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王国には参謀が必要です!  作者: G-20
第1章 参謀試験
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【第17話】 参謀と擬似ダンジョン5層

擬似ダンジョン5層


ここ5層は擬似ダンジョンの中でも、特殊な仕組みでできていた。

いくつもの部屋が用意されており、部屋には試練が用意されていた。


部屋は密室の狭い石畳部屋から、

2層の様な広々とした空間まで用意されているようだ。


アルトも4層からの扉を開けて入った瞬間に、

遺跡の中の一室から始まった。部屋は薄暗く松明が部屋の隅、四ヵ所に配置されていた。


どの部屋も共通して言えることは、真ん中に彫刻だったり石板が設置されており、

試練を受けなければ次の部屋へ進めないということだ。


試練の内容は石板に記載されているようだ。

そして、試練は部屋ごとに様々なものが用意されており、ランダムで出題される。


例えば、錬金術の部屋であれば、

一定の量の鉄を、錆び付かせなければならないのだ。


一見簡単そうに見えるのだが、要求される量が多い。

そして、一定の試練を全てこなさなければ、

ダンジョンから出れないわけである。


アルトは時間に追われていた。


あと、少ししか試験時間がない。


2層と3層で時間がかかり過ぎたのだ。

このままダンジョンを攻略できずに、

採点すらされないなんて目も当てられなくなってしまう。


唯一の救いは、モンスターがほとんどでないダンジョンであることだ。


「ハァハァハァ......」


額から汗がしたたり落ちる。

焦りで手が震えて上手くものが掴めない。


こんなところで、終わりたくない。


現在、裁縫中。


針に糸が通せない!!


「ああっ!! またやり直しだ! 落ち着け俺!」


落ち着きを取り戻すアルト。

内心では試験が終わったら、二度と裁縫なんかやるか! と思っている。


「よしっ!! 50枚完成!! 次だ!」


部屋を直ぐに出て、ドアを開く。


薬学、調剤の部屋だ。


部屋中一面に多様な草や花が生えている。

石板には、薬草を集めて、傷薬を10個調合しろとの記載がある。


アルトはそれを読むと、すぐに薬草を探す。

雑草やら毒草やらが多い。


モンスターが出ないだけマシだ。

急いでいるのにちょっかいをかけられたら、

ストレスで草木ごと焼き払ってしまう自信がある。


アルトは手際よく薬草を集めると、部屋の中央へと向かった。


中央には調剤器具が置いてある。

それを使って、草を磨り潰して傷薬を作るかたちだ。


ゴリゴリっと鉄製乳鉢を使って原形を留めないように磨り潰していく。

これは時間がかかる。


磨り潰していくと薬草が次第に細かくなり小さくなる。

調合に必要な量が足りない。見積もりを誤った。


アルトは急いで、薬草集めを再開する。

一本一本しっかり確認して摘んでいく。


間違って毒草等を混ぜたら、一からやり直しになってしまう。


しばらくして、必要な薬草を集めて調合を再開する。


落ち着いて調合した甲斐があってか、大成功を収めた。


ただ、品質は中等程度であれば、要件を満たすため、

無駄と言ってしまえば無駄である。


「10個できた! さぁ早く開けてくれ!」


ギィィ……

とゆっくり扉が開く。


これは、嫌がらせか?


アルトは飛び出すうように部屋から出る。


うっわ……鑑定の部屋だ。


部屋の中には大きい机がいくつかあり、その上にいくつものガラクタが置いてある。


なんだあれ? 石像……? なんか、座っているし……。


部屋の中央へ行き石板を読む。

机に置いてある商品を本物と偽物に分けろとの記載がある。


手前の机へ向かうよ。結構な量のガラクタが無造作に置かれている。


一部、非常に高価な物も置いてあり、目が眩みそうになるが、

ここが擬似ダンジョンであることを忘れてはいない。


ダンジョンにこういうような場所があるのだろうか?


