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第百五十二話


「うおおおお!! こ、これが魔王の力、す、素晴らしい!!」

 

 魔王の魂を吸収したジャンは体が一回り大きくなっていった。


「な、なんという事だ。ジャンが魔王の魂を吸い取ってしまった……」


 あまりの驚愕な展開にマリー王女の顔は青ざめていた。


「お、王女、ジャンのあのオーラ……圧倒的な力に立っているのもやっとです」


 そう言いながらルイが苦しそうな顔で片膝をついた。


「気をしっかり持てルイ…… クレアは大丈夫か?」


 マリー王女はルイの腕を掴んで起こしながらクレアの方を見る。


「は、はい。だ、大丈夫です」


 しかし言葉とは裏腹にクレアもルイ同様苦しそうだった。


「二人ともがんばれ、今ここでジャンを食い止めないと世界は終わる。私たちがやらなくては」


 マリー王女が『バアルアックス』を抜き構えた。


 そしてマリー王女に続くようにルイもクレアも各々武器を構える。


「フハハハハハハ!いいぞ! 全身から力が漲ってくる! 素晴らしい!これで私は完全に最強生物と化したようだ」


 魔王の力を得たジャンは目を輝かせながら興奮気味に大きくなった自分の腕や胸板を見ていた。


「ジャ、ジャン。魔王の力を手に入れたのね。すごいわ、流石の私も貴方のオーラに押し潰されそう」


 ジャンが後ろを振り返るとリカルダは少し苦しそうな表情で近づいてきた。

 

 どうやらジャンの焼けつくようなオーラは受けただけで他者にダメージを与えるほど強力なようだ。


「リカルダ、済まない、オーラを抑えよう」


 ジャンは目をつぶると体をまとっていたオーラがスゥと消えていった。


「わ、悪いわね。ジャン」


 ホッとした様子のリカルダ。ジャンは静かに頷いた。


「構わないさ。さあ、そろそろあいつらを殺して姫野遥を始末しよう」


「ええ」


 リカルダとジャンがマリー王女たちの方を見る。


「 ジャン! 私たちはただでは死なんぞ! 喰らえ!『焔桜龍線オーファドラゴン!』」


「弾き飛べ『爆炎神夷弾ナパームシュート!』」


「焼き切れろ『焼神刃覇ブーンドミネイション!』」


 マリー王女達は魔法を発動した。しかし、彼女達が放った魔法は先ほどジャンに通用しなかった魔法だった。


「フン!」


 ジャンが右手を一振りすると、突風がまきおこりマリー王女達の魔法がいとも簡単に吹き飛ばしてしまった。


「オイオイオイ、マリー王女、私が魔王の力を得る前にも通用しなかった魔法を発動してもしょうがないだろう? どうやらもう打つ手はないようだね」


「くっ…… 万事休す……か」


 マリー王女達はなすすべもなくただジッと立っている。


「どうやら覚悟は決まったようですね」


 ジャンがゆっくりと歩いていく。そしてマリー王女たちの近くまでくると右手を広げ、それを彼女たちの方へと向けた。


「さあ、私の火魔法で焼け死ぬがいい」


 ジャンは高らかに笑い右手に魔力を集中させるとその右手から赤い光が増光し始めた。


「く、くそ! こんなところで負けるのか!」


 マリー王女は悔しそうに叫んだ。


「ハハハハ、残念だったな。死ねぇ!」


 ジャンが叫びながら魔法を発動しようとした。が、その時!


「ぐ、ぐぐぐ、な、なんだ。動かん、なぜだ体が動かんぞ……」


 右手をマリー王女達の方へ向けたままジャンは固まったように動かなくなった。


 不思議に思ったリカルダがジャンに声をかける。


「ジャン、一体……どうしたの」


「わ、わからん…… 体がピクリとも動かん」


 ジャンは必死に自分の体を動かそうと力を込めた。しかし、右手をマリー王女達の方へ向けたままの状態から全く動けなくなっている。


 そしてジャンが必死に体を動かそうともがいていると、どこからか声が聞こえた。


「――――――ジャンよ。お前は私の魂を吸収したと思っているようだがとんだ勘違いだ」


「こ、この声は魔王!」


「クハハハハ!! ジャンよ、かかったな。お前の能力を私が忘れるわけがなかろう。お前に魂ごと吸収されたのは逆にお前の体を乗っ取るために私の演技だよ」


「な、なんだと。魔王…… 貴様、ど、どこにいる! 出てこい!」


 ジャンが叫んだ。すると、ジャンの肩から人の頭がニョキニョキっと生えていた。


「いいだろう。ジャン、出てきてやったぞ。もう、お前の体は私の物だ!」


 なんと、ジャンの肩から出てきたのは魔王の頭だった。

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