

「これより、王国Ⅱ種参謀官吏二次試験の説明に入ります」


 声も特徴がない。ここまで来たら逆に無個性が個性だ。


無個性な試験監督

「試験は別室で行い、質問に対して口頭で回答してもらう形式をとります。」


 この二次試験は試験官と対面で行われる方式で口述試験と面接試験の中間のような形態をとっている。そのため、個人の性格はそこまで評価はされない。大体は無難にありがちな回答をすれば合格するのだ。


無個性な試験監督

「3名ずつ名前を呼んでいきます。呼ばれたら彼女が別室まで案内するのでついて行くように」


 と、女性の試験監督の方を見ると、ニッコリして手を振っている。


無個性な試験監督

「それでは、最初に移動してもらう人達は......」


 それから、名前を呼び上げ始めた。


無個性な試験監督

「ロベルトさん、ハッフルさん、アルトさん」


 アルトは名前を呼ばれてビクッとなる。まさか、最初のグループに呼ばれるとは思わなかった。三名は指名されるとゆっくりと立ち上がり、女性試験監督の方へ向かった。無個性な試験監督が三人を確認するついでに、ハッフルという名前の少し太った受験者に注意する。彼の持っているフィギュアが気になったらしい。


無個性な試験監督

「君、関係ないものは鞄にしまいなさい」


 彼は注意をされて挙動不審になり始めた。


ハッフル

「あ...えっとそのえっと......これは......はい......」


 彼は慌ててキョロキョロ辺りを確認したあとに、持っていたフィギュアに声をかける。


ハッフル

「ごめんよ、リボンたん...これも、サヤたんのためなんだおおお!!」


 ハッフルは少し涙目でフィギュアを優しく抱いた。周りにいた人はそんな彼の姿を見て一歩身を引いた。それでも、回りの視線を気にしない彼の心はとても強い。アルトたちは試験前に何を見せられているのだろうか...


 そんなことを一瞬時が止まったが、女性試験監督は歩み始めた。

 そして、女性試験監督に案内されて廊下を少し歩くと、部屋の前に椅子が並べてあった。


 彼女は立ち止まり振り返る。


女性試験監督

「ロベルト君が一番手よ、もう部屋の中へ入っていいわよ! 試験頑張ってね!!」


 それから、彼女はアルトとハッフルに外で椅子に座って待つように指示をした。


ハッフル

「ふーっ、ふーっ、ふーっ......」


 ハッフルは緊張しているのか息遣いが荒い。女性試験監督も彼が緊張していることを察したのか声をかけて励ましていた。ハッフルは女性とまともに喋ったことがないのか、声をかけられるとテンパりながら視線をして、礼を言った。


 それから15分くらい経つとロベルトと呼ばれた青年が部屋から出てきた。


 女性試験監督がロベルトに一言、お疲れ様と言うと、彼もお辞儀をしてその場をあとにした。女性試験監督は彼が帰路につくのを見届けると、試験が行われた部屋の中へ入って行った。

 しばらく経つと、彼女は部屋から出てきてハッフルに部屋に入るように告げた。ハッフルはビクビクしながら部屋の中へ入る。

 アルトは溜息をついた。アルトはこの待ち時間が好きではない。待っている間の時間の使い方がわからないのである。普段なら魔道書などを読むが、ここでは開けない。退屈な時間が続くのだった。


 しかし、突然部屋の中から大きな声がした。


謎の雄叫び

「サヤたんのために頑張るおおおおおおおおおおお!!!!!!!」


 女性試験監督はなんとなく予想していたが、予想外の大声に思わず驚いた表情をしている。


 バンッ!!っと扉が開き、泣きながら青年が飛び出して走り去ってしまった。

 アルトと女性試験監督はそれを見て呆然としていた。


 やがて、部屋の中から中年の試験官が出てきて、アルトに部屋に入るように促した。アルトは指示し従い部屋へ入るとそこに試験官が三人座っていた。二人は中年、一人は初老の試験官であった。


中年の試験官A

「席につきたまえ」


 中年の試験官Aが椅子に指を差して座るように指示をした。


アルト

「はい! 失礼します」


 アルトは緊張しながら席につくと、中年の試験官Bはアルトに退屈そうな表情で軽く挨拶をした。


中年の試験官B

「君がアルト君だね? まずは一次試験合格おめでとう。君は魔法が得意なんだね」


アルト

「はい、ありがとうございます。魔法には力を入れて勉強して来たので」


中年の試験官B

「ああ、そうかい」


 自分で聞いておいて、関心がない。対話する気が感じられない。しかし、アルトはめげないで真剣な顔をしていた。


中年の試験官A

「では早速試験に移るが、まず何故、我が国が魔法の研究や開発に力を入れていると思う?」


 アリオスト王国では魔法の研究が盛んなのは有名な話だ。簡単な質問である。


アルト

「はい。魔法の研究、開発が成功すれば、商業利用や軍事転用の強化につながります。それは、最終的に国力を高めることに直結するため力を入れていると考えます」


中年の試験官A

「なるほど、では具体的にはどのようなことで魔法は我が国に貢献した?」


アルト

「それでは、魔法の水晶を例に挙げます。魔水晶は遠く離れた人の姿を映し出すことが出きるため、瞬時に情報を伝えることが可能となりました。そして、その魔法の発展によって戦では敵陣営の視察、商活動では商品の宣伝を広く行い王国に貢献してきました」


