第六十七話
「なんと、驚いた…… 小娘が、私にいっぱい食わせるとは」
アメデ ・シソッコの屋敷の前でジャンが独り言を言う。その隣には首がもげたレイジドッグが横たわっていた。
どうやらジャンは『戻りの宝玉』でアメデの屋敷まで飛ばされたようだ。彼は先ほどの遥との戦いを思い出していた。
(姫野遥を取り逃がしてしまったか…… いやはやなかなか頭のいい子だ。だがまあいい。最初から殺すつもりなどなく黒羽龍斗を誘き出すための人質にするつもりだったからな)
そんなことを考えながらジャンはおもむろに懐から魔法の翼を出し、それをくるくる指で回した。
(私の名前やリカルダの事も教えた。これをヒントに黒羽龍斗と姫野遥は私の元へ必ず来るはずだ。私はそれをただ待っていればいい…… だが、それにしても面白い娘だったな。姫野遥か…… まあ、私の事を何度もおじさんと呼んでいたのはいささか不愉快ではあったがね。フフ。今度会った時は確実に息の根を止めてあげよう)
ジャンは回していた魔法の羽をひょいと宙に放ると彼の体は一瞬で消えそして移動した。
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や、やばい…… 予想以上にやばい。このままじゃあ何の収穫もないまま帰る事になるぞ……
僕はインビジブルマントで透明になりイスカグラン城に侵入して情報を探っていた。しかし、城があまりにも広すぎるため、どこから探っていいのかわからず焦っていた。
かぁ!迷った! くっそー! ああ、とりあえず今日は帰るか…… だけど敵がいつ襲って来るかわからない状況で何も収穫がないってのはなぁ。
う〜ん、どうするか…… 一人でギルドの依頼を受けた姫野さんの事も心配だしなぁ。うん!やっぱ一度帰るか。そんでまた明日来よう。何度か侵入すれば城の構造もわかってくるだろう。
僕は城を出てカスドルに帰ろうと出口に向かった。
確か…… こっちだよなぁ。あやふやな記憶を頼りに出口に向かう。その途中、何度か城の警備の人間とすれ違うが誰も僕に気づいた様子はない。
よしよし順調! えっと…… 確かこの階段を降りてまっすぐ行けば出口だ。うん、だんだんと記憶が蘇ってきたぞ。僕は気を抜かず慎重に階段を降り始めた。が、その時、突然、僕の後ろから女性の声が聞こえた。
「ちょっと! あんたそこで何してんの!」
僕はその声に心臓が飛び出そうなくらい驚きおもわず声が出そうになった。しかしなんとか踏みとどまるとゆっくりと後ろを振り返る。
後ろを振り返るとピンク色のワンピースを着た美しい金髪の女性が両手を腰に当て仁王立ちで立っていた。女性はキッときつい目で僕の方を見て睨んでいる。
な、なにぃ! まさか僕のことが見えているのか! いや、そんな馬鹿な…… そんなはずはない!
僕が息を殺してジッとしていると金髪の女性はこちらに向かって階段を降りてくる。
だ、駄目だ! バレてたーーー!
僕は観念して目をつぶると金髪の女性は僕を素通りして再度、同じ事を言った。
「ちょっと! あんたそこで何してんの!」
「す、すみません、お城が広すぎて迷ってしまって……」
「あなた新人?」
「はい…… 昨日からここで働いております」
「そう、で? どこに行くつもりだったの?」
僕を通り過ぎた金髪女性は階段下にいた男(どうやら使用人のようだが……)に話しかけていた。
ホッ! あぶねー バレたかと思ったよ。いやまさかね。僕の姿が見えるはずがない。
僕は改めてゆっくり階段を降りる。
「さ! 早く行きなさい。じゃないとメイド長に叱られるわよ」
「ありがとうございます」
男はお礼を言うとそそくさとその場を離れる。金髪女性がその使用人の後ろを見送っていた。
よし!チャンスだ!
僕はユックリと金髪女性の横を通り過ぎる、すると金髪女性の顔を間近で見えた。鋭い目つきをしているがとても美しい顔だ。僕はその美しい顔を見て思わずゴクリと息を飲んだ。
うお〜 スッゲー美人
あ! いや…… イカンイカン、何を見惚れているんだ僕はさっさと城を出るぞ。僕は忍び足で進んでいく。
しかし突然、耳元で囁き声が聞こえた。
「あんたも何してんのよ。逃がさないよ」
僕がその声に驚いて振り向くと先ほどの金髪女性がニヤリと口角をあげ目の前に立っていた。驚いて逃げようとしたがその瞬間、鳩尾に痛みを感じる。僕は何が起こったかわからず腹部を確認すると金髪女性の拳が鳩尾にめり込んでいた。
どうやら彼女のパンチが僕の鳩尾に炸裂したようだ。
「う、ううう……」
僕は痛みで唸りながらその場に崩れ落ちそのまま気絶してしまった。




