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〜 混沌への前奏曲 〜 第六話

 ◆GATE6 遺跡の村。犠牲の跡


 人々に捨てられた村の一角に縦に掘られた鉱脈の入り大きな口をぽっかりと口を開いている。

 縦穴は然程深く掘られていなかった五,六メール程でやぐらが組まれた仕掛け堀で結構な広さがある。

 

 採掘された“精霊の石”を地上に吊り上げるた為の大きな滑車と太い木で組み付けられていたと思われるやぐらの残骸に細い縄を幾重にも編み上げて作られた太いロープはその姿を今だ保っていた。


 歯車を幾重にも重ねられ巨大なキャプスタンと繋がれロープを巻き取り取る仕組みになっていて壁面には鉱脈内へと向う入り口が掘られていて、入り口は酸欠を防ぐ為か横に広く掘られ、小さいが縦穴もうがたれていて、坑道の入口の高さは四〜五メール程もある。


 岩盤は固い様だが、やぐら掘りを用いられ上から掛かる圧力を逃がす様に掘られていた。

 崩れた形跡はない。

 

 暫らく入るとゆっくりとスローブが付けられ下へと向って延びている。

 暫く坑道を進んで行くと、鋼鉄なのか何なのか分からない金属の大きな扉が、闇の坑道の中、淡いランプの光に照らし出された。

「何だ? この扉は」


 レイグにミル、それにコバカムは不思議そうに扉を見つめていた。

 土の汚れはあるものの、扉に指を這わし汚れを拭き取ればランプの淡い光を反射する程の美しさを保っている。この扉が何年前に作られたかは分からない。

 しかし、錆び一つ浮いてない造りの扉と見た事もない金属に三人は驚きを隠せない様子だった。

 

「遺跡の扉だ。今の世界では生成不可能な金属で出来ている」

 シオンは微笑みを浮かべた。


「開くのか?」


「さぁ、認識されれば開くが、そうでなければ開かない。リーシャどうだ?」


 リーシャは壁の脇に据え付けられた突起物の所に早々と向かって既に何かを初めていた。


「うーん? ……わかんないよぉー、てへぇ」


「もしかしたらと思ってリーシャを連れて来たけど……これじゃ、お前を連れて来た意味がねぇー、はぁー」

 シオンは溜息を吐いた後、ある事に気づく。

「生体識別認識。これまでの俺達が見つけた遺跡では、通常の愛称番号認識だった……それも既に機能しなくなっていたからな。リーシャの技術で回線に割り込み無理やり開いていたよな?」


「そーだったね」


「ロック、今までのと違わないか?」


「違うから、わかんないんだよぉー」

 リーシャが頬を膨らませて見せた。

「いーつも! 「面倒くさい」て言って、私にやらせてるから気付かないんだぉー!」


「生体識別認識なんて、重要な場所にしか設置してないからな」

 シオンはランプの光を方々に向け、それらしい物を探した。

 しかし、見当たらない。

「という事は、そのロックに備わっているって事だ」

 シオンは、リーシャのいるロックのある方に向かった。

「あった! ビンゴだぜぇ! アイスキャンと手の平の血管で認識するタイプの様だ」

 シオンが認識を始めると何処からともなく女性の声が暗闇の坑道内に響いた。

「認識。シリアルナンバー四零零五。第一期試験体。SION」


 声の後、扉は両側に滑る様に開いた。

 扉の向こうはには、天井にオレンジ色の明かりと通路の所々に赤い点滅灯が光を放っている。


「気持ち悪い声ね」

 ミルが人の声ではあるものの、何処か温かみの無い声に感想を述べた。

 

「すまない……この先には、俺とリーシャで行く。皆は戻ってくれないか」

 シオンは背を向けたままそう言った。


「なぜだね! きみ一人で何が出来るんだい? ここはこのコバ――」


「ランスの事が……いや……ランスを連れ去った魔術師と奴が残して行った魔法陣や言葉が気になる。それにログの事も……」

 シオンは震える声でそう言うと口を継ぐんだ。

「頼む。ログにはアイナの母さんが住んでる……護ってほしい」


 レイグとミルは、何も言わずぎゃーぎゃー文句を垂れている。コバカムを引きずる様に坑道の出口に向かい歩きだした。


 その途中、レイグとミルが一言づつシオンに言葉を掛けた。

「任せておけ」

「シオン? 気をつけて」


 その言葉を背に受けシオンは、遺跡の中へと向かい通路を進みだした。




 坑道を出口へと向かう途中、二人に引きずられながらコバカムが言う。

「いいのかい? 得体の知れない遺跡の中に彼一人で行かせて」


「……まぁ、あいつなら大丈夫だろう。俺達が行ったところで何も手助け出来ないさ……たぶんな」


「そうね。何も……とまでは言わないけど、シオンも本当は、あの魔術師にさらわれた子を追いかけたいんじゃないかしら? それとログの事も自分で護りたい。あの先私達が行っても扉に阻まれシオンに頼るだけ……なら、私達に出来る最善は、昨日の魔術師が残すと言っていた“置き土産”と“魔法陣”の後始末でしょ?」


「そうだな。コバカム! マスターがお前を、ここに寄こしたのには重大な役割があるからだろう。お前……光系統魔法扱えるんだな?」


「……術式解除は得意だけどね。光系統魔法と呼ばれる魔法は特殊、ミルさんの召喚魔法に匹敵する程ね。もしマスターがそれらを見越して僕をこの場にい送ったのなら納得がいく。魔法陣に組み込まれていたとしたら、四系統の解除法では陣を潰す事は出来ないからね」

