第五話
宿屋についた僕らはとりあえず一休みをする。姫野さんはお風呂に入りたいとのことで、いの一番に宿屋にある大浴場に行ってしまった。
そして一時間ほどすると宿屋で借りた安いウールの衣服を着て僕の部屋に入ってくる。僕は湯上がり後のしっとりした、みずみずしい肌と火照ったほっぺをした姫野さんを見てドギマギしていた。
「と、とりあえず、このベットに座ってよ」
「うん、ありがとう」
姫野さんは可愛くヒョイとベッドに飛び乗りお尻で着地した。そして何度かぴょんぴょんと楽しそうに飛び跳ねる。
か、可愛い!! 姫野さんのその無邪気な姿を見て僕の頬は思わず緩んだ。だが、すぐに我にかえると姫野さんに話を始める。
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「え! 黒羽くん、この異世界の人だったの?」
姫野さんがびっくりした表情で僕を見ている。
「いや、正確には僕の前世だね。この世界を支配しようと企んでいた魔王ラウルを倒した勇者サリウスが僕の前世だったんだ」
「え! 勇者サリウス。なんかカッコイイ! すごい!」
またまたびっくりした顔で姫野さんは僕を見る。
ふふふ、なんか照れ臭いな。
「い、いやぁ。そ、それほどでもないよ」
「そんなすごい人が私と同じ高校の同学年だったなんて、何か素敵!」
「姫野さん、褒めすぎだよ〜。まあ、僕もこの世界に転移してから突然、前世の記憶が蘇ったんだ。なぜだかはわからないけどね」
僕の話を聞いて姫野さんは不思議そうな顔をした。
「そうなんだ。でも、なんで私と黒羽くんがこの世界に転移したのかしら?」
姫野さんの話に今度は僕が不思議そうな顔をした。
「う〜ん、わからないなぁ。レベルも1に戻ってしまっているからとりあえずレベルを上げようとして町のギルドで冒険者に登録しているんだけどね」
姫野さんが顎に指を当て何やら考え事している。僕はそれを邪魔しないようにただ黙って姫野さんを見ていた。そして何気なく目線を下に向けると姫野さんの豊満な胸の谷間が見えた。
僕はその谷間を見て思わずドキッとして目を逸らす。僕の視線に気づいたのか姫野さんはハッとし恥ずかしそうに頬を赤らめながら自分の胸を抑えた。
「ゴホン、ゴホン」
僕は誤魔化すように咳払いをした。そして、気まずい雰囲気を振り払うように僕は話を元に戻した
「な、なんでだろね。魔王が復活したって話も聞かないし、なぜ僕らがこの世界に来てしまったんだろう」
僕がそう言うと姫野さんは突如、何かを閃いたような顔で立ち上がった。
「ま、魔王! そうよ。魔王が復活したのよ。そしてその魔王を倒すために私たちはこの世界の召喚されたのよ、きっとそうだわ。やっぱり魔王がいなくちゃ話にならないわね」
姫野さんは魔王というの言葉に突然、反応したようだ。
「ど、どうしたんだい急に、魔王は復活してないよ。もし、復活していたら大騒ぎになっているはずだよ」
僕は急にテンションが高くなった姫野さんを落ち着かせようとしたが彼女は聞く耳を持たなかった。
「きっと魔王は影で暗躍しているのよ。黒羽くんに倒されて学んだのね。ごく一部の側近にだけ復活した事を知らせて、力をつけるまで正体を現さないで、ゆっくりとこの世界を支配しようとしてるのよ。うん、そうに違いないわ!」
「そ、そうかなぁ……」
「黒羽くん、私の勘は鋭いのよ。そうと決まれば早速行動だわね」
「え? 早速って何するの?」
僕が尋ねると姫野さんはニヤリと口角をあげ、僕を見た。
「もちろん、私も冒険者になるのよ!」
「ええ!姫野さんが冒険者!」
「そうよ、私、憧れてたの異世界で冒険者になって冒険するのが! 楽しみだわ。さ!明日は早いわ。黒羽くん、もう休みましょう!」
そう言うと姫野さんはベッドに潜り込んで寝てしまった。