第百五十八話
「うおおおおお!!」
魔王は遥の方へと叫びながら突進し右ストレートを繰り出した。
遥はその右ストレートをヒョイっと首を傾げるように簡単にかわす。
だが魔王はそれを予期したように続けざまに攻撃を繰り出した。
しかし、遥もそれを予期していたようだ。魔王の攻撃を全てかわしていく。
そして、魔王の最後の突きをかわしたと同時に遥は魔王の腹部に膝蹴りをぶち当てた。
「ぐふっ」
魔王は血を吹き出しながら高く吹っ飛ぶ。
「まだよ」
遥はそう言いながら高く飛び上がり魔王の背中に剣の柄を思いっきりぶつけた。
「ぐわっ」
背中に強烈な痛みを受けた魔王は苦しそうな声を上げると白目をむき、そのまま地面に叩きつけられた。
「うぐぐぐ……貴様、調子に乗るなよ」
魔王は怒りに満ちた目を遥に向けながらヨロヨロと立ち上がる。
「フン、『風神粉塵破斬桜」
遥は魔王の怒りなど気にした様子もなく風魔法を放った。
遥に右手から突風が吹き荒れると、それが数百枚の桜の花びらの形をした鋭い空気の刃に変化し、魔王の全方位を球形に囲むと勢いよく襲いかかった。
「グガアアアァァァァ」
数百枚の花びらの刃がザクザクと魔王の全身に突き刺さると、強烈なダメージを受けた魔王は大きく口を開けながら叫んだ。
全身から血を吹き出すほどの大きなダメージを受けた魔王。彼の右腕と左足は切断され吹っ飛んでいる。
そんな大ダメージを受けた魔王は苦しそうな顔で遥を見ていた。だが突如、遥を見ながらニヤリと笑う。
「ククク、流石だな私ですら一瞬、恐怖を感じるほどの魔法力だ。だがなこれで勝ったと思うよな。私にはあるんだ……奥の手がな」
「ハァァァァ!!!」
魔王が気合いを入れると超再生能力であっという間に切断された腕と足がくっつき、風魔法で受けたダメージも回復してしまった。
「ククク、どうだこれが私の特殊能力、『超再生』だ。これは魔力を使わない、だから無限にこの力を使うことが出来るのだ。母よ私は死なない生物になったのだよ」
「なるほどね。これはちょっと骨が折れそうだね…… そうね…… リカルダさん、お願いがあります」
「……お願い?」
リカルダが不思議そうな顔で尋ねた。
「ええ、私と魔王を貴方の亜空間に飛ばして欲しいの。この戦いは大きなものになるわ。なのでみんなに被害が及ばないように思いっきり戦いの」
「私の亜空間で……」
「魔王、いいでしょう?」
「フフ、ああ別に構わない。どこで戦おうが一緒だ、最後はここにいる全員が死ぬ」
「それはどうかしらね。……リカルダさん。お願い」
「ああ」
リカルダは両手を広げるとその手から大量の糸が放出される。そしてその糸があたり一面に広がり光を放った。
遥と魔王は無限に広がる真っ白な空間で二人きりとなった。
「さあ、これで思いっきり戦えるわね。魔王、覚悟はいいかしら?」
遥は改めて剣を青眼に構えた。それを見て魔王は鼻で笑う。
「ハンッ! さっきも言ったが私の『超回復』は無限に使える特殊能力だぞ、お前こそ覚悟はいいのか?」
「ええ、いいわよ」
「なら始めるか」
「はぁぁぁぁ!!!」
「おぉぉぉぉ!!」
遥と魔王が気合いを発するとお互い同時に走り出した。