中年の試験官B

「なるほど、わかった」


 冷たく試験官Bは頷いた。試験官Aも少し眉を潜めたが直ぐに次の質問を出した。


試験官A

「次に、物の消費に対して課税する政策をとろうと思うのだが、これについて君の考えを聞きたい」


 一番答えづらい質問だ。王国の立場としては税収を増やしたい。しかし、国民としては課税されることに対しては消極的なイメージなのだ。アルトは少し時間をおいて回答した。


アルト

「物の消費に対して課税をすれば、一時的に人々の消費は落ち込むでしょう。ただし、国民の納得のいく政策を展開できれば、直ぐに持ち直すと考えます」


 アルトは額に汗を流している。苦しい回答だ。


初老の試験官

「ほう、では納得させるにはどうするばよい?」


 ここで、初めて初老の試験官が口を開いた。浅い考えを突っ込まれた。アルトは一瞬戸惑ったが、直ぐに答える。


アルト

「例えば、不作の年に国民へ食料や補助金を交付するなどはどうでしょうか。他にも治安維持のために課税をするとなれば、やむを得ないでしょう」


初老の試験官は黙って聞いていた。しかし、無い知恵を絞りだした努力を認めたのか、納得したような表情で言った。


初老の試験官

「ほう、なるほど。あくまでも民のために税を使うという建前は気に入った」


 試験官Aはそれを見てアルトに最後の質問をする。


中年の試験官A

「それでは最後に、任用されなかったらどうする?」


 いやらしい質問だ。アルトは固まってしまった。不合格で任用されないことは良くある話なのだ。多くの受験者は任用されないことも視野にいれて受験をするのだが、アルトはそんなことを考えたくなかった。合格を信じたからこそ、努力を続けられたのだ。だから、今までその事について考えることを放棄していたのだ。


アルト

「......。」


 長い時間、沈黙が続いた。

 それから、見かねた試験官が口を開いた。


初老の試験官

「まぁ、答えられないくらい努力してきたと言うことだろう......簡単に回答をされたら逆に真剣に考えてないのだろうよ」


 落ちることを考えていたら、最初から努力などするはずもない。しかし、これは試験なのだ中年の試験監督Bが反論に出る。


中年の試験官B

「しかし、それでは......」


 反論しようとした時、それを見た試験官Aが話を遮った。


中年の試験官A

「確かに簡単に答えられる者に参謀となる覚悟は見えない。しかし、回答をしないというのも試験の運営上、問題ではある」


 試験官Aは困ったものだという表情をしてアルトを見た。アルトは直ぐに声を震わせて言った。


アルト

「王国への忠誠は誰よりもあります!!」


 勢い余って自分の想いを叫んでしまった。アルトは後から、やってしまった......と後悔し始める。試験官はそれを見て少し呆れている。


中年の試験官A

「はぁ......まぁ、君の想いはわかったよ。もう、試験は終わりだ退室して構わないよ」


 そう言って部屋から出るように促した。完全に質問と関係のない回答をして終わった。


 アルトは落ち込み気味で部屋から出ると、外まで声が聞こえたのか女性試験監督が笑って待っていた。


女性試験監督

「ふふ、お疲れ様! 出口はあそこよ、気をつけて帰ってね!」


 彼女は優しくアルトに案内すると、アルトは彼女に会釈して参謀本部をあとにした。


 帰路につきながら、アルトは反省する。


アルト

(やってしまった......試験官呆れてたよ......はぁ......)


 感情的に回答をするのはよろしくないのだ。冷静さと的確な回答が好まれる。この試験では性格は二の次なのだ。そんなアルトの心とは反対に、空が夕焼けで赤く染まり、綺麗な街を写しだす。

 二次試験も終わりアルトはこれから先の人生を考え出していた。試験官に言われた「任用されなかったらどうする?」という質問は若者にとっては真剣に人生を考えさせる言葉でもある。言い換えれば、「夢など見ていないで現実を見ろ!」という事と同じだ。


アルト

(いっそう、魔法が得意なら本当に魔道士でも目指そうか......? いや、現実的に、まずは魔術士からか......)


 アルトは来年の頭で20歳を迎える。これから王国では成人として扱われるのだ。自立をしなければならない。このくらいの若者は大体が家業を継ぐ。お上に仕えたいと考える者は兵士等も多いだろう。就職しないでブラブラしている者は少ない。

 こうして、アルトは最後の試験にして悩みを抱えて、うつむきながら帰路につくのだった。


 最後まで読んでいただきありがとうございます。

 試験編は終わります。次は結果発表までの話です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