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王国には参謀が必要です!  作者: G-20
第1章 参謀試験
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【第13話】 参謀と支配者の争い

 狭く薄暗い部屋にサーヴァントをそっと寝かす。


 こんな場所に隠し部屋が存在したんだな……


 ここなら、ラット共に見つからずに休ませることができる。

 それに、ラットの体型ではここまで来ることは出来ないだろう。


 ここまでの通路は非常に狭く、人ひとり通るのがやっとだった。

 彼を背負って来れたのも、骨だけだったため挟まらずに済んだのだ。


 彼もいるし、とりあえずは、一安心といったところかな。


 ここへ来る途中、休める部屋を探索したのだが、中々見つからず、途方に暮れていたところ手を貸してもらったのだ。


 正直、あのままラットに見つかっていたら、脱落していただろう。


 アルトはサーヴァントの無事を確認するとスケルトン・バトラーへ声をかけた。


「助かったよ、ありがとう。俺は試験があるからもういくよ」


 バトラーはアルトへお辞儀をすると、アルトを廊下へ見送った。


 少し時間をとられたが、走れば、取り返せる時間だ。


 アルトは足を止めることなく、走り続けた。


 ここへ来て、ジャイアント・ラットと遭遇する頻度が増えてきている気がする。


 ボスが近いのだろうか? それとも別の何かだろうか?


 武装したラットが多いため、全力で出会い頭に倒していた。

 本当はボスまで余力を残しておきたかったが、時間が惜しかった。


 あらかたラットを片付けると、地下通路へ続く道を見つけた。

 そこへ進むと、通路からはカビ臭い異臭とジメジメとした湿気が空気に漂っていた。

 フロアが石畳となっており、先程の隠し部屋と異なり、拘置所に近い。

 さらに進もうと奥へ行くと、錆びと湿気でドロついている扉を見つけた。

 アルトが触れるだけで錆が手にこびりつく。


 重い扉を押し開けると、中は更に暗く視界が悪くなる。


 ここは、拷問部屋なのか? 


 えげつない拷問器具が多く用意されており、手入れをされずに放置されたのか所々に風化して使い物にならないものが見られる。


 奥には牢がいくつか見られ、中にはスケルトンだったのか、スケルトンになれなかった人間なのかわからないが、転がっている。


 何か足音が聞こえる……


 アルトは音を立てないように、そちらへ近づくと明かりが灯っている所を見つけた。

 

 入ると牢の前でジャイアント・ラットがいびきをかいて寝ている。

 おまけに大事そうに手には牢屋の鍵を持ち合わせていた。

 牢の中には監禁されたスケルトンが何体かおり、そのうちの一体がアルトの気がついたのか静かに助けを求めている。


 今、助けるから少し待っていてくれ……


 アルトはラットへ忍び寄り、魔法で頭を吹き飛ばした。

 アルトはピクピクと動く手足をよそに、鍵を奪い取る。

 

 暗くて鍵穴が見えない……これか?

 

 これで……こうして……開いた!!


 檻から解放されたスケルトンらはアルトに感謝を示す。

 中には心の底から嬉しかったのか、膝をついてお礼をする者もいた。


 「やめてくれよ……なんか、照れるじゃん……」


 それから、スケルトンたちは武器になるものを持って集まった。


 「カカカカカ……」


 「カッコカコカコ……」


 言葉は通じないが、意思を疎通することは出来るようだ。


 「君たちも一緒に戦ってくれるのか?」


 スケルトンは頷く。


 モンスターが仲間になるのは何か変な感じだけど……

 でも、これだけ味方がいるのは心強い。


「よし、行こうか!」


 スケルトンはアルトに続いて、廊下へ出る。


 それからは、想像以上に順調に進むことができたようだ。

 一人では苦戦する相手が現れても、彼らのおかげで簡単に倒すことができたのだ。

 アルトが中衛の安全圏から集中して魔法をぶっ放すことができたからとも言えるが、それを踏まえても純粋に彼らの戦闘力は高かった。

 アルトが攻撃されそうになると、身を挺してアルトを守るのだ。

 生きている人間であれば、こうはいかないだろう。

 というか、ここまでしたら死ぬだろう。

 そのおかげもあって、アルトの手持ちには紙片やアイテムがたくさん集まっていた。 

 

 一人で戦っていたときが、馬鹿みたいに思える……

 というか、このスケルトン達、俺よりも強くないか?


