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第八話


 「姫野さん危ない!」


 僕は咄嗟に姫野さんの前に立つと、無数の白い糸が飛んできた。僕は腰に帯刀していた剣を抜き、糸の攻撃を受け止める。すると糸はピッタリと剣にくっついて放れない。どうやら粘着性があるようだ。


「くっ 『魔粘糸まねんし』か……」


 『魔粘糸まねんし』は魔法で作り出した蜘蛛の糸のようなもの。非常に粘着力があり、一度くっついてしまうとなかなか取れない。


 姫野さんに攻撃してきた和服の女性は『魔粘糸』をグイッと引っ張り僕から剣を取り上げようとする。


 僕はそうはさせまいと引っ張り返す。


 「ふふふ、なかなか力じゃない。思ってたよりも強そうね」


 和服の女性は妖しい笑みを浮かべ糸を引っ張る。


 この女、妖術師か…… 力も強い。今の僕では敵わないか…… う〜ん、仕方がない。


 僕はこのままでは剣を奪われると判断した。なのである決断をした。それは……


「そこそこ値段が高い剣だったけどしょうがない」


 そう言いながら僕はパッと剣を放した。和服の女性は僕が剣を放すとは思ってなかったようで、勢いよく後ろへ倒れる。


「今だ! 姫野さん、逃げよう」


 僕は姫野さんの手を取り思いっきり走る。


「黒羽くん、さっきの怖い女の人誰なの?」


 姫野さんは恐怖のためか少し顔が強張っている。


「わからない、でも、結構強いよ。今の僕では敵わないからさっさと逃げよう」


「うん」


 僕達は馬が止めてある場所まで走った。


「もう少しだ!」


 馬は草原の坂道を登った所にある木に括りつけてある、僕達は必死で坂道を登った。


 そして、肩で息をしながらやっと坂道を登ると驚くことに僕達が乗ってきた馬の周りに人相の悪い男が10人以上いるだろうか、全員、馬に乗っていて僕達をニヤニヤ笑いながら見ていた。


「ケケケ、お前ら逃げ追おせたと思ったか。甘い甘い、逃がすわけねーだろ」


 その中でも一番、人相の悪い男がそう言いながらこちらに近づいてきた。姫野さんがその男の顔を見てハッとした顔をする。


「あ、あのおじさん、私を暗い部屋に閉じ込めた人だわ!」


 なるほど、人身売買の元締め登場ってわけか…… 姫野さんを取り戻しにきたか…… こりゃ面倒だな。


 僕は近づいてくる男から姫野さんを守ろうと彼女の前に立ち、かばうように右手を広げた。そして少しずつ後退りをする。すると僕のすぐ横でグサッと地面に何かが突き刺さる音が聞こえた。地面を見ると僕の剣が突き刺さっていた。


「忘れ物よ。坊や」


 声のする方を向くと先ほどの和服の女性がいつの間にか後ろに立っていた。


かしら、この男の子、なかなか面白い子だわ。ちょっと一対一で勝負してみたいんですけど、よろしいでしょうか? フフ」


 和服の女性はまたも妖艶な笑みを浮かべる。


「ガハハ、どうやら久々に美味しい獲物を見つけたようだな。リカルダ。いいだろう。思う存分楽しめ」


 頭と呼ばれた男は豪快に笑うと後ろの方へと下がった。


「さあ、坊や、一対一で勝負よ。かかってらっしゃい」


 リカルダとかいう女がブラリと両腕を垂らした。僕は地面に突き刺さった剣を抜くと構える。


「姫野さん、危ないから下がってて」


 姫野さんが心配そうに見ている。


「黒羽くん、大丈夫なの? さっき、あの女の人、黒羽くんより強いって言ってたよね」


「うん、でも大丈夫。安心して見ててよ」


 僕がこれ以上心配しないよう笑顔で答えた。だが、それでも姫野さんは心配そうだ。緊張した面持ちで僕から離れる。


「さあ、始めようか」


 僕は改めて剣を構え切っ先をリカルダに向ける。


 さてさて、ちょっとしたピンチだな。まあ、だがこの中で強いはリカルダって女とかしらって男か。特に犯罪集団のボスだけあってあのかしらは相当強いな……


 仕方がない。奥の手を使うか……


 僕は一旦眼をつぶり気持ちを落ち着かせるとカッと見開いてリカルダに向かっていった。

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