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王国には参謀が必要です!  作者: G-20
第1章 参謀試験
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【第14話】 参謀と擬似露店

ここ4層にある小さい村の入り口でアルトは一人で佇んでいた。

これまでの階層とは異なり、人々が道を行き交っており、商人や冒険者などが見られる。


恐らく魔法で生成されたホムンクルスの様なものだろう。


ここは安全のようだ。


アルトは息をつくと、これまでの3層での出来事を思い返す。


スケルトンなんて人間を見つけたら絶対に襲いかかってくるものだと思っていたのに……


スケルトンが人間を襲わない。今でも信じられない。

それに、あの戦いの後にスケルトン・ロードが4層への入り口を開いてくれたのだ。


書物で記されていないことに対しても柔軟に対応をしなければ、参謀として認められないということだろうか……


 「おーい! 君が応援で呼ばれた参謀かい?」


アルトが振り返ると中年の男性が声をかけていた。

装備を見るからに王国の兵士だろう。


「いえ、参謀の試験を受けている者です」


「そうか、そうか! 君があの事件を解決した参謀か! とりあえず仲間を紹介しよう」


兵士は笑みを浮かべると肩をポンポンと叩き、歩き始めた。


「あの、すみません受験者ですが、試験官の方ですか?」


「まあまあ、いいから、ついてきてくれ」


アルトの話を無視して腕を掴んで引っ張るように歩く。


例年、参謀の試験では必ずと言っていい程、指揮能力や戦略立案能力も見られる。

アルトは試験官の紙片を回収しそれが点数になるということに違和感を覚えていた。


見られるのはそこだけではない気がする……


 村の一角にある酒場に到着すると、二人の兵士が腕を組んで待っていた。

 アルトを案内していた兵士が足早に歩いて二人の元へ向かう。


「すまない、遅くなった。だが、これで安心だ! あの事件を解決した参謀が来てくれたぞ!!」


 アルトは参謀ではないことを改めて説明するが、兵士たちには声が届かず勝手に盛り上がっていた。


「おお、本当だ! その目つき、噂は聞いているぞ!!」


「若ぇのに、よく頑張ってるらしいじゃねぇか!! 大したものだな!」


話も進まないので、リーダー格の兵士がアルトに軽く自己紹介をした。


「俺はトム。このパーティーのリーダーで、そこにいる細身のやつがリチャード」


トムが背の高い細身の兵士へ指をさすとぺこりと一礼をして挨拶をする。


「大柄で声がでかいやつがベン。うるさくてガサツな奴だけど根はいいやつだから。まぁ、仲良くいこう参謀さん」


アルトも自己紹介をすると、兵士たちも各々が出身やら趣味などを含めた挨拶をした。


話を聞くに彼らは、応援でここへ呼ばれたようだ。

それから大体の現状を聞いた。


近隣の村で未知のモンスターが出現し、村人全員を生きたまま捕食したようだった。

そのモンスターは人を食べることに異常に執着しているようで、次にこの村が襲われる可能性が高いとのことだった。


直ぐに冒険者や討伐隊が編成されたが、その多くが犠牲となり生き延びた者は命からがら撤退して、ベテランの兵士数名と参謀の応援を要請したのだ。


 彼らの情報によると現在、モンスターは村から離れた森にいるようで、動きが鈍く、対策をたてる準備くらいはできそうだ。露店で物資を集めることになった。


「おい、みんな見てくれ! この武器安いのにすげぇ切れ味だぞ!」

 

 荒々しい声でベンが叫ぶ。


 テイラーはその体格に合わない細身の剣を振り回していた。

剣の刀身が紅く染まっており、珍しいものであった。


兵士が試し切りに使ったであろう、

訓練用ダミーが鮮やかに両断されている。


アルトは禍々しく紅く染まる刀剣を見ると、慌てて腕を掴む。


「ちょっと待ってください! それは、魔剣じゃないですか!?」


 剣を使わないアルトでも、ある程度には名工が打ったとされる武具くらいは知っている。

その中でも、魔剣とは非常に強力な武器であり、使用者に対して絶大な力を与えるとされるものが存在する。


しかし、その代償に悲惨な末路をたどるとされている。


 テイラーは聞く耳を持たずに、店主に清算を求めていた。


「それがどうしたってんだ? オヤジ、俺はこれを買うぞ!」


 魔剣という響きを気に入ったのか、兵士は逆に喜んでいた。


 店主が顎をさすって、刀身を細めて見つめる。


「これは……」


 ベンは店主の前で貨幣袋を置いて、せかすように机をたたく。


「うっし、早くしろ代金はいくらだ? 金はあるぞ!」


「ちょっ、最後まで話を聞いてください!!」


アルトは兵士の腕を強く引っ張り呼び止めた。


 「ああ、なんでぇい?」


 ベンはくどそうにアルトへ向いた。

 アルトが周囲を確認してから、小声で耳を貸すように話し始めた。


「なぜその魔剣が紅いかわかりますか? ……生成の過程で生きたまま母子の血肉が必要とされることや女児の脳漿、眼球が使われるからです。

 この魔剣はどういった過程で作られたかわかりませんが、魔剣を使用した多くは無残にも、その素材となった人たちと似たような形で見つかるようです」


 兵士たちの表情は凍りついた。

 

 リーダ格のトムはアルトにたずねる。

「しかしなぜ、君はあれが魔剣だとわかったんだ?」


 アルトは魔剣の刀身に指をさす。


「血の様な刀身、禍々しいデザイン。独特な柄の形状と薄汚く意味不明な文字で何かを綴っているのがわかりますか?」


 兵士たちは目を細めたり、こすったりしてよく見る。


「文献にのっていたのですが、恐らくあの武器を造ったのはドグリーという人物だと思います。もうすでにこの世にはいない人ですが、非常に危険な魔剣を造ることで有名です。

どういった過程で作られたかはよく知りませんが、少なくとも彼の魔剣を使用したら、斬ることに喜びを感じてしまい、大切な人達にまで手を染めて、最後は自らを斬ると言われています…….」


 オタク特有の早口で話していたことにアルトは我にかえる。


 うっわ、やってしまった……ウザがられたかも……


 しかし、兵士たちを見ると意外にも、真剣に話を聞いてくれていた。


 リチャードはフムフムと顎を撫でて、分析をしているし、トムもニコニコとしている。


「なるほど……、魔剣の中にも多くの種類があるんだな。俺が過去に見たものはこれとは少し形状が異なっていたがあれに手を出さないで良かった」


 ベンはアルトに礼を言うと、ポケットからごそっと紙片を取り出して渡した。

 アルトから背を向けると、頭を掻きながら、勉強になったとボソッと呟いて歩き出した。


 けっこう時間が経った。そろそろ、迎撃準備をしなければならない。


 準備を進めていると、リーダー格のトムがアルトにリラックスするように肩を叩いた。


「やはり、君が来てくれて正解だ。剣一つで部隊が壊滅するなんて溜まったもんではないし、避けれるリスクは避けるべきだ。職種は異なるがお互いに仲良くやろう!」


 改めて、歓迎されたような気がした。少し心の緊張が解けて、ほっとする。


「ありがとうございます! こちらこそ期待に応えられるよう努力しますので、よろしくお願いします!!」


 それから、アルトは露店をまわる兵士に助言をしながらまわった。

 品物の相場や良品、必要なものの厳選。アルトは幅広い知識を生かすことができたのだった。

 得に査定をするかのような目は鑑定士のようだとも褒められたのだ。

 嘘でも嬉しく思う。


 そして、ある程度の準備が整い、森へ向かうことにした。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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