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王国には参謀が必要です!  作者: G-20
第1章 参謀試験
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【第15話】 参謀と大男

 森へ向けて、一行は歩き続ける。

 アルトはとある魔道書が気になってしょうがない。


 実はアルトも露店で魔道書を購入していた。

 正確には兵士が買ってくれたのだが。


 本来、受験者は擬似ダンジョンで物を買うことはできない。

 というか、買っても意味がないのだ。


 外へ出たら消えてなくなるからだ。

 そのため、アルトは物を買わずに兵士たちの買い物を見ていたが、


 珍しい魔道書が目に入ったのだ。

 それは『サンダーソード』なるものだった。


 余り流通していない非体系型の魔法だろう。

 流石は魔剣が売られている変な露店なだけあって、魔道書も癖のあるものなどが多かった。


 因みに、この魔道書は近接系の魔法だ。

 魔法使いのメリットでもある遠距離攻撃を生かせないため、不人気なのだろう。


 接近戦を好む魔法使いは少ない。

 売れ残るのもよくわかる。


 余り流通しないオリジナルの魔道書はちょっと読んでみたい……

 そんな思いで、じっと物欲しそうに見ていたら兵士が買ってくれたのだ。


 最初は試験が終われば意味がないと断っていたが、

 助言してくれたお礼だと渡してくれた。


 ダンジョンを出る前に読み終えたいと思う、アルトだが、

 時間があまりない。


 仕方ないから後日、王国の図書館にでも行って探してみようかと考えていた。

 

 森が見えてきた。草木が生い茂っており、空気が美味しい。


 ここは、本当に擬似ダンジョンなのだろうか?


 森の中へ進むにつれて、木は大きいものになっていく。

 木はかなりの高さまで伸びきっていて、光を遮っているためか少しだけ暗い。


 ガサガサガサ……


 茂みから足音が聞こえる。

 4人の緊張は高まり武器を構えた。


「ここは舗装されていない道です、足元に気を付けてください!」


 アルトは茂みに警戒しつつ、足元の木の根をさした。


「それくらいわかっている! 素人ではない。いちいち説明しなくても戦闘は任せな!」


 好戦的に茂みをかき分けて進む。

 そんな軽口をたたくベンにトムが注意を促した。


「油断するなベン! お前はもう少し気を張れ!!

 それと 参謀も他人の心配より、まずは自分の心配をしろ!」


 彼らも応援に来た兵士だ。

 そこら辺の素人兵士ではない。


 近接戦は彼らに任せた方が無難だと判断したアルトは援護に回る。


 アルトは静かに目をつむると、祈りを始めた。


「悪しきものから我らを守りたまえ! バリア!!」


 アルトはパーティーに神の加護を付与した。


 口数が少ないリチャードが、助かる! と叫ぶ。

 全員が一斉に草陰のモンスターへ目がけて攻撃できる状態である。

 トムがアルトに魔法を放つよう合図をする。


 魔法で怯んだ隙に全員で仕留めるといったかたちだ。


 アルトはサンダーを放つ瞬間に茂みから飛び出した。


 しまった!! 先手を取られてしまう……


 すぐに相手の足を拘束せねば。


「凍てつけ!! ブリザー……あ?」


 あれ? ちっこいモンスター?


「なんだよ! ただのウサギかよ、ビビらせやがって!!」


 ベンがちぇっといった感じに石ころを蹴とばす。


 ウサギはこちらの様子など気にも留めずにそそくさと走り去ってしまった。


 リチャードは安堵したのか、肩を落としていた。


「ははは……リチャードもいつも冷静だけどウサギにビビるもんなんだな」


 少し張り付いていた空気が和らいだ。

 しかし、パーティーに笑みがこぼれた瞬間、大木がなぎ倒れる。


「危ない!!」


 回避するトムに大男が、襲い掛かかる。


「あああ……ううう……ああ!!」

「放せこの化け物!!」

「なんだ?! あの化け物!! あれが報告にあがったモンスターか?」


 人型モンスターの中でもオークに近い体型だがそれよりも一回りデカい。

 腹と腕にはもじゃもじゃと毛が生えていて不潔だ。

 髪もベトベトで伸びきっており、異臭が漂う。

 服は伸びきっており、今にも張り裂けそうだ。


 こいつが村の人たちを一日で全員平らげると言うモンスターなのか?


