第十八話
僕たちが順調にゾンビを倒し進んでいくと大きな階段が見えた。そして階段の前までくるとエレンミアが振り返り、皆の方を向くと階段を指差した。
「みんな、この階段を上がれば二階に上がれるわ。二階にはウルフ系のモンスター、キラーウルフとフレムハウンドがいるわよ。フレムハウンドはちょっと手強いからね。気をつけて、遥ちゃんは龍斗の後ろで身を守っているのよ」
エレンミアの言葉に姫野さんがコクリと頷いた。
「エルフのお姉さん、そう言えば聞くのを忘れたけどこの塔は何階まであるの?」
リカルダがエレンミアに質問する。
「石の塔は5階まであるわ。そして、それぞれ各階には系統の違うモンスターが住み着いてるのよ」
エレンミアの問いに頷きながらもリカルダはさらに質問をする。
「ふ〜ん、ところでこの塔の屋上にいるゴーレムが持ってるアイテムってどんなアイテムなの?」
その質問には僕が答えた。
「ゴーレムが持っているのは「マジカルドラゴンフルーツ」という名のアイテムで、戦闘中に一度だけ全ステータスを3倍にすることが出来る便利な上級アイテムだ。しかも呪いの短剣と違って全くノーリスクで自分のステータスを上昇できる優れものなんだよ」
それを聞いたリカルダは少し驚いた顔したが、すぐにその表情を消した。そして小さく感心したように呟いた。
「へー 全ステータスをねぇ。それは凄いアイテムだわ」
「さあ、二階にいくわよ。ウルフ系のモンスターは動いが早いからリカルダ、まず、あなたの『魔粘糸』で動きを止めて、あとは私と龍斗が引き受けるわ」
エレンミアが皆に指示を出す。
「さっ! いくわよ」
僕たちは階段を上がるとそこは大きな広間だった。広間には所々でキラーウルフとフレムハウンドが群で寝ている。だが、僕たちの足音が聞こえたのかスクッと立ち上がった。
「くるわよ」
エレンミアがあたりを警戒する。先ずは紫色のたてがみをした大きな狼が二匹こちらにゆっくりと近づいてくる。
「……キラーウルフよ。龍斗、あなた囮になって」
「了解!」
キラーウルフに向かって僕はスタスタと歩き出した。
ヴォルルルル
キラーウルフは僕を威嚇している。
「かかってこい犬っころ」
僕が挑発すると、二匹のキラーウルフが同時に飛び出してきた。
「あらよっと」
クルリとバク転しながらキラーウルフの攻撃を避けるとすぐさま剣を抜き、先ず向かって右側のキラーウルフに斬りかかる。だが、素早い動きで呆気なく僕の攻撃を避ける。と同時に、左側にいたキラーウルフが牙で僕に攻撃を仕掛けてきた。
「やば」
思った以上に素早い攻撃に避ける間も無く仕方なく剣を自分の顔面に前に出すとキラーウルフは僕の剣を思いっきり噛んだ。牙と剣が当たってガキガキと音を立てている。
「うお、離れない。なんて強い力だ……」
僕はキラーウルフの口から剣を引っこ抜こうとありったけの力を込めた。が、ビクともしない。そして、今度はもう一匹のキラーウルフが牙をむきだして飛び込んできた。
「うおっ、まずい」
僕は焦りながら飛び出してきたキラーウルフの方を見る。とその時。
「坊や、任せて」
後ろでリカルダの声が聞こえた、その瞬間、無数の糸が飛び込んできたキラーウルフの口や足に巻きついた。
動けなくなったキラーウルフは地面に落下すると糸を切ろうとジタバタしている。
「エルフのお姉さん」
チャンスと見たリカルダがエレンミアの方を向くとすでに彼女は魔法を詠唱していた。
「烈炎弾」
エレンミアの右手からボーリングの倍以上の大きさの火の玉が飛び出す。火の玉は動けなくなったキラーウルフに直撃するとそのまま焼け死んだ。
「やった!エレンミアさん凄い!」
後ろの方で見ていた姫野さんが小さくジャンプしながら喜んでいた。
「このくらい余裕よ。フフ」
姫野さんに賞賛され鼻高々のエレンミア。
「ちょ、ちょっと。エレンミア、悪いけど僕の剣に噛み付いているこいつも倒してくれ」
僕は褒められ得意げになっているエレンミアに助けを求めた。
「ちょっとキラーウルフ 程度で手こずらないでよ。しっかりして」
そう言いながら烈炎弾を放つともう一匹のキラーウルフは焼け死んだ。
「た、助かったよ。エレンミア」
僕はエレンミアに礼を言う。
「まだ、礼を言うのは早いわよ。ほら、あいつらこっちにくるよ」
エレンミアが指さしが方を見ると、フレムハウンドが四匹、こちらにジリジリと近づいてくる。
「さあ、これからが本番よ。皆、気合いを入れてね」
フレムハウンドが四匹か…… これは骨が折れるぞ。そう思いながら僕は剣を構えた。