表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王国には参謀が必要です!  作者: G-20
第1章 参謀試験
14/31

【第12話】 参謀と鼠屋敷

 アルトが廊下を進んでいると、これまでに見ない大きく金色の装飾品で飾られた扉が見えた。

 観音開きになるタイプのドアだ。

 横の方にはスケルトン・サーヴァントが立っており、その場で待機をしている様子だった。

 アルトが扉に近づくと、サーヴァントは一礼をする。


 どーも、お疲れ様です……


 アルトもそれに倣いお辞儀をする。

 アルトがお辞儀をし返すと、サーヴァントは再び石像の様に動きを止めた。


 先程、仲間がジャイアント・ラットにやられたことは知っているのだろうか?

 ジャイアント・ラットとの関係はどういうものなのだろうか?


 アルトは話しかけようとするも、こちらに全く関心がないのだろうか、見向きもされなくなってしまった。


 この扉の先は何があるのだろうか……?

 

 扉に触れようと手を伸ばすと、サーヴァントはアルトの手を掴んだ。

 部屋に入るのをやめるよう促しているのだろうか、首を横に振っている。


 大切な物でも中にあるのだろうか? それとも、他の巨大ネズミがいるのか?

 屋敷に無断で入っているのだから、今更いうことを聞く必要もないのだけれど……


 まぁ、一応、忠告は聞いておいて損はないか。


 アルトは扉から離れて、サーヴァントに会釈をしてその場をあとにした。

 サーヴァントはアルトの後姿を見るとどこか安心したように見えた。


 扉を左手に進んで、どれくらい時間が経っただろうか。けっこう長く走り続けている。

 あれから、ジャイアント・ラットに何体か遭遇したが、どれも甲冑に身を包んでいた。


 やっぱり、あのネズミのせいで警戒されたか……


 最初に討伐したジャイアント・ラットは、舐めていたのか隙をたくさん見せていたが、今は油断を見せず、がっしりと武装をしていたのだ。


 くっそ! また現れた……キリがない。


 すれ違い様にアルトは剣を抜いて攻撃を防ぐ。


 キーンと金属音が鳴り響く。


「……っ!?」


 防ぎきれなかったか……


 肩に少しダメージを負ってしまった。


 こちらが剣で攻撃をしても甲冑のせいかダメージを受け付けないようだ。


 近接ではこちらが不利だ。ならば……


「サンダー!」


 雷光がジャイアント・ラットを目掛けて迸る。そのまま、魔法が直撃するとバヂッと甲冑に光りが走った。

 手ごたえはあった。先の戦いでもサンダーの攻撃が通ることは確認している。

 アルトは膝をついて倒れるジャイアント・ラットを確認すると安堵した。


 やはり、あの甲冑、魔法に耐性がないようだ。


 自身をつけ始めるアルトだったが、突如背中に殺気を感じた。


 危ない!!


 アルトの目のすれすれに鉤爪が通る。間一髪のところで避けていた。

 魔法を受けていたジャイアント・ラットだったが、ふらつきながらも立ち上がっていた。

 すぐに距離をとるアルトだったが、魔法に警戒されているためか、中々振りほどけない。


 戦うたびに学習していくモンスターか……くっそ、戦いずらい。


 剣で攻撃を仕掛けるが甲冑によって弾かれてしまう。


 やっぱり、安物の剣じゃどうしようもないよな……


 こうなれば、補助魔法で動きを封じて確実に急所を攻撃しなければ倒せないだろう。

 中途半端に逃げられて、仲間にこちらの情報を与えられれば、後々厄介になる。


 足止めできるのも、ほんの数十秒。

 鎧の隙間から攻撃しても、急所には届かない。狙うならば目か……?


 ジャイアント・ラットは怒りに身を任せて、アルトに覆い被さるように飛び込む。


「キィィィイイイイ!!」


 口を大きく開けて噛みつこうとする。


 コイツ……!!


