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第四十九話


「それじゃあ、二人とも『神の加護(ゴッドプロテクション)』をかけるぞ」

 

 ベネディクト神父が僕らの前に立つと両手を前に出した。しかし、『神の加護』が何かわからない姫野さんが質問する。


「すみません、神父さん。その『神の加護(ゴッドプロテクション)』ってなんですか? 魔法ですよね?」


「ああ、その通りだお嬢さん。これはどんな病原菌からも自身の体を守る魔法だ。かけておけば病気になることはない」


「へー。すごい!そうなんですね。ではよろしくお願いします」


 姫野さんの言葉にフッと軽く笑うとベネディクト神父が僕と姫野さんに魔法をかけた。


「ちなみにこれは病気を治す魔法ではないぞ。あくまでも病原体を弾くバリアだと思ってくれ。もし、お前たちがこの魔法をかける前から病気に犯されていたらいくら『神の加護(ゴッドプロテクション)』でも治せないからな」


 う〜ん、この村に入ったばかりなので恐らく病気にはなっていないだろうが、ベネディクト神父の言葉に僕は少し心配になった。


「おいおい、脅かさないでくれよ」


「ハハ、すまんすまん。まあ、この病気にかかってるのは主に年寄りばかりだからな。若いお前らなら恐らく大丈夫だろう」


 この年寄りばかりの村で若者って確か…… 一人だけだったよなぁ。


「そういえば、ここには若者っていうと村長の娘だけだと思ったけど、彼女は健康なのかい?」


「ん? 龍斗はここに来るのが今日が初めてじゃねーのか? ああ、大丈夫のようだ。元々は彼女が教会にこの病気を治して欲しいと依頼したんだ。今から彼女に報告に行く。お前たちも一緒に来てくれ」


 僕たちは村長の娘の元へと向かった。


「ここだ」


 ベネディクト神父が指をさすと村長の家といっても他の家とはさほど変わらないぼろ家が見えた。僕らが村長の家に入ると、娘さんが応対してくれた。


「ベネディクト神父様、どうですか調査の方は?」


「クレアさん。申し訳ない。どうにもわからん、正直、お手上げだ、だから協力者を連れてきた。この二人だ」


 ベネディクト神父が僕らを村長の娘、クレア・シューリスに紹介した。


 村長の娘のクレアさんは年齢は僕らと同じぐらいだろうか? クリッとした目とブラウンの髪の色が特徴的なとても可愛らしい女性だ。


 僕がクレアさんに挨拶をすると彼女は僕の顔に見覚えがあるのかアッ!という顔をする。


「あなた確か…… 以前、勇者の墓を探しにこの村にきた人ですよね?」


 僕は彼女に頭を下げる。


「はい、その節はどうも」


「勇者の墓? 龍斗、なんだそれ?」


 神父が質問をしてきたがめんどくさいので、それを無視してクレアさんに病気の事について質問をした。


「村に蔓延している病気ってどのような症状なのですか?」


「はい、聞くより実際見てもらったほうが良いかも、奥の部屋で父が寝ています。どうぞ」


 クレアさんに促され僕たちは奥の部屋に入ると布団の中で苦しそうに唸りながら寝ている老人がいた。どうやら村長のようだ。僕は村長の顔を覗き込んだ。すると村長の顔には紫色の小さな丸い斑点が複数できていたのが見えた。


「あっ! これは!」


 僕はその見覚えのある斑点を見て思わず叫んだ。


「龍斗、どうした?」


 驚いた神父が僕に尋ねる。


「この病気は『魔紫菌感染症ましきんかんせんしょう』だ。まさか、この病気はとっくの昔に撲滅したはずだ。なぜ?」


 僕が言った病気に聞き覚えがあったのか、神父がハッとした顔をする。


「『魔紫菌感染症』…… 確か、何百年も前、まだ魔王と魔族の脅威があった時代だ。魔族が人を滅ぼすために作って広めた感染症がそれだ」


 僕は神父の方を向くと無言で頷いた。


「そう、だが勇者の仲間が特効薬と抗体薬を作るのに成功したため。その病気は完全に撲滅されたはずだ。今、この病気を作る事ができる奴がいるわけない」


 僕がしばらく考えているとあることを思い出し、バッグに手を入れる。


「そうだ」


 そう言いながら僕は一冊の本を出した。姫野さんがその本を見て僕に尋ねてきた。


「その本は何なの?」


 僕は本をパラパラとめくりながら答えた。


「この本にはこれから行く、地下ダンジョンの階層に何のアイテムがあるかが記されている本だよ」


 地下ダンジョンと聞いてベネディクト神父とクレアさんが何か質問したいような顔で僕を見ているが、僕はそれを無視して本をめくり続ける。そして


「あった! 『魔紫菌感染症ましきんかんせんしょう』の特効薬と抗体薬を作るレシピが地下ダンジョンの六階にあるぞ。この本があれば病気を治せる」


「ホントか!龍斗!」


 僕の言葉に驚いた神父が思わず叫んだ。


「ああ、だが残念な事に地下ダンジョンには魔物がいる。魔物は地下に降りれば降りるほど強くなっていく。今の僕たちのレベルじゃあ六階にまで行けない。四階が限界だ」


 僕が残念そうに言うと神父がニヤッと笑った。


「龍斗、それなら心配すんな。俺も一緒に行ってやるよ」


 神父の思わぬ提案に僕は驚いた。


「え!神父って魔物と戦えるの?」


 僕がそう言うと神父は心外そうな顔で答えた。


「あったりめ〜だ。俺を誰だと思っている。ほら」


 そう言いながらステータス画面を表示する。


 名前:ベネディクト・シアーズ Lv22 種族:人間(男) 職業:エクソシスト 役割ロール:ヒーラー


 HP:280/280

 MP:320/320

 力:3P

 魔力:23P

 敏捷:1P

 耐久力:3P

 器用さ:0P

 魔法:ヒールLv3:9P エンターヒールLv3:9P

    プロテクトLv3:9P エンタープロテクトLv3:6P

    ゴッドプロテクションLv3:9P  ブレイクカースLv3:9P

 装備:エクソシスト キャソック:25P:魔防+10 降魔の手袋:2P:MP+20


 所有ポイント:0P

 Ex:2206


「う〜ん、ヒーラーかぁ。確かに神父がいれば随分と助かるなぁ。けど、もう少し戦闘ができる人がいないとちょっと不安だなぁ」


 僕が少し悩んでいるとベネディクト神父が不満そうな顔で文句を言う。


「おいおい、俺様だけじゃあ心許ないってか。安心しろよ、乗ってきた馬車に武器が積んであるからよ。守りだけじゃなく攻撃も出来るぜ」


「そうか、うん……いや、それなら多分。大丈夫だろうけど……」


 う〜ん、正直、ベネディクト神父だけじゃあ、姫野さんを守りながら戦うのはちょっとキツイかもなぁ。でも、それを言うと姫野さん怒りそうだし。どうしたものかな? と、僕が色々悩んでいると突然、大きな声でクレアさんが叫んだ。


「あの…… その地下ダンジョン、もし宜しければ私も同行させてください!」


 

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