 トムは確信をもって叫ぶ


「奴だ!! 絶対にここで仕留めるぞ!!」


 トムとリチャードが囲い込む。


「見た目に惑わされるな! 動きが速いから気を付けろ!」


 リチャードの足でも油断はできないようだ。


「おおおお……ぼぐぅぅわ……」


 モンスターは口から唾液をあふれ出しながら、

 何かを伝えようとしている。


「ぼぐは……に……ん……」

「何か話しているぞ!? なんだこいつ?!」


 何かを言いかけたとき、大男は目を見開き大声をだす。


「うぉぉぉおおおおおおおおお!!!!」


 大男は近くにいたリチャードを殴る。


「っく……!!」


 とっさに盾で攻撃を防ぐが、力強く吹き飛ばされてしまった。


「兄ちゃんは、リチャードを頼む。ここは俺とトムで何とかする」


 アルトは頷くとリチャードが吹き飛ばされた場所へ走る。


「ベン! 連携で奴を仕留めるぞ!」

「おうよ!!」


 トムは素早く大男に接近すると連続で三回斬り込んだ。

 素早い動きに大男は翻弄される。


 トムを捕まえようと必死に追いかけるが、大男の腹にめがけてベンが剣を突き刺す。


「アアアアアアアアアア!!!!」


 見事な連携だった。仕留めきれてはいないが、時間は稼げる。

 アルトは戦闘を見届けると、直ぐにリチャードの元へ駆けつけた。


 よかった。大きな怪我はなさそうだ。


「リチャードさん大丈夫ですか!? しっかり!!」


 ポーチから傷薬を取り出して、そのままリチャードへぶっかける。


「すまない、助かった。油断をした。少し手足が痺れただけだ、じきに動けるようになる」

「無理をしないでください。今は二人が時間を稼いでいます」


 リチャードは大男と戦うベンとトムを見て、助太刀しようと焦る。

 立ち上がろうとするも、ふらついている。それに、アルトが手を貸す。


「やっぱり、少し休まれた方がいい。

 ここに少しですが、目覚まし草も置いておきます。

 めまいの状態に効くはずです。俺は戻って彼らのサポートをします」


 アルトはそう言い残して戦闘へ戻った。

 トムたちはかなり苦戦を強いられていた。


「おい参謀の坊主! リチャードは無事か?!」

「はい! 大きな怪我はしていません。

 多少混乱していますが、意識はあります!! すぐ回復します!!」

「おい、無駄話するな! 死ぬぞ!」


 大男が倒れた木を持ち上げて、振り回し始めている。


「ウル・バインド!!」


 アルトが束縛の魔法を放つ。

 光る縄が飛び出し、大男の手足を木に縛り上げた。


 磔の状態になった大男に兵士は剣を突き刺した。


「アアアアアアア!!!!!!」


 森に叫びが響き渡る。


「やったか……?」

 

 大男は力をいれて光の縄を引きちぎった。


「なんて、馬鹿力だ……」


 刺されても、なお驚異的な生命力を持っている。

 しかし大男は再び立ち止まって、頭を押さえた。


「ああああ……ぼくは……にん……げ……ん……」


 モンスターが言葉を発している。

 全員が驚きでこおりつく。


 モンスターが話すなど異常だ。

 喋れるとしたら、それは知能があり、危険度が高いということだ。


 スケルトン・ナイトとかラミアレベルだ。

 先の戦いで確かにラミアは討伐してはいるが、Ⅱ種では荷が重い。


 トムは撤退を考え始めていた。


「このモンスターはやはり、何かおかしい!」

「一度、撤退を考えましょう!!」


 大男はハッと我に返ると近くにいたアルトを握りしめる。


「クッ……うっ!!」


 苦しい、このままじゃ……

 これ以上、力を入れられたら脱落するかもしれない。


 アルトは必死に抵抗をするも、更に力が強まる。


「うっ……ウル……ファイアー!」


 アルトの手から火炎が放射された。

 大男はまばたきもしないまま、顔面に炎が直撃した。


 炎は勢いを止めぬまま、直進し木々を焼き払う。

 その様は、ドラゴンのブレスに近似しており、威力も申し分ない。


 大男の上半身まで燃え広がる。

 兵士たちはその威力に呆気にとられていた。


 大男は再び叫び声をあげて、顔に手をやる。

 手を離した大男からアルトは、そのまま崩れ落ちた。


「すまない、遅くなった。大丈夫か?!」


 そこへ、回復したリチャードが戻ってきた。


「ゴホッゴホッ……ええ、まだなんとか生きています」


 兵士二人はアルトに少し下がるように伝える。

 アルトは後退して、兵士たちの支援を行った。


「悪きものを、倒すため我らに力を! パワー!!」


 兵士たちは全身に力がみなぎり始めた。

 兵士三人はお互いに目配せをして、

 剣を振り上げて大男へ向かう。


「うおおおお!!」

「おりゃああああ!!」

「うりゃああああ!!」


 兵士たちが繰り出した剣技は大男を斬り刻む。

 剣が深く刺さるところで、斬り下げる。


 兵士の中で最も使用されている剣技(スラッシュ)である。


 鍛錬を積んだ技は見事な切れ味を誇っていた。


 大男はふらつき始める。兵士たちは攻撃を休めずに斬り込み続けた。


「手を休めるな!」

「わかっている! ここで仕留める!!」


 アルトも続けて、巻き込まないように大男の顔に狙いをすまして魔法を放つ。


「ウル・サンダー!!」


 炸裂音が森に鳴り響く。

 大男の顔面に直撃して、顔の一部が抉れる。

 そのまま、大男は膝をついて放心状態となる。


「いまだ!!」


 兵士たちは剣で大男の首を斬り落とした。


 首が宙を舞う中で、アルトはその直前に大男の瞳から涙が流れていたのを見る。


 泣いている……? モンスターに感情があるのか……?


