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王国には参謀が必要です!  作者: G-20
第1章 参謀試験
20/31

二次試験に向けて その1

 ここ、アリオスト王国は国土の大半が山岳地であり、海に面さない内陸国である。気候は年間を通して過ごしやすく、湿度は比較的低いのが特徴である。大陸で有数のルプスア山脈に王都は囲まれているため、他国からの侵略はほとんどないが、魔道や宗教に力を入れているため列強諸国にも劣らない軍事力を誇っている。

 また、文化芸術活動にも力を入れており、数々の芸術家を多く生み出している。建築物も芸術的特徴が見られ、巨大な教会や統一された赤い屋根の住宅街が有名であった。

 そして、その中の一軒に、小さい小綺麗な前庭が目立つ家屋がある。その住人はまだ19歳と若く、学生として割安で借りて住んでいた。その青年は参謀になるために育成学校に通っており、昨日その一次試験が行われたらしい。


 カーテンの隙間から日が差し込む。


アルト

「ううっ......」


 身体が痛い。寝覚めも悪い。身体よ動け!! そう心で叫びながら、重たい瞼を開けた。アルトは寝落ちをしていたらしい。服はボロボロで汚れたままで、ベットに倒れ込んでいたのだ。


アルト

(ああ、眠ってしまったのか......)


 汚れと汗でひどい状態だ。身体を洗い流したい。


 アルトは起き上がると、伸びをした。ボキッボキッと骨が軋み、身体が痛いようである。背をさすりながら、部屋から出て階段を下る。服を脱ぎつつ椅子へかけて、水場へ向かった。

 水場には井戸から汲んでおいた水が浴槽に十分あった。それを木製の桶で汲んで頭からかけ流す。


アルト

(冷たっ......)


 湯を沸かしても良かったのだが、疲れでそんな気も起こらなかったのだろう。しかし、今になって目が覚めていき、湯を沸かせば良かったと後悔し始めたのである。

 一通り身体を洗い流したあとに、綺麗に身支度を整え始めた。先日行われた試験の復習をするために、育成学校へ向かうのであった。アルトは筆記試験の復習は勿論、実技試験もモンスターの生態や魔法、体術の基礎を鍛え直す必要があると判断していた。


 アルトが育成学校に着いたときには、既に多くの学生が教官に質問やら指導を受けていた。大半の学生は試験の出来が悪かったのか、不安な顔をしていた。教官はそんな学生に対して、今年の試験の難易度が高いことや、結果が出ていないのだから諦めないで二次試験の対策をすべきだ! などの助言をしていた。アルトも教官に対して、解答を出来なかった問題や、見たことのないモンスターの質問をして、問題を解き直し、その日の午前が終わった。

 アルトは昼ごはんを食べに学校を出て街を歩く。フッとあることを思い出した。擬似ダンジョンで兵士から貰った『スパーク・ソードの書』なる魔道書だ。現在ダンジョンから出てしまったため、手持ちにない。


アルト

(王都の近くの書店に、あの魔道書が置いていればいいんだけれど...)


 普段は大規模な書店で魔道書を購入するアルトであるが、大規模な店は需要のない魔道書や一部の愛好家向けの魔道書は流通していないため、そのようなものは露店や雑貨店に集まるのだ。

 アルトが向かった店は規模が小さく、商店街の隅っこで静かに経営している魔道書店だった。その外装は、雑貨屋っぽい3階建て建物で老舗のように見えるが、窓の縁にあるアイビーは手入れが施されており、洒落た雰囲気であった。

 中はやはり、独特な魔道書や書物がいくつも置いてあり、需要はなさそうだ。この中から、見つけるのは大変そうであったが、しっかりと魔道書の中でも分類がされており、近接魔法の一角に『スパーク・ソードの書』が置いてあった。


アルト

(高っ!!......)


 とても、学生が買えるような物ではなかったのだ。はぁ...と溜息をつくと、アルトに女性店員が話しかけてきた。その女性は笑顔で少し照れていた。アルトはどこかで見覚えのある顔だと思いつつも思い出せないでいた。


女性店員

「あの......失礼ですが、昨日、王都試験会場へ向かうバスに乗っていませんでしたか?」


 アルトは目を見開き思い出す。


アルト

「あっー!! あの時の魔道書の人!!」


アルト

「あの時、バスの中で、魔道書を真剣に読んでいた子だね?! 悪いなって思いつつ横目で君の魔道書を少し読ませてもらっていたんだ」


魔道書の女性

「やっぱり! 束縛魔法好きの子ね!!」


アルト

「ああ、そうだよ! 君の魔道書のお陰で試験の役に立ったよ、ありがとう!!」


魔道書の女性

「いえいえ! お礼はいいわ、役に立って良かったわ」


 魔道書の女性はアルトを見てニヤニヤし始める。


魔道書の女性

(兵士の男の子に色々と試したのね ウフフフ)


 そんな妄想にふけている女性をよそに、アルトは『スパーク・ソードの書』について尋ねる。


アルト

「そうそう、これを買いに来たんだけど......少し高くて、他にお勧めの魔道書あるかな?」


 魔道書の女性は『スパーク・ソードの書』を見て呟く。


魔道書の女性

「これ結構値するわよね......それに熟練の魔術士でも扱うのが難しいから、まずはこれでどうかしら?」


 彼女が手渡してきたのは、『マジック・ソード』と書いてある魔道書だった。


アルト

「少し中身を確認していいかい?」


 アルトが魔道書の女性に尋ねると、彼女は少しドキドキした表情で頷いた。中身は、魔道書として基本的な発動の条件や魔法の維持、近接攻撃の理想的な動きなどが、丁寧に記されていた。


アルト

「魔法だけでなく、近接攻撃の基本動作も書いてある。これは凄い!! この魔道書を買うよ!」


 それを見て、女性は嬉しそうに口を開いた。


魔道書の女性

「これ、実は私が書いた魔道書なんだ!」


 アルトは驚いた。魔道書を作成するには高度な知識と技術、特別な国家資格が必要であり、それこそ魔道士などでないと作成はできないからだ。


アルト

「えっ、君って魔道士なの?!」


 女性は少し苦笑して、ゆっくりと口を開く。


魔道書の女性

「いいえ、私は魔道書士よ......魔道士になるのが夢なの」


 少し後ろめたさそうに話す彼女に対して、アルトは元気付ける。


アルト

「それでも、十分すぎるほど凄いよ、魔道書を書き上げるなんて常人には出来ないよ!」


アルト

「それに魔道書士試験って凄い難関な試験じゃないか! もっと誇るべきだよ」


 アルトは尊敬のまなざしを向けて女性に告げた。女性は魔道書士なるものを知っている人がいて、賞賛してくれる人がいることに驚いた。


魔道書士の女性

「ありがとう、魔道書士のことを知っている人がいるなんて、少し驚いたわ」


 それから続ける


魔道書士の女性

「私の名前はノエル、よろしくね!」


 アルトに微笑みながら自己紹介をした。ノエルのことが気にはなっていなかったが、よく見ると可愛いらしい子だった。


アルト

「俺はアルト、よろしく!」


 アルトも自己紹介をして会計を済ました。新しい友人が出来たことに、少し嬉しそうにして店を後にした。ノエルもまた笑顔で店の外までアルトを見送った。


 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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