 コバカムは、一度言葉を切りミルを、ちらりと見やると言葉を続けた。

「ミルさんが次空間を乱した事で魔術師の描いた魔法陣から呼び出そうとしていた置き土産から、召喚される筈だったモノを阻止できた。その時使われた媒介は恐らく人間の命。次の召喚まで必要な媒介を集めなければならず、魔術師は言葉を残して時間を稼いだと僕は見ている」


「何にせよ。それまでに仕掛けられた魔法陣を解除し無効かしないといけないと言う事だな」


「そうね。多くの人命が失われる前に」


 三人の持つ淡いランプの光の向こうに坑道の出口を示す眩い光が見えた。

 



 透明な筒の容器と見慣れない装置の数々がシオンの視界に映り込んだ。


「ここは……痛っ!」

 その光景を眼にしたとたんシオンが頭を抱え蹲る。


「だうじょうぶぅ! シオン! 毎度の事だけどね」

 リーシャが心配そうにシオンを肩口から覗き込んだ。


「大丈夫だ。何時もの事だ……遺跡に来るとな……今回は何時になく酷いけど……大丈夫……だ。痛っ」

 シオンは床に滑り込む様に床に伏した。


「シオン? シオンてばぁー、シオン」

 リーシャが何度も呼び掛けるが返事は返って来なかった。



「ちっ! 大した置き土産を残して行きやがって」

 レイグが舌打ち忌々しげに辺りを見渡した。

「こんなにも大きな魔法陣描いて、いったい何を呼び出す気だったんだ! あの魔術師」


 廃村を中心に描かれた魔法陣の大きさは、一部の術式から予測して十キールにも及ぶと思われた。

 その大きさは、ラウル湖を掠めログの村まで達する。


 魔法陣を描く時、誰かに見つかっては意味がない。よって巧妙に隠されてはいるが、魔法に長けた者なら容易くはないにせよ、見つけ出せない事もない。


 しかし、これ程の大きさの魔法陣の中にいれば、描かれた一本の線に気づく事さえ困難かも知れない。

 魔法陣を見つけるヒントを持っていたのは、コバカムだった。

 

 昨日のまだ薄暗い夜明け前に到着したレイグとミルが気づく事が出来なかったのは、そのせいだった。

 今日の明るい時間にペガサスで上空を飛んできたコバカムは、広い範囲に所々地面の色が若干違う事に気づいたが、その時はまさかこれ程、大きな魔法陣が存在するなどと露程も思わなかった。

 それがレイグでもミルでも結果は同じだっただろう、と思われた。


「無数に描かれた通常の魔法陣は囮。本命は何年も何年も費やして描かれた巨大な魔法陣だったか」


「そうね。けど……あんた良く気づいたわねぇ」


 流石のレイグとミルも舌を巻く大きさの魔法陣だ。


「僕は理論魔法が苦手でね。何度も何度も地面や羊皮紙に描いたものさ。その代えあって今では理論魔法を見分けるのは得意なのさ」

 コバカムは胸を張り茶色の髪を掻き上げた。


「さて、先ずはこの無数に描かれた魔法陣を無効かするぞ。とは言ってもあの時、ミルが殆ど乱したから使えんだろうが、生きている魔法陣があると厄介だ。あの魔術師の陣だからな」


「ええそうね。でも……あの魔術師。確か「次の仕事がどうのとか」言ってたわねぇ……」

 ミルは、何処か腑に落ちないといった顔をした。


「ああ、ランスと言うシオンの友人でアイナの弟らしい少年が目的だったみたいだが……それにシオンが首に掛けていた赤い宝石のあしらわれたリングを手中にする事か、ここでの仕上げが終わったとも考えられる。……分からない事だらけだな」


「シオンの指輪? あれって錬金物で露天商にぼられた滑稽な物のはずなんだけど……そう言えば、同じ物をアイナも持っていたわね! 宝石の色はエメラルドだったけど……」


「二人とも! だべってないで魔法陣処理して早くギルドに帰るとしようじゃないかね」


「でかいのはどうするのよ?」


「後でしっかり調査しないと……恐らく複層式のトラップ付き術式。僕達だけで処理できる代物じゃないね」


 三人が無数に仕掛けられた魔法陣の処理に当たり始め暫くの時間が過ぎた頃、ミルが異変に気づいた。


「ちょっと待って! 何か来るわ」


「置き土産ってわけか」


「のようね……残念だけど、間に合わないわ。無数に描かれた魔法陣の中にも罠が仕掛けられていたみたいね……やるわね。あの魔術師」

 プライドの高いミルが、珍しく敵を称える言葉を口にした。


 数十体にも及ぶガーゴイルの群れが三人に迫ってくる。

 魔術師が操っていたガーゴイルと違い、人の丈程の大きさだ。


「さて、始めるか」

 レイグが背中の炎の魔剣の柄に手を掛けた。


 ガーゴイル一匹当り、通常の兵士に換算して八小隊以上の戦力があると言われている。


 レイグ、ミル、コバカムとガーゴイルの達の群れとの戦いの火蓋が切られた。

 

 To Be Continued

最後までお付き合いきださいまして誠にありがとうございました。


次回もお楽しみに!

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