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第百四十七話


「ジャンよ。素晴らしい、今のお前はサリウスに倒された時代の私など足元にも及ばないほどの力を手入れてている。どうだ? 魔王の血は?」


 魔王の問いにジャンは無表情で答えた。


「ええ、素晴らしいですよ。貴方の…… いや、この血は、貴方のではないですね…… そう、これは魔王といっても初代魔王の血だ」


 ジャンの言葉に魔王は満足そうに頷いた。


「そうだ。ジャンよ、どうやら全てを理解したようだな。その血は確かに初代魔王の血だ。魔王は私が最初ではない。もう何千年も前から魔王は誕生していた、そしてこの世を支配していた。だがその度、勇者が現れて倒されてきた…… だがしかし、初代魔王だけは他の魔王と違っていた。彼は肉体は滅んでも自分の血を魔物や人間の体に侵入させることによってその体を乗っ取り永遠に生き永らえる能力があったのだ」


「な、なんだと……」


 魔王が話す驚愕に事実にマリー王女達は驚きを隠せなかった。魔王はチラリとマリー王女の方を見ると話を続けた。


「そして初代魔王には体を乗っ取る力だけではなく他に特殊な能力があった。それは他者の体を乗っ取るとその人物の潜在能力を極限まで引き出すという素晴らしい力だ。初代魔王はその能力を使い、強い肉体を見つけては寄生し、その体を支配し幾度となく魔王として復活してきたのだ」


 あまりの衝撃の話に誰もが黙って魔王の話に聞き入っている、その反応に満足そうな表情の魔王はさらに話を続けた。


「だが、その繰り返しは私の代になって変わった。私は他の魔王と違って初代魔王の血を完全にコントロールすることができる力を持っていたのだ。私は逆に初代魔王の意識を完全に乗っ取る事に成功し、サリウスに倒される前にその血をウリアンの体に封印した。そして待った、あの時の私よりも強い肉体が現れるのを! そう、姫野遥の子が生まれるのをな…… そしてその子の肉体に私の魂と初代魔王の血を一体化させる事によって、私は完全体へと生まれ変わる事が出来る!」


 魔王の話を黙って聞いていたジャンがニヤリと笑う。


「なるほど、ウリアンは魔王の血を保管するために必要なただの箱だったわけですか」


「そうだ。ウリアン程度の男に私の器が務まるわけがない。私は奴に我が器になるためと偽って利用しただけだ」


「ハハハ、いやはやそうですか、可哀想なウリアン。魔王様は残酷ですね」


「フン、残酷でない魔王などいるかよ。さあ、おしゃべりは終わりにしよう、ジャンよ。そろそろ始めようか……」


 そう言いながら魔王は一歩前に出る。その瞬間、周りの空気が凍ったように変わった。


「おお怖い。いいでしょう、しかし…… いいのですか? 魔王様。貴方、子供の姿のままですよ。その姿で私に勝てますか? さっさと魔神に変異したらどうです? 本気出して戦わないと私に一瞬で殺されますよ?」


 ジャンの挑発に魔王の眉がピクリと動く。


「フフフ、それはこちらのセリフだ。お前こそ魔神に