第二話
僕が剣を振り上げ上段に構えるとコボルトが二匹同時、真正面から攻撃をしてきた。
グゲゲゲゲ!!
右のコボルトの攻撃が早いな……
僕の方から見て右側から攻撃してくるコボルトが右腕を振り上げると鋭い爪で攻撃してきた。僕は素早く剣を振り下ろす。
ぎゃあああ
攻撃してきた右腕を肘あたりからズバッと切り落とすとコボルトは痛みで叫び前かがみになる。そして肘からあふれ出る血を止めようと右ひじを押えた。
僕はすぐさま前かがみになった頭に右の回し蹴りを放つ。蹴りはコメカミ辺りに当たるとコボルトは勢いよく吹っ飛び左からくるコボルトに衝突した。
グギャー
衝突した二匹のコボルトは重なりながら地面に倒れる。僕はすかさず飛び上がりコボルトの胸に剣を突き刺す。
剣が突き刺さった二匹のコボルトはまるで串焼きバーベキューのようだ。剣を体から抜くと二匹はすぐに生き絶えた。
それを見ていた残り四匹のコボルトは僕がなかなか手強いと認識したようで慎重になった。お互いに目配せすると左右に広がり始める。そして円を描くように僕を取り囲んだ。
僕が正面に剣を向けながら後ろをチラチラと見て用心するとしばらく膠着状態が続いた。だが突如、業を煮やしたのか後ろのコボルトが攻撃を仕掛けてきた。
グギャー
いくら慎重になったといえ、所詮コボルトの攻撃は単調だ。コボルトが右手を振り上げ袈裟斬りの一撃を放つと僕はその攻撃をクルリとバク宙して交わしスタッと着地する。そしてコボルトの後ろを取るとそのまま剣を胸に突き刺した。コボルトは悲鳴のような鳴声を上げ絶命しながら倒れる。
今度は真正面にいたコボルトが襲いかかってくると、少し遅れて右にいたコボルトも襲ってきた。
僕は右手の人差し指と中指を揃えて額に当て意識を集中する。すると人差し指と中指がボウっと光を放つ、そしてすぐさま真正面からくるコボルトに右手を突き出した。
「くらえ!烈火弾」
僕が魔法を唱えると突き出した右手からボシュという音と共にボーリングの玉ほどの火の玉が飛び出す。
火の玉は弾丸のようなスピードでコボルトの顔面に直撃すると爆発した。モクモクと広がる黒煙の中に首のないコボルトの影が見える。影はゆっくりと後ろに倒れた。
次に僕は右から襲ってくるコボルトの方を向くとスコップで土を掘るように剣を地面にドスッ!と突き刺し、土を加えこんで持ち上げる。土はコボルトの顔面に当たった。
土が目に入ったのかコボルトは両目を手で押える。僕はその瞬間を見逃さなかった。思いっきり飛び上がるとそのまま剣を振り下ろす。
ぎゃああああ
コボルトは頭から真っ二つになると身体は左右に分かれ血を噴き出しがら倒れた。
僕は残り一匹のコボルトを見る。どうやら最後のコボルトは戦意を失っているようだ。ブルブルと震えている。そして突然、後ろを振り向き走り出した。
かわいそうだが逃すわけにいかない。僕は「烈火弾」を放つ。
放たれた火の玉がコボルトの胴体に当たるとドン!っという大きな衝撃音が鳴った。
コボルトはヨロヨロと千鳥足で歩きながら自分の胸を見る。すると胸に大きな穴が開いている事に気づいた。コボルトは無駄だと知りつつその開いた穴を塞ぐように両手を広げ、それを胸に当てる。だが当然なんの意味もなかった。コボルトは自分の死を悟りそのまま前かがみになりながら死んでいった。
「ふう、終わったな、よし報告に行こう」
無事依頼を達成した事に安心した僕は先ほどの老人宅に報告に向かおうとすると木々の中から一人の女性が出てきた。僕は咄嗟に身構える。
「す、すごい、つ、強い。君は確か私と同じ高校の人じゃない?君もこの世界に連れてこられたの?」
女性は驚きの声を上げなら僕に近づいてきた。僕は目を凝らしその女性をよく見ると思わず息を飲んだ。
「き、君は姫野さん!」