第八十七話
僕は剣を上段に構えたままジリジリとマルコルフに近づいている。それに対してマルコルフも両腕を前に構えたまま僕の方へジリジリと少しずつ近づいてくる。
僕とマルコルフの間にまるで放電したような緊張感が走る。
そして攻撃が届きそうな位置まで近寄ると、突如、マルコルフの動きがピタッと止まった。
おっと、どうやらこいつ、僕の間合いをわかってるな。
だが僕はこのままずっと動かないという訳にはいかない。思いっきって攻撃を開始した。
「どりぁ!」
気合い一閃。僕は上段から一気呵成に斬り込んだ。しかし、切り下ろし、切り上げ、袈裟斬り、右胴と僕の連続攻撃は全てマルコルフに紙一重でかわす。
「やるな!」
僕の攻撃をかわした後、マルコルフは左右のワンツーを出してきた。
「ぐぁ!」
マルコルフの衝撃波を伴うワンツーをもろに食らうと、僕は後方に吹っ飛んだ。
「クゥー、いってーー」
僕はダメージを受けたものの、すぐに起き上がり剣を構え、また、ジリジリと少しずつ間合いを詰めていく。
「フン!」
僕はもう一度、先ほどと同じように切り下ろし、切り上げ、袈裟斬り、右胴と連続攻撃を放った。が、しかしマルコルフは先ほどと同じように紙一重で避ける。
「フン! 馬鹿の一つ覚えだな。さっきと同じ攻撃かよ、そんなの何度や…… ん?」
マルコルフは途中まで言いかけてふと自分の胴を見た。僕はそんなマルコルフを見てフッと笑った。
「なに? 血だと……」
そう、ほんのかすり傷程度だが、僕の剣がマルコルフの胴をかすめていた。
「フフ、どうした。何を驚いている」
「なぜだ…… 確かに見切ったはずだ……」
マルコルフが油断のない目で僕を睨んでいる。
「何かの間違いだ、そんなはずはない」
ブツブツと独り言を言うマルコルフだったが突如、鋭い攻撃的な目つきになるとダッシュで僕に向かってきた。だが、その前に僕がマルコルフの胴を斬ろうと剣を水平に振る。
マルコルフはギリギリでそれを察知に慌てて後方へ飛び退いた。
「どうやら気のせいではないようだ。貴様、なぜだ。急に動きが鋭くなった…… 」
「さあね…… なんのことやら」
僕はマルコルフの問いにとぼけてみせた。
「なるほど、簡単に教える手品ではないと言うことか。なら、これをお見舞いしてやる!」
「くらえ!エクスプロージョンブロー!」
マルコルフはスキルを発動すると、右手のヘルブライトグローブから衝撃波が飛び出した。僕はそれを跳びのきかわすが、その衝撃波が突然、大きな音を立て爆発した。
「ぐあ!」
僕はマルコルフのスキルをモロにくらい吹っ飛んだ。そして地面をゴロゴロと転がっていく。
「く、くそ……」
エクスプロージョンブローの威力は凄まじくまるで爆裂魔法を近距離で食らったようなダメージで僕は全身、血ダルマになる。
しかし僕はヨロヨロとなんとか立ち上がり、傷回復薬を飲んで体力を回復した。
「う、う〜ん。どうやらまだまだ、自分の物に出来ていないようだ。だが、次は上手くやってやる」
僕のその言葉を不思議に思ったマルコルフは訝しげな顔でこちらを見ていた。
「何を言っている。もう、お前には勝ち目はないぞ!」
「さあ。どうかな?」
僕は笑う。マルコルフは僕の不敵な笑みに腹を立てたようだ。ギリっと歯ぎしりをすると再び構えた。
ジリジリと少しずつ間合いを詰める。そして、あと、数ミリ前に出れば攻撃が当たるという位置まで僕らは近づき合うとピタリとお互い、動くのをやめる。
しばらく沈黙が流れた。僕とマルコルフの額に汗が滲み始める。すると僕の汗は額から頬、そして顎へと伝わると雫となって地面に落ちた。
ピチャリ、地面に落ちた汗が音を立てるとその瞬間、マルコルフがスキルを発動しようと拳をギュッと握った。
だが、それよりも僕がマルコルフに袈裟斬りを放つ。
ズバッという肉が食い込む音が聞こえると、マルコルフの左肩から右の腰までに刀傷が疾る。
「うぁぁぁ!!」
マルコルフは悲鳴をあげその場に崩れ落ちた。そして僕は畳み掛けるようにスキル『バーンブレスト』を放つ。
『バーンブレスト』が見事マルコルフの胸に当たると、マルコルフは血を大量に吹き出し後方へ吹っ飛ぶ。
マルコルフはゴロゴロと地面を転がり、苦しそうな顔でこちらを見た。
「あ、ああ…… く、くそ、な、なぜだ…… 貴様、なぜ……お前の剣を避けることができない……」
苦しそうな表情のマルコルフ。僕は一歩前に出るとその答えをマルコルフに教えた。
「なぜ、お前が僕の剣を避けれないかだって? その答えは簡単だマルコルフ。それは僕が剣を極めた達人だからだ」
「な、なんだと、そ、それは、ど、どういう意…… 味だ……」
「マルコルフ、お前はもう死ぬ。最後にその答えを教えてやろう。僕が繰り出した剣は、剣を極めた達人しか使えない『神速の無拍子』というものだ」
「し、神速の……む、無拍子だと……」
「ああ、そうだ」




