~プロローグ~
~プロローグ~
その日、世界の大半は海に沈んだ。。。
巨大地震が発生した。 それにより、各地で大規模な地震が誘発されてしまい、同時に引き起こされた津波は、想定していた範囲をはるかに超える規模となってしまった。
あらゆるものが破壊され、飲み込まれ、失った。
だが、そんな大災害をかろうじて乗り越え、人は生き残った。
特殊能力を有した者達が警鐘を鳴らし、それを信じた者達だけが死を免れることができたのだ。
人や動植物は、地殻変動が収まるまでの間、世界を見渡せる高所である山の頂付近や、特殊能力を有した者が先導した船の上等、厳しい環境の下で長い時間を過ごした。
そして、地殻変動が収まった後の世界は、四つの大陸と一つの島で構成された。
北の大陸『カルランジ』は、標高10,362mのその山頂に一年を通して決して溶けることのない雪を頂き、山腹や裾野には険しい台地が広がり、その地形を生かした放牧が盛んな大陸である。
主に放牧しているのが、一角を有する美しい馬の姿をした『カルールム』である。
『カルールム』には属性があり、『地』・『風』・『炎』・『水』、そして最も美しいとされる、純白の『光』と漆黒の『闇』のカルールム。
それぞれの上位種は空を駆けることが出来、それらを有し、制御する者は、一族の誉とされていた。
東の大陸『アシュラカント』は、四大陸の中では一番小さいが、永久に絶えないと言われている、伝説の泉を有し、その恩恵を得て一年中花が咲き乱れる穏やかな気候の水の大陸である。
伝説の泉には、年中『虹』が掛かっていることから、『虹の大陸』とも言われている。
南の大陸『サラシャール』は、大陸の中心に活火山を有する。
溶岩土による肥沃な土地が広がり、また大陸の周りでは、常に海底火山による隆起による島が出現し、現在も陸地が拡大し続けている。
また、活火山の地熱による温泉が湧き出で、多くの旅人がこの地を訪れ、商人たちも集まり、四大陸随一の観光地として栄えている。
西の大陸『タジュラール』は、強い風に晒されて、砂漠化が進んでいる。
だが、そこから生産される特殊な砂を利用して、その砂でしか育たない、最高級フルーツや野菜等を栽培している。
そのフルーツの中でも『シャナル』と呼ばれる希少フルーツしか食さない、風を利用して空を駆け、最大30mを超える四枚羽を有する鳥、『シャナフェル』を四大陸の中で唯一有している。
そして、四大陸の中心に位置し、王とその家族、側近や臣下の者だけが住まうことを許されている島、『フェルリタ』。
王の城を中心に四区画に分けられ、それぞれの大陸の気候や特徴を有したその島に、人々は各大陸間の交易の為に夜明けと共に訪れ、日没と共に帰っていった。
地殻変動が落ち着くまでの間、人々は厳しい環境を生き抜くため、自らの特殊能力を生かすことに目覚めた者が現れ始めた。
視覚に優れた者、聴覚に優れた者、嗅覚に優れた者、怪力に目覚めた者、泳ぐ力が発達した者、空を飛べることが出来るようになった者等。
中でも、『炎』・『水』・『風』・『大地』・『光』・『闇』の魔法を操る者は、その数も少ないことから王に仕える者として王都に召喚され、その王都に住まうことを許され、優遇されたが、多くの者は一般人として労働力を提供し、報酬を受け取っていた。
そして、『王族』と呼ばれる一族は、特殊能力を持っていなかった。
ただ、世界を守る『精霊』の王達に認められた者は、『守護獣』と呼ばれる『聖獣』に護られていた。
精霊界から遣わされる『聖獣』は、たとえ王族でなくても『王』としての資質が備わっていれば、本人の意思に関係なく『守護』を始めるという。とりわけ強い守護獣に守られし者は、王族に仕える騎士として召還されていた。
月日が経つと共に、人々の心に邪心が蔓延し始め、己の能力に慢心し、強欲を晒し始めた人達を見限り、精霊たちが遣わす聖獣達は、その姿を見せなくなっていた。
貧富の差は格段と広がり、大陸の大半が海に沈んでから、もうすぐ1000年。
世界は混沌とし始めていた。