仮にあるとすれば、少し冒険者の職業に憧れる。


「よしっ! すぐに取り掛かるか!!」


鑑定は割かし得意な方だ。

それは日々、変な視線を向けて人々を査定しているからだ。


プロになれば一目で人なり物なりを解析する。

ただ、アマチュアのアルトは解析に時間がかかる。


他人から見れば、ジロジロ見てくるヤバい奴として認識されている。

そんな引かれる行為をアルトは、ほぼ毎日している。


アマチュアではあるが見誤ることは、ほぼない。

と言っていいほどの実力はある。


人を査定とか称す参謀は、変態集団の集まりなのかもしれない。

しかし、まぁ、この世界ではそれなりに凄い特技でもある。


ある程度、ガラクタを分類して仕分けすると、

次にルーペで細かく見て分けていく。


時間に追われているが、ここは焦ってはいけない。

冷静さがかけてしまうと、本物と偽物を区別する重要な手がかりなどを見落としたりしてしまうからである。


慎重に……。 焦るな、俺……。


「はぁ、終わった……」


意外と時間はかからなかった。

石像が動き出して、ガラクタの回収を行う。


えっ……あれ、偽物なんだ……。


石像は何個かガラクタを残して、正しいものだけ持ち去った。


うっわ、もしかしてやり直しか……。


ギィィィ……


扉が開く音がした。


少し間違えていたが、許容範囲だったらしい。


はぁ、助かった。


部屋を進むと魔法応用と書かれた部屋に着いた。

石板には、指定された位置から的に魔法を当てて破壊しろ。

と書かれている。


ふむふむ……、一定量の魔力がなければ破壊できないのか。


要求される魔法のレベルが比較的高いようだ。

それもそのはず、参謀になるためには、

ただ魔法が使えるというだけでなく、

魔術士レベルの人材が求められるのだ。


擬似ダンジョンの雑魚モンスターは全て、

初歩的な魔法、体術で倒せるが、


ここで要求されるレベルは、

中ボスをギリギリ倒せる威力のウル系の魔法が必須となる。



アルトは的から少し離れたところに注目した。

床に線が引いてあるのを確認する。


指定された位置はこれだな。


定位置に着くと的へ構えて、火系の魔法を唱えた。


「ウル・ファイアー!!」


ウル系の魔法はどれもブレスのように、放射状に直進し

的などを貫通するため使い勝手がいい。


的に直撃すると燃え広がり爆発した。

的が粉々になると、横から次の的が用意される。


緑色の的だ。風系統かな?


「ウル・ウィンド!!」


予想通りに的は細切れになり、破壊された。


次は的が三つ同時に出る。


「三連……、ウル・サンダー!!」


雷を同時に三つ放つ。

ウル系の魔法で三発同時攻撃をできる者はあまりいない。


習得に時間がかかるし、

実践ではそこまで使う機会がないからである。


アルトは珍しくできるタイプで、

実践でも三連を上手く活用していこうとしている。


最後の的は威力を確認したいのか、

今までとは比べられないほど巨大で頑丈な的が出てきた。


アルトは深く息を吸うと体系化されていないオリジナルの魔法を放った。


「ツンドゥラ・ランス!!」


的に目がけて氷の棘が突き刺さる。


貫通はしているようだが、まだ、破壊できていない。


まだだ……!!


突き刺さった巨大な氷にひびが入っていく。


「砕け散れ、ツンドゥラ・ランス!!」


アルトが叫ぶと氷の破片が炸裂した。

巨大な氷塊は散弾しその破片が的を吹き飛ばした。


奥の方でギィィィと扉が開くのを確認する。


「ハァハァ……、やった……!」


集中したためか、物凄く疲れている。


体力的に、これ以上、魔法を出すことはできない。


ゆっくりと少しふらつきながら、扉へ向かった。

その後は、騎乗の部屋で馬や小型竜(ドラゴ)に乗って指定されたルートを周回したり、

神学や信仰系の部屋では、ひたすら、擬似兵士に対して強化や支援を行った。


時間のない中で、量をこなす。

最後の層にして最難関。


要求されることの多さと時間がないという焦り、

体力も限界という極限状態で身体と頭を使う。


多くの受験者は精神、体力ともに限界を超えており、

終盤から無意識下で身体を動かし、感覚で試練をこなしていたのだ。


そして、最後の部屋を達成して、ダンジョンから出たとき、

アルトは涙を流していた。


間違いなく部屋へ入り、無意識下で何かをしていた。


記憶はないが、酷く疲れており、

ダンジョンから出るとそのまま倒れたのだ。


他の受験者もひどく疲れている様子だが、アルト程ではない。


「試験終了だ。諸君、よく頑張った」


メガネの試験官は柔らかくそう試験終了の合図を告げた。

まだ、何人かダンジョン内にいるだろう。

踏破した人数は全体の2割くらいといったところだ。


見慣れた受験者はほとんどいない。


時間内にダンジョンから出られなかったのか、脱落して退場したのかわからない。

ただ、踏破しなければ、厳しいようだが採点されない。


そして、一次の午前と午後の試験を合わせた総合得点によって、

一次試験の合否が決まるのだ。


メガネの試験官は受験者に向かって今後の試験の流れを説明した。


「ここにいる者だけが、一次試験の採点対象だ。

一次試験の合格発表と二次試験の案内は後日、郵送する以上だ」


受験者はみんな疲れきっていた。返事をしたくても、地面に伏せて息を切らしていた。


「……以上で一次試験を終了する。本当によく頑張った」


試験官らがその場から離れると、受験者は一人、一人とそれぞれ帰路につく。

動けないで、その場で寝込んでしまう者もいる。


アルトも服は汗と土で汚れてしまっている。

ふらつきながらも歩くが、倒れ込んでしまう。


夕日に照らされながら懸命に這いつくばって進む。


馬車の近くで心配そうに声をかける人もいるが、何とか立ち上がり歩みを進める。


寮に着くころには、日が沈んでおり、辺りは暗くなっていた。


部屋へ入り、そのままベッドへ倒れこむ。


点数は足りているだろうか……

それと、何か身体が重い、頭も痛い。


っ……!!


アルトは突然、全身の穴から

血が噴き出したような感覚に襲われた。


うっああ……!!


あまりの激痛にそのまま気絶してしまった。


これを契機にアルトは大きく成長することになるのであった。


 最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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