第十六話
「わー 中も広いね〜 それに何でか明るいわ」
姫野さんは石の塔に来られて嬉しいようだ。少しはしゃいでる。
「この石の塔は光を放つ魔法の石で建てられている塔なんだよ」
彼女はあたりを見回し感心しながら呟いた。
「へー そうなんだ不思議」
僕はそんな姫野さんを心配しながら横目でチラチラ見ていた。
うーん、大丈夫かなぁ…… 正直、僕だけじゃあ彼女を守りきれない。頼んだよエレンミア。
僕がエレンミアの方を見るとエレンミアは僕達に話しかけてきた。
「いい? この塔については私が一番詳しいから、絶対、私の指示にしたがってね。でないと死ぬわよ」
僕達3人は力強く頷く。
「まずは、あなた達のステータスを確認させてね。えっとじゃあ最初は…… サリ…… いや、龍斗から見せて」
僕はエレンミアの前に立ち右手を前に出し指で空間をトンと押した。すると半透明のウィンドウが表示される。エレンミアはそのウィンドウを顎に指を当てながら見始める。
「ふんふん、職業は魔法戦士ね。レベルは10か。力、敏捷、魔力、耐久力、器用さ。さすがバランスよくステ振りしてあるわね。うん、わかったわ、それじゃあ次は色っぽいお姉さん、あなたのステータスを見せて」
リカルダがステータスを表示させる。
「職業は妖術師…… か、レベルは17ね。やっぱり突出して魔力にステ振りしてるわね。うん、魔法の種類も多く取得してるし、こりゃなかなかの戦力ね。うん、ありがとう。で、次は遥ちゃん……は見る必要ないわね」
姫野さんがあからさまにガッカリし不満を口にした。
「ええ、何で私のはいいんですかぁ?見てくださいよ〜、つまらないなぁ」
エレンミアは姫野さんを見て微笑んだ。
「だって、まだレベル1の魔法使いでしょ」
「そうですけど〜」
姫野さんは口を尖らせブーブーと文句を言っている。
「まあ、ここで戦闘をすれば結構レベルも上がるはずだから、その時、ポイントの振り分けのアドバイスしてあげるわね。うまくステ振りできれば、レベルが低くてもこの塔での戦闘でみんなの助けになるかも」
「本当ですか? 楽しみ!」
先ほどまで不満げだったが、エレンミアの言葉を聞いてすっかり上機嫌の姫野さん。僕はその姿をやっぱり心配しながら見てしまう。うーん…… こうなったら僕が絶対、姫野さんを守るぞ。
「さあ、まずはこのまま真っ直ぐ行ってあそこにある扉まで行くわよ。あの扉の中に入るとさっき、龍斗が言ったようにゾンビが出てくるから油断しないようにね。ゾンビどもは結構、耐久力があるわよ」
「ああ、わかった。で、ゾンビどもはどう戦う?」
僕は早速、エレンミアに指示を仰いだ。
「そうね。ゾンビは複数で襲ってくるから。まずは私の火魔法で全体攻撃をゾンビどもに食らわせて、HPを削るわ、その次はリカルダの魔粘糸で動きを止めて、そして最後は龍斗の剣でドドメよ」
エレンミアの指示に僕とリカルダは黙って頷いた。
「あと、遥ちゃん、もし、チャンスと見たらあなたも魔法を使って敵のトドメを刺してみて。遥ちゃんの魔法で敵を倒したらその経験値は遥ちゃんの物よ」
「はい!」
姫野さんは嬉しそうに返事をする。
「さあ、油断せずに行くわよ」
エレンミアが先に進むと僕たちはその後を慎重についていった。