第四十二話
「魔刃糸!」
リカルダが放った糸の刃が三つこちらに向かって飛んでくる。僕はその三つの刃を跳ね返そうと剣を構えた。
「おりゃ!」
剣を大きく振りかぶり僕が袈裟斬りを放つとキンと金属がぶつかり合う音がした。リカルダの刃を跳ね返したのだ。だが、三つ全てを跳ね返すことはできず、一本の魔刃糸が僕は右肩に突き刺さった。
「くそ…… 全てたたき落とすことは無理だったか」
自分の右肩を見るとリカルダの放った刃が深く刺さっていた。僕は痛みに顔は歪ませながら刃を思いっきり引っこ抜く。すると大量の血が吹き出した。
「くっ……」
僕は刃の鋭い痛みに片膝をついた。
「これで終わりよ!」
それをチャンスと見たようだ。リカルダが再度、魔法を詠唱する。僕はそれをただ黙って見ているしかなかった。万事休す、僕はそう思った。しかし、突如姫野さんの声が聞こえた。
「リカルダさん! やめて!」
僕とリカルダが声をした方を見ると村の家屋と家屋の間から姫野さんが出てきた。
「は、遥……」
リカルダが呟くと姫野さんがこちらに向かって走ってくる。そして彼女は僕の前に立ちはだかった。
「遥、あなた無事だったのね。でも、どうやって逃げ出したの…… やっぱりエレンミアがいるのね」
リカルダは辺りをキョロキョロ見渡しエレンミアを探した。しかし、姫野さんは首を左右に振ってそれを否定した。
「いえ、リカルダさん。エレンミアさんはいないわ。私は自分だけの力で見張りを倒して逃げ出したのよ」
「うそ、あなたが一人で…… どうやって?」
リカルダは不思議そうに聞くとその疑問には僕が答えた。
「リカルダ、忘れたのか。あのゴーレムを倒したのが姫野さんだって事を。ゴーレムを倒して得る経験値はとても高い。その高い経験値のおかげで姫野さんのレベルは大幅にアップしたんだ」
「リカルダさん、今の私のレベルは9まで上がっている。見張りも簡単に倒せたわ」
姫野さんがそう言うとリカルダは目を細め静かに頷いた。
「……そう、そうだったの。なるほど、遥、あんた短時間で立派になったのね。それはよかったわ。わかったからそこから退いてちょうだい」
リカルダが姫野さんを睨みつける。しかし、姫野さんは僕の前から一歩も動こうとしなかった。
「姫野さん、危ないから離れているんだ、僕なら大丈夫だから」
僕も姫野さんに退くように言うが彼女は僕の言葉にも耳を貸さなかった。痺れを切らしたリカルダがイラついた口調で大声を出す。
「いいわ!そこを退かないなら貴方ごと坊やを殺してやる!」
リカルダが魔法の詠唱を始める。僕はそれを見て必死に立ち上がろうとした。だが、右肩の痛みで動くことができない。
「まずい! 姫野さん。離れろ!」
思わず僕は叫んだ。そして、リカルダが魔法を発動しようとした。だがその瞬間、男の呻き声が聞こえた。リカルダは魔法の発動をやめ、後ろを振り返る。
「頭!」
どうやら呻き声を発していたのは頭のようだった。リカルダは走り出し頭の上体を優しく起こす。