 一体のスケルトンがアルトの肩を叩く。

 アルトは振り向くとスケルトンらは、変なポーズをしている彫刻に指を差してる。


 なんだ? あれ……


 近づいて見ると、怪しい窪みがある。


 この窪みは……どこかで見たことがあるが……


 アルトはハッしてポーチから針人形を取り出す。


 これだ、この人形の王冠を外して……よしっ!

 こいつを、この窪みに嵌めれば……。


 カチッ……ゴゴゴゴゴゴ……


 地響きとともに隠し扉が開く。

 中には地下への階段が続いていた。

 この屋敷の秘密が隠されているのだろうか。


 アルトはスケルトン達とともに地下へと進むと、倉庫のような部屋へたどり着いた。


 何か大切なものがあるのか……?


 倉庫の扉は閉まっており、鍵穴は見たこともない特殊な形状をしていた。


「ん? この形状……」


 アルトはサーヴァントから託された金の鍵を見ると、形状が同じであることがわかった。

 そのまま、鍵穴に差し込んで、そっとまわす。


 カチッ! キィィイイイ……


 解錠されると、ゆっくりと扉が開いた。


 中に何があるのだろうか?

 この屋敷の謎が明かされるのだろうか?


 期待と不安を抱えて扉を開けると風が吹いて髪がなびく。

 中に入ると部屋一面が金に装飾されており、部屋中の光で輝きを放っていた。


 その中でも、部屋の中央にある像を囲うように武器や甲冑が飾られていた。

 その一つ一つはどれも一級品であり、値がつけられない程のものだ。

 アルトはそれを見て立ち尽くしていた。


 こんなの、いままで見てことがない。

 本当に王国近衛騎士が装備するようなものじゃないか……。


 呆然と立っているアルトを横に、スケルトンたちは、ゆっくりと手で触れて懐かしむ。

 アルトは追想にふけるスケルトンの姿を見て、更に驚愕する。


「まさか、君たちはスケルトン・ナイトなのか!?」


 驚きのあまり声が震えている。

 1層でスケルトン・ナイトに殺されかけたのだ。

 いくらあの時と個体が違うとはいえ、こんなにナイトが集まっていたら恐怖でしかない。

 そもそも、彼らがナイトだったなんて思いもしなかった。

 普通に、彼らを率いて何も知らずに指示を出していたなんて思うと頭がおかしいとしか言いようがない。


 無知とは恐ろしいものだな……


 スケルトンらは剣を携えるとアルトを残して、そのまま部屋を出ていった。

 ポカンと部屋に取り残されたアルトであったが、スケルトン・ナイトらについていくことにした。


 ナイトの腕前は予想通り達人の域に達していた。

 ネズミどもをバサバサと斬り倒していく。

 ラットはナイトに手も足も出せないことを知ったのか、遭遇するとすぐに逃走を図ろうとする個体も現れはじめた。


 ナイトは彼らを追跡し一体一体と仕留めていった。


 大方、片付いたのだろう……


 アルトが息を切らしながら追従していると、彼らがふと扉の前で歩みを止めたのだ。

 一人で入ろうとしたら、サーヴァントに止められた扉だ。

 今は、スケルトン・バトラーが扉の傍で控えていた。


 バトラーがナイトに耳打ちで何かを伝えている。

 話が終わったのか、ナイトは動き出すと大広間へと続く扉を蹴り開けた。

 ナイトらは一斉に中へ突入する。


 いよいよボスか……?


