エピローグ
僕はとある高校の屋上から一人の女の子を眺めていた。
その女の子は学校が終わり家に帰ろうとしているようだ。
その女の子の後ろから一人の女の子が走ってきた。どうやら後ろから走ってきた子は友達のようだ。
「遥〜、待ってよ! 一緒に帰ろ〜〜」
姫野さんは笑顔で振り返り、友達を談笑しながら帰り道を歩き始めた。
「姫野さん……」
僕は姫野さんの笑顔を見て思わず寂しい気持ちになり彼女の名を呟いた。
「おい、龍斗、な〜に感傷に浸ってるんだよ」
そんな僕の名を呼び声が聞こえ後ろを振り返ると神がニヤついて顔でこちらを見ている。
「なんだよ。せっかく一人で感傷的になってたのに邪魔しないでくれよ」
「ハハハ、悪いな」
「で、何のようだい?」
「ああ、もうそろそろ行こうかと思ってな」
「え! 行く? どこに?」
「フッ、はるか彼方の遠い星さ。俺は今度、そこの星で神をやる事に決まったんだ」
「何だと! じゃあ、この星と異世界の神は誰がやるんだ?」
「そりゃあもちろん、龍斗……お前だよ」
「えぇぇ!! お、俺ぇぇ?」
「ああ、異世界にはまだ、魔物が住んでいる。そう考えると魔王が復活する可能性も高いだろう。その時、お前が勇者のサポートをするんだ」
「勇者のサポートだと! 俺が…… そうか…… ってか勇者ってどうやって決めるんだ?」
神は呆れた顔で僕を見ている。
「オイオイオイ、わかってんだろう。勇者は姫野遥の魂だ。今後、姫野遥は何度も生まれ変わる。魔王が復活したら姫野遥の魂の入っている人間を見つけて異世界に転生させるんだ」
「姫野さんを……転生」
「そうだ。姫野遥が何度か勇者となり魔王を倒し続ければ、お前同様いずれ彼女も神になる。その時になったら天界で二人で暮せるぞ」
「ええ! 姫野さんと天界で!」
「ああ、彼女がオーケーすればの話だけどな」
「ま、まじか……」
「マジだよ。まあ、そういう事だだからな。んじゃあ、俺はそろそろ行くよ。元気でな」
神は僕に別れの挨拶をするとさっさと宇宙へと飛んで行ってしまった。
「おいおい、元気も何も、俺も神になったんだぞ…… ったく」
僕は思わず笑顔になり飛んでいく神の背を眺めていた。
神があっという間に見えなくなると僕は改めて姫野さんの方を見た。
「そういうことになったらしい、姫野さん。これからもよろしくね。それじゃあ、僕はそろそろ天界に帰らなきゃ。また会おうね」
僕は少し名残惜しかったが、いずれまた姫野さんと会える日が来ると信じて天界へと帰ることにした。
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「それにしても遥、よく無事だったね。行方不明だった時の記憶はやっぱりないの?」
「……うん」
遥は嘘をついた。だが本当の事を言っても信じてもらえる訳が無い、異世界に行って勇者になって魔王と戦ったなど……
「まっ! 元気に戻ってきたんだからいいけどね。あっ! そういえば少し後に遥と同じように行方不明になった同じ学校の男の人がいたらしいんだけどその人は行方不明なままなんだって」
きっとそれは龍斗だ。遥は曖昧に頷いた。
「……そうなんだ」
「そういえば遥、駅に美味しいタピオカミルクティーが売ってる店があるんだって行ってみる?」
「うん!行く行く!」
遥と友達は楽しくお喋りをしながら駅へと歩き出した。が、ふと何か見つけたように遥は後ろを振り返り学校の屋上の方へ目をやった。
「遥、どうしたの?」
友達が心配したように遥に声をかけた。
「うんうん、なんでもない。行こう!」
遥は笑顔で答えると二人は笑顔で再度、歩き出した。
だが遥はまた立ち止まり、もう一度、学校の屋上へと目をやるとそっと呟いた。
「うん、また会おうね」