 ラミアほ倒したときのように、倒せればいいのだが、剣を失うと後がなくなる。

 アルトは彼らを倒すほどの体術は持ち合わせていない。

 それに、魔法も武器も使えないとなるとわかれば、嬲り殺しにされてしまう。

 だが、もう考えている暇はない。

 一か八か、アルトが剣を突き出すとジャイアント・ラットは下卑た笑みをこぼすと、その攻撃を待っていたかのように、前歯で剣を挟む。


 動きを読まれていたか……


 アルトは動きを封じられてしまった。剣だけは手放すまいと握りしめるが、ジャイアント・ラットは両爪を振り上げて攻撃を仕掛ける。


 これまでか……


 剣を奪われてしまった。

 ジャイアント・ラットは剣をまじまじと見ると、忌々しそうに剣を投げ捨てた。

 そして、嘲笑うかのように、アルトへ一歩、また一歩と迫る。


 こんな奴らに負けたくない。


 アルトはそう強く思いつつも、改めて自分が無力な存在であると実感した。


 ラミアのときもそうだった……もっと、鍛練しておけば、こんなことには……


 悔しくて、自分に腹が立つ。


 そうだ、いつもそうだ。

 詰めが甘い。すぐに、自信過剰になる。


 自分の嫌なところがどんどん浮き彫りになる。

 溜息をついて、壁に持たれかかると冷たい金属が腰に触れた。


 ……ん?


 ポーチからはみ出ているナイフが肌に触れていた。


 そういえば、サーヴァントから回収したものだ。


 これは利用できるかもしれない。


 絶望しかけたアルトに再び勝機が訪れた。


 ジャイアント・ラットは完全に油断をしており、こちらに恐怖を与えて楽しむつもりか鋭爪をチラチラと見せつけている。


 アルトは怯える振りをして腰からナイフを取り出した。

 ナイフを手に隠し、ジャイアント・ラットの眼に狙いをつけて投げつけた。


「キッッイイイイイイイイイ!!!」


 ナイフが眼球に突き刺さると、ジャイアント・ラットは悲鳴を挙げて顔を覆う。

 アルトは直ぐに態勢を立て直して、魔法を詠唱する。


「禁断の章 第4節 醜悪と屈辱にもまれ、卑しく拘束したまえ、アンガーガッグ!」


 捕縛魔法を放つとジャイアント・ラットの口は金属製の開口具によってこじ開けられる。

 これでもかというほど開いていく。

 物凄く下品な感じで、気持ち悪い。


 アルトは大きく開かれた口に向かって炎の魔法を放つ。


 「オル・ファイアー!!」


 体内で炎が爆ぜだすジャイアント・ラットは訳が分からずに爪を振り回して暴れる。


 ここまでしても、息があるようだ。相当タフな個体だ。


 既に出血と火傷で皮膚はドロドロであり、甲冑は熱を帯びて溶けだしている。

 僅かにうめき声が聞こえるも、視力を失っており、立ち位置も認識できていないようだ。

 これ以上、苦しませずに終わらせてやろうと、アルトは拾い上げた剣でとどめを刺した。


 本当に油断はできないな……ここのダンジョンは……


 ジャイアント・ラットは決して強い敵ではない。

 しかし、武装されると、ここまで強くなるとは思わなかった。

 アルトは、ここのダンジョンに来て非常に勉強になっていると感じていた。

 これまでの常識を覆す事態が多く見られ、その都度、自分で考えて対処していく訓練になっていたのだ。


 これからも恐らく一筋縄にはいかないダンジョンをどう乗り越えていくか、考えなくてはならない。

 この先が不安ではあるが、参謀になりたくば進むしかない。


 アルトが歩み続けていると、壁に突き当たった。

 窓もなく、この感じは行き止まりだろうか。薄暗いがまだ右手に道が続いている。

 そちらへさらに進んでいくと2階へ続く階段が見える。


 2階もあるのか……


 一段一段と登っていくと、スケルトンが現れた。


 最初の部屋にいた変なスケルトン・サーヴァントだ。

 しかし、服がボロボロとなっており、骨も砕けてふらついている。


 サーヴァントは苦しそうに歩み寄り、アルトに金で装飾された鍵を手渡した。


 あいつらにやられたのか……


 アルトは鍵を受け取るとサーヴァントはそのまま倒れ込んでしまった。


 傷の具合を見るに間違いなくジャイアント・ラットにやられたのだろう。

 しかし、あと何体いるかもわからず、また、アルト自身の体力もそんなに残っていない。

 可哀想だが、このまま進むのが正しい判断だ。

 情報が少ないうえに、あちらは、こっちの戦力を把握しているだろう。

 これ以上、戦えば、奴らに追い詰められるのは目に見えてわかる。

 しかし、今、逃げてしまうと人間として何か大切なものを失ってしまう。


 彼はなぜボロボロになっているのか?

 なぜ、鍵を渡したのか?

 それは、助けが必要だからではないか?


 アルトはため息をついた。

 やっぱり、見捨てられない。

 これまで全てのことがモンスターの演技で油断を誘っているのかもしれない。

 情に訴えかけて試験を妨害しようしている運営の考えかもしれない。

 しかし、それでも正しくありたい。


 罠ならばその時はその時だ。


 アルトは彼を担ぎ上げて、長い廊下を進むのであった。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