 アルトは生唾を飲み込み、ナイトらに続いた。


 中は謁見の間として使われていたのか、非常に広々としていた。

 天井も高く、ダイヤで飾られたシャンデリアで部屋は照らされていた。


 しかし、それに似合わず、奥の玉座でふんぞり返っている巨大なラットがいた。

 今まで遭遇したラットよりも肥え太っており、身体は二回りほどでかい。

 体毛も濃い黒色の剛毛で小汚く見える。

 その風貌に似合わず、どこで見つけのか知らないが、赤く威厳のあるマントで身を包んでいる。

 頭にも金で施された冠をつけて、ラットの最高位の存在であることを無駄に主張している。


 ジャイアント・ラット・ロードと言ったところだろうか?


 ロードのそばには、武装した側近がこちらを睨み付けている。

 通常の個体よりも手強そうだ。


「アンタがネズミの親玉だな?」


 ジャイアント・ラット・ロードは、ふんぞり返りながら顎で傍のラットに指示を出す。


 側近のラットらは、サーヴァントの残骸だろう塵を踏みつけてこちらへ迫る。

 その行為に激昂したのか、スケルトン・ナイトは剣を振るいあげてラットに斬りかかる。

 ジャイアント・ラットもその屈強な剛腕で負けじとナイトを殴り飛ばして戦いが繰り広げられる。


 両者とも引けを取らない戦いを繰り広げる。


 戦況はスケルトン・ナイトの方が僅かに優勢といったところだろう。

 ラットらも、相当な手練れた個体ではあったが、アルトの魔法によって隙を突かれ、ナイトの斬撃を受けて陣形が崩れていった。


 一体、一体と確実に仕留めていくナイトの腕は流石の一言に尽きる。

 ナイトが最後の一匹を剣で刺し倒すと、ジャイアント・ラット・ロードは重い腰をあげた。


 ゆっくりと立ち上がると、手元にある宝杖を振る。

 白く眩い光を放つと、その瞬間にスケルトン・ナイトは地べたに這いつくばるようにして叩きつけられた。


 立ち上がろうにも見えない重力のようなもので動けないようだ。

 ジャイアント・ラット・ロードは身動きのできないナイトを蹴り上げる。


 フロアから鈍い音が響き渡る。


 あの宝杖をなんとすれば、身動きがとれるはずだ……

 少しの間、俺が時間を稼げば……


 一対一ではアルトに勝ち目はない。

 しかし、ナイトらと協力すればどうにかなるのではないだろうか。


 アルトが考えている間にもジャイアント・ラット・ロードはナイトの頭を掴み上げ、壁に叩きつける。


 一か八か。


 アルトは狙いを澄まして宝杖に向けて魔法を放った。


「ウル・サンダー!!」


 轟音とともに炸裂した稲妻はネズミの手を貫くと、手から離れた宝杖は音を立てて転がり落ちる。


「キッッ!!」


 ラット・ロードはこちらを睨みつけてくる。


 ネズミの親玉というだけあって、威圧で気絶してしまいそうだ。

 だけど、ラミアとかと比べれば、この程度……!!


 意地を見せるアルトに、ネズミの王は埃を払うかのように風の魔法を放った。


 なんだ、あの魔法は……!?


 手から放たれた旋風は徐々に大きくなる。やがて辺りの空気を巻き込むと、ドス黒い竜巻が渦を巻いていた。


 アルトは、すぐさま岩系魔法を唱えて防壁を作り出す。


 これで、防ぎきれるものだろうか。


 岩壁に直撃すると風の刃は容赦なく岩を抉り削っていく。


 頼む……!! もってくれ……


 振動も大きくなり、岩が軋み出す音が聞こえはじめる。

 必死に岩壁を崩れないよう手で押して支えてはいるが、隙間から入ってくる風によって切り傷を負う。


 思った以上に粘るアルトに、ネズミの王はさらに魔法を唱え始める。


 二発目を受ければ、壁は間違いなく崩れる。

 あいつが魔法を放つ瞬間を攻撃しよう。


 アルトは背中で壁を支えて片手に魔力を集中させた。


 ネズミの王は詠唱が完了したのか、とどめと言わんばかりに手からどす黒い魔力があふれ出ていた。

 ネズミはそのまま岩壁に手を構えると深く息をしてから魔法を解き放つ。


 今だ!!


 アルトは隙を突き、ネズミの王の眉間に目がけて、魔法を放った。

 ネズミの王は突然の不意打ちに驚き、仰け反った。

 アルトの放った稲妻は眉間まで後わずかのところで、当たらず。

 しかし、避け方が悪かった為か、雷が耳を焼き貫く。


 フロアからジャイアント・ラット・ロードの金切り声が響く。

 耳を抉られた痛みから、身体をばたつかせて暴れまわる。

 そして、首を大きく振ったためにネズミの王冠が宙を舞った。


 王冠がコロコロと転がり落ちて、部屋の隅にいたスケルトン・バトラーの足元で止まった。


 ジャイアント・ラット・ロードは我に返り、転がり落ちた王冠を拾い上げようと急いで向かう。


 スケルトン・ボーイは王冠についた埃を払い、丁寧に拾い上げた。

 そこへ、怪我をして隠し部屋で寝ていたはずのスケルトン・サーヴァントが現れた。


 いつの間に……大丈夫なのか?


 バトラーは王冠を持つとサーヴァントへ近づく。

 バトラーがゆっくりと跪き、サーヴァントの頭に優しく王冠をのせた。


 うっ……! なんだ……?!


 サーヴァントが輝きだし、周囲に光りが走る。


 眩しくて、前が見えない……


 辛うじて、サーヴァントの影が見えるのだが、しかし徐々にその体躯は大きくなり、姿も禍々しいものへと変化していく。

 丸みを帯びていた頭蓋骨や形の整った指も、どこか刺々しいものへと変化していた。


 部屋から光が消える頃には威厳のある姿へと変わっていた。

 赤いマントとロードとも見れる品位のある姿で立ち、宝杖を握っていた。


 いくつもの文献にその姿などが詳細に記載されているが、不思議なことに目撃情報はほとんどなく。幻の存在として語られている。


 生きとし生けるもの全てを恨み、全てを死者へと変える不死の王国を統べる者。


 紛れもなく、スケルトン・ロードであった。


 あの、変なサーヴァントがロードだったなんて……


 ラット・ロードはスケルトン・ロードへ王冠を奪い返そうと牙を剝きだして襲い掛かる。


 スケルトン・ロードは王杖をゆっくりと横に薙ぎ払うと、辺りは薄暗くなり大地が震えだした。


 アルトは本能的にヤバいと感じるのだが、恐怖で全身が凍りついて動けない。

 しかし、それはラットも同じのようであった。


 ゆっくりと魔法が放たれた。宝杖から放たれた黒い球体は空中で止まると、雫の様な形をとり静かに滴り落ちた。

 やがて床から魔法陣が出現すると大きく禍々しい漆黒の紋章が浮かび上がった。


 ラット・ロードは上手く身動きが取れなくなりつつも、守りの姿勢をとろうとしている。


 次の瞬間、紋章から黒く禍々しい巨大な両腕が飛び出した。

 ラット・ロードは必死に黒い腕に抵抗をするが、黒い腕はラットをいとも簡単に掴み挙げてしまった。


 ラットは手足をバタつかせる。

 そして、ゆっくりとラット・ロードの手足を引きちぎっていく。

 目は背けているが、骨が砕かれて肉を引きちぎる音が生々しい。


 ドサッと無造作に床に落とされたラット・ロードは辛うじて息があった。

 四肢を引きちぎられでも生き延びようと、顎で地面を這いずって逃走を図る。


 そこへ追い打ちをかけるように、巨大な腕はラット・ロードを手で包み込み、肉を潰す音を出して握りつぶしてしまった。


 アルトは最後にその光景を目の当たりにするのだった。


 スケルトン・ロードの恐ろしさを肌で感じた瞬間であった。

 フロアが静まり返ると、ラット・ロードであっただろう“何か”が霧状になっていくところをただ黙って見ているだけしかなかった。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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