 大男の首は転がり落ちると、胴体も重い音を立てて倒れた。

 大男が霧状に消えていくのを確認して紙片を拾い上げた。


 これで、終わったのか……?


 これ以上、強敵が現れないことを祈りながら、兵士たちの治療にあたる。


「本当に助かった。 ありがとな!」

「いえいえ、こちらこそありがとうございました」


 アルトはトムの手を取り起こした。

 三人とも擦り傷などは見られたが、

 それ以外に目立った外傷はなく、ひとまず安心した。


「君も参謀なんてやめて兵士にならないか?」

「それはいい! 坊主、兵士になれよ!」


 リチャードとベンがアルトを囲い込む。


「兵士はいいぞ! 参謀なんてお偉方にこき使われるだけだぞ!!」

「ベンの言った通り、参謀は事後処理や報告もあるし結構、しんどいぞ」


 参謀というだけで人々から羨望の眼差しを向けられる。

 それは、給与や厚生面の支援が手厚いからである。

 女性が結婚したいと思う職業ランキングで毎年1位となっているのもわかる。


 ただ、内情を知っていればおすすめはしない。

 まず、高給であるが休暇を与えずにこき使われることもある。


 過労でぶっ倒れれば、そのまま病棟に運ばれてそこで業務を行う。

 それでも業務を継続することができないと判断されれば、

 強制的に危険な任務を与えられて、そこで殉職させられる。


 反対に、最近では参謀の地位を利用して汚職や癒着が行われており、

 貴族の様な立ち振る舞いをしている者もいる。


 王国の内部を知っている者ほどおすすめはしないだろう。


「仮にそうだったとしても、僕は王国の未来を信じたいです」


 兵士三人は少し寂しそうな目でアルトを見た。


「その道は険しいけど、君なら……君なら歩み続けるがことできるだろうよ」


 トムが優しく笑いかけて、そう言ったのだ。



 森を抜けて村へ戻ってきた。

 村の前では人々が祝福して出迎えてくれたのだ。


「若いのに凄いわね! うちの子まだ相手がいないのよ~」

「はぁ、ど、どうも……」


 村のおばちゃんに絡まれた。


「うちの娘、あたしに似て綺麗なのよ~、お見合いしてみないかしら~?」

「あ、いやー、大丈夫ですー」


 アルトの腕を強く握りしめる。

 下手をするとあのモンスターより握力があるかもしれない。


「おい、参謀さんが困っているじゃないか、うちで一杯飲みなよ!!」


 助かった。ナイスアシスト!


「俺も敵にとどめを刺したんだぜ!!」


 ベンが自慢げにおばちゃんへ話す。


「あたしは参謀さんに話しかけているのよ!!」

「なんでぇい……」


 しょんぼりするベンに笑いが起きる。


 村に活気が戻り、祝賀会が催されることになった。


 感謝してくれる人がいる、泣いて喜んでくれる人がいる。

 そんな人たちがいるからこそ命を懸けて戦えるのだ。


 たとえ参謀になることが険しいことでも、

 それでも、人々の幸せを守りたいと思った。


「おーい、参謀さん! そろそろ始まりますよー!」


 村の入り口で黄昏ている所に、村人からお呼ばれした。

 主役はあなただとばかりに、盛大に手を振っている。


「あ、はーい!! いま行きまーす!!」


 少し休憩しても、まだ時間に余裕あるよな……


 アルトは村へ入ろうするが、村の隅に見慣れた扉に目をとめる。

 1層から4層へ来るまでに利用したのと同じ扉だ。


「すみません、少し用事ができました」


「どうした? まぁ、止めはしないが、すぐに戻るんだぞー!」


 トムが手を振って待っている。


「俺達が全員そろわなければ、宴会が盛り上がらない! 早くすませてくれー!」


 リチャードが口に手をやって声を出している。


「坊主! 人を待たせるものじゃないぞー! 参謀なら秒で終わらせろー!!」


 ベンは普通の声でもここまで聞こえる。


「ありがとうございます!! 皆さんのこと忘れません!!」


 アルトは少し寂しそうに兵士を後ろに、扉の方へ歩む。


 扉はただ静かに、アルトを待っているようだ。


 また、会える。今度会うときは本当に参謀になるんだ。絶対に。


 参謀になる決意をして重い扉を開けるのであった。

 最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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