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王国には参謀が必要です!  作者: G-20
第1章 参謀試験
13/31

エリートの思い出

―擬似ダンジョン試験監督本部―


 午後3時。フリードリヒは空を見上げていた。今日は天気が良く、空が澄んでいる。風も穏やかで気持ちが良い。フリードリヒは遠い過去を思い出し、充実していた日々をなつか懐しむ。

 それは、失踪した昔馴染み。いまだに彼が殉職したと信じられなかった。


―6年前―

城下街フリーマーケット


フリードリヒ

「クソッ...ここにもない!!」


 フリードリヒは、お偉方の娘が身に付けていた宝石を探していた。娘は民がどのような生活をしているか知りたい!など抜かし、フリードリヒらを連れて買い物をしていた。その時に混雑をうまく利用されて、スリにあったのだ。フリードリヒは娘から目を離さないようにしていたが、ちょこまかうごきまと動く娘についていくのが精一杯だった。娘がさらわれなかっただけでも、上出来だ。娘の不注意で盗まれたのだが、我々の責任でもあると考えるのがフリードリヒだ。それを知ってか、普段から娘は顎でフリードリヒをこき使い回していた。

 当時のフリードリヒも、エリート道を突き進もうと、何でも言うことの聞く国家の犬であった。上司の命令は絶対。忠実かつ迅速に業務を行うことから、お偉方のお気に入りだった。


フリードリヒ

「見つけた!! あの店か!!」


フリーマーケットを抜けて、スラム街の闇市のような場所まで来ていた。フリードリヒは鋭い眼で、ちょっと怪しい中古品店を捉えた。珍しそうな宝石が展示してある。


フリードリヒ

「これは、どこで手にいれた?!」


店主

「さっき、男から、購入したんだよ、いやーこんな高級品滅多に手に入らんからな!」


店主は自慢げに、はっはっはっ!!と笑う。どうやら、今日の目玉商品のようだ。その反応を見て、フリードリヒは溜息交じりに言う。


フリードリヒ

「それは、盗品だ。ある娘の大事なものだ。返してもらえないだろうか?」


店主は一瞬、固まった。しかし、次第に表情が変わる。盗品だとわかって購入したのだろう。フリードリヒに向かって怒鳴るように言う。


店主

「何バカなことを言っている!! これは、俺が金を払って、男から購入したものだ!! 返して欲しいのなら、お前が買い取れ!!」


 フリードリヒは黙り考え込む。すでに、盗人は行方をくらましている。普通ならば王国市民令193条を主張すれば、宝石をこちらに返還するよう主張できる。

 しかし、厄介なことにここはスラムの闇市。王国の勅令など守りやしない。最悪、王族貴族の特令で無理やり取り返すこともできなくもないが...しかし、あとで何をされるかわからない。お偉方の娘の身に危険が迫るのは避けるべきである。穏便に済ませようと口を開いた。


フリードリヒ

「わかった...。購入しよう。いくらだ?」


 店主は斜め上を見ながら髭をさする。ニヤつきながらこう告げる。


店主

「そうだな...。100金貨(マール)だ!」


 足元を見られたか、ぼったくる気だ。フリードリヒは反論する。


フリードリヒ

「...ッ?! ふざけるな!! 誰が払うか!! 相場をかなりこえている! 高くても、25金貨(マール)だ!」


 店主はこれ見よがしに、いやいやと首を振る。


店主

「いやいや、絶対に100金貨(マール)だ。どうしても、負けてほしいってんなら土下座して靴を舐めてみろ!! そしたら90金貨(マール)に負けてやるよ!! ははははは!」


 フリードリヒは拳に力が入る。ぶん殴ってやろうか...。

 そんな時、1人の青年が現れた。そして、しれっと口を開く。


青年

「おっさん、これパチもんだぞ!」


 突然の言いがかりに店主は驚く。フリードリヒはポカンとしている。そして、案の定、店主はキレる。


店主

「はあ?! 何だてめぇ?! 何言いがかりつけてんだ?! ああ?!」


店主の放った怒声を無視して、青年は続けて大きな声で叫ぶ。


青年

「ガーネットに良く似た見た目だが、こりゃインカローズとガラス材を混ぜたものだよ!」


 宝石を素早く手に取り、空に掲げる。おっさんが、反論する前に続けて言い放つ。


青年

「おっさん、誰から買った? さっき怪しそうな男が走り去ってたけど、まさかそいつから?あちゃー! ついてないね...あいつはここらでよく見かける詐欺師さ! スラムの中でも最も質の悪い奴と出くわしたな!」


あちゃー! と、おでこを手で押さえている。いちいち、オーバーなリアクションだ。青年は笑いながら言う。


青年

「そこのメガネも、騙されないで良かったな! 俺はそんなのに5金貨(マール)も払わねーよ!! せいぜい、1金貨(マール)よ!! あはははははは!!!」


周囲に人が集まり始めた。店主に注目が集まる。店主は慌てて、フリードリヒに交渉する。


店主

「2金貨(マール)だ! これ以上は負けん!!」


フリードリヒはわかったと頷いて、財布から50銀貨(デーツ)を4枚取り出した。店主の手へ渡った瞬間に、青年が横から50銀貨(デーツ)を2枚、抜き取った。


店主

「何しやがんでい!!」


店主は青年を睨みつける。


青年

「いいじゃないか! パチもんが高値で売れたんだから! 本来なら1金貨(マール)よ? 50銀貨(デーツ)儲かったじゃない!!」


 それからさも当然のように言い放つ。


青年

「そして、この50銀貨(デーツ)は俺への報酬さ! こんな目立つように展示してりゃ、目をつぶっても、質の悪いパチだってわかる!!」


 青年はお前を救ってやったんだと言わんばかりに、舞台俳優のように立ち振る舞った。


店主

「わかった...! もういい! 商売の邪魔だ! 失せな!!」


青年

「はいはい、毎度ありー!!」


 青年はスタスタ去って行く。フリードリヒもその場から離れると、周りにいた野次馬達も散っていく。それから数十分後、フリードリヒは闇市の外れにいた。先程の青年も外れに来ていた。

 フリードリヒはその青年をよく知っていた。自分と同じ同期である。そして、任用試験ではフリードリヒと双璧をして、名を連ねる人物だったからだ。


青年

「どうだ?! すげーだろ?」


フリードリヒは呆れ気味に言う。


フリードリヒ

「相変わらずだな、ファイナー...。それと、これは本物のガーネットだ。」


 青年は、へへん! 鼻に手をあて自慢げに言う。


ファイナー

「あいつが、ぼったくろうとしたのが悪い!」


 そう言うと、2人は笑いながら、娘のところへ戻るのだった。その後に、彼らは数々の事件を解決する。突如ダンジョンに現れたスケルトン・ナイトの討伐。森で女性をさらい食らう蛇女。豪華な屋敷の大型ネズミの駆除。一日で村人を平らげる大男。

 数え切れないほどの事件を解決し、のちに王国に名が残るほどの働きをした。

 しかし、それはまた別のお話。


 最後まで読んでいただきありがとうございます。今回の話はフリードリヒの回想です。ダンジョン3層の続きは、明日か明後日頃に投稿する予定です。

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