イケメンウイルスとイケジョウイルス
「博士!急いで来てくれなんて、またとんでもない発明でもしたのですか」
「もちろんだ!人類史を塗りかえる大発明だぞ」
「本当に博士は天才ですね。早くみたいです」
「何を言っておる。キミの目の前にあるではないか」
「空のフラスコが二つ並んでいるだけですが」
「ちゃんとコルクの栓がしてあるじゃろ。今回の発明は気体、つまりガス状物質だ」
「そっ、そうなんですか。初めてのパターンですね」
「私の発明はメカとは限らない。私はメカトロニクスはもちろんのこと、材料工学から電子工学、化学合成技術にバイオテクノロジーにも精通しておるのじゃ」
「ご自慢はそれ位にして、このフラスコの中身はなんですか」
「一方が『イケメンウイルス』、もう一方が『イケジョウイルス』だ。ウイルスと言うものはDNAではなくRNAと言う特殊な遺伝子で、うんぬんかんぬん。人のDNAに入り込んで突然変異をうんぬんかんぬん。つまり、進化をつかさどる細胞内器官とも、うんぬんかんぬん」
「博士、言っていることがさっぱり理解できません。うんぬんかんぬん。結論だけお願い、うんぬんかんぬん」
「キミの言っていることも良くわからんが、うんぬんかんぬん。まあ、簡単に言うと『イケメンウイルス』に感染した人間は、その時代の男子の平均顔と細マッチョな体になってしまうと言う優れものだ」
「平均顔ってなんですか」
「平均顔と言うのは人類の顔を合成し続けると、時代を反映したイケメンになってしまうと言うものだ」
「さすが博士。つまり、このフラスコの中の『イケメンウイルス』に感染すると、私みたいな人間でもアイドル並みの細マッチョイケメンになってしまうと言うことですね」
「その通りだ。そしてこちらが『イケジョウイルス』。これに感染すると、女性はみんなスベスベお肌のムチムチボディ、平均顔美人になるのだ」
「博士。何か、言い方がいやらしくないですか。それに今回の発明は、何かとてもいい意味庶民的、悪く言うと俗っぽい。これでは、化粧品業界も整形美容医院もエステサロンも潰れてしまうんじゃないですか」
「バカモン。『イケメン』も『イケジョ』も人類の悲願じゃ。多少の犠牲は仕方ない。てことで、相談なのだが・・・」
「急に気弱になってどうしました。博士らしくないですね」
「実は、この『イケメンウイルス』と『イケジョウイルス』は互いに作用を打ち消す性質があってだな。同時には使えんのだ。つまり、人類の男子を全てイケメンにするか、女子を全員イケジョにするかの選択を迫られておるのじゃ」
「そうなんですか。簡単です!私はイケメンになって女子にモテたいです。これが私の悲願です」
「そうだな。が、ブスにモテても仕方ないんじゃないか」
「うっ。そうですね。女子全員がイケジョの方が幸せになれそうな気がしてきました」
「だろう。『イケメン』にはなりたい。が、どうせモテるなら『イケジョ』が好ましい。どうしたものか。おい、ロボット君、キミならどうする」
『ドッチモ、イミ、ナイ!フタリトモ、モテナイ。ヘタレ、ト、オタク。ジョシ、ダイキライ!ワカッタカ』
おしまい。
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