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第百四十九話


「お、おお……こ、これが、魔神化したジャンの姿が……」


 魔神に変異したジャンを見て魔王は思わずその圧倒的なオーラに後退りをした。しかし、その行動とは裏腹に何故か感動しているかのように目が輝いている。


「なんという強烈なオーラ…… 立っていられないほどだ……」


 マリー王女は絶望した表情で呟いた。


「マ、マリー王女、ど、どうしたら……」


 ルイは不安げな顔でマリー王女を見ている。


「龍斗……」


 そしてクレアは龍斗の名を静かに呟いた。


「素晴らしい、素晴らしいぞ。ジャン。世界でお前以上の力と魔力を持っている者は誰もいない。私など遥に越えた力を持っている。誇るがいい!」


 魔王は喜びに満ち溢れた表情でジャンを称えた。


 ジャンはそんな魔王を静かな目で見ている。


「フフ、魔王様、何やらいたく感動しているようですが、貴方はこれからその私に殺されるのですよ。そんなに感動していていいのですか?」


 魔王はジャンの言葉に動じる気配もなく答えた。


「ああ、そうかもしれんなぁ。だが勝負というのはやってみなければわからない。もしかしたら私が勝つ可能性もあるかもしれんぜ。さあ、続きを始めよう」


 そう言いながら魔王は両手を前にだして魔力を込め始めた。


「はあああああ!! 」


 魔王が魔法を放とうとしている。それをジャンその憐れんだような目でジッと見ながら小さく呟いた。


「……無駄な事を」


「無駄がどうかやってみなければわからんぞ! 先ほどの牙焔黒刃凰がえんこくじんほうはお前の実力を図るためにわざと魔力を抑えて攻撃したのだ。そして今から放つのを私の本気の魔力が込められた真の牙焔黒刃凰がえんこくじんほうだ!」


 魔王は雄叫びをあげると黒焔がさらにどす黒い色に変わった。そして気合いを発すると同時に牙焔黒刃凰がえんこくじんほうを連続で三発放出した。


 放たれた牙焔黒刃凰がえんこくじんほうは大砲が発射されたような大きな音を鳴らしジャンの方へと向かう。


「死ねぇ!! ジャン!」


 黒焔は容赦なくジャンに襲いかかる。だがジャンは先ほど同様、全く動こうとしない。


 それをみて魔王はニヤリと口角を上げた。どうやら魔王は自身の魔力に恐れをなしジャンが恐怖で動けないと思ったようだ。


 そして魔王が放った黒焔があっさりとジャンに直撃する。


 すると、ドンッ!という腹の底に響くような爆発音を鳴り、あたり一面に殴りつけるような爆風が巻き起きた。


 マリー王女達はその強い爆風を受け、咄嗟に手を顔の前にやり押されながらもなんとか風を受けた。


「フフフ、どうやら私の魔法を避けることができなかったようだな」


 勝ち誇った顔をしている魔王。どうやら自分の勝ちを確信しているようだ。だがしかしその顔はすぐに驚きに変わる。


  それは黒煙たちこめる中からジャンの冷静な口調の透き通った声が聞こえたからだった。


「手加減? で、今のが本気…… ですか、正直私にはあまり違いがわかりませんね。どちらも大した威力はありませんよ」


 皆がその声の方を見ると、ジャンが黒煙からゆっくりと歩いて出てきた。


「さあ、今度は私の番ですよ」


 黒煙からジャンが現れてそう言った瞬間、その場にいたジャンが消えた。


 魔王は驚きハッとしたが、だが、さらに驚いた表情をした。それは消えたと思ったジャンが目の前に立っていたからだった。


「なっ!」


 魔王はなす術もなくジャンを見ている。ジャンはニヤリと笑うと掌底を魔王の顎に軽く触れる。


 すると、ただ触れただけと思った掌底の威力に魔王は口から血を出しながら高く上に吹っ飛んだ。


「ぐはっ」


 高く吹っ飛んだまま滞空する魔王、その横にまるで瞬間移動したかのようにジャンが現れた。


 ジャンは魔王の腹に鉄槌を喰らわす。


 魔王はまたも血を吹き出し、今度は勢いよく地面に叩きつけられた。


「ガハッ! み、見えない。ジャンの動きが……」


 ヨロヨロと立ち上がりながらも両手を顔の前に構え戦闘態勢を保つ。しかし、ジャンの姿を見つけられない。


「後ろです。魔王様」


 突如、魔王の後ろから冷たい口調のジャンの声が聞こえた。その声に反応した魔王が振り返ろうとするとそれより先にジャンが魔王の背中に掌底をあてがう。


「がはぁ」


 魔王は苦痛に顔を歪め海老反りになると痛みで立てないのかその場に蹲った。


「な、なんという強さだ。まさか、この私が手も足も出せないほどとは……」


 そう言いながら魔王はジャンを見上げる。それに対してジャンは相変わらず冷たい表情で魔王を見ていた。


 そして右手を手刀の形にし、それを頭上に高く上げる。


「もう、貴方の相手は飽きました。自分の強さもわかったのでそろそろ終わりにしましょう。これで死んでください魔王様」


 と、頭上高く上げたジャンの手刀がボウッと紫色の焔に包まれた。


「さあ、これで首を掻っ切って上げましょう。我が奥義『焔蛇王掌』です」


 ジャンが気合いを入れながら鋭く手刀を振り下ろす。魔王はそれを睨みながら見ているが何もできないようだ。


「痛みはありませんよ。なのでせめて安らかに死んでください、魔王様! 破ァァァァ!!!!! !!!!!」


 ズバッという音と共に魔王の首が飛ぶ。


 ジャンの奥義に魔王は呆気なく首を飛ばされ絶命してしまった。魔王の首はゴロゴロと地面を転がった。


 それをジャンは満足そうな顔で見ている。


「そ、そんな。あの魔王があんな呆気なくやられるなんて、し、信じられん……」


 マリー王女が呟くとジャンは彼女達の方を向いた。


「さあ、次は貴方達の番ですよ、覚悟はいいですか?」


 魔王が死に、今度はマリー王女達が絶体絶命の危機に晒される。


 ジャンは静かにマリー王女達の方へと歩き始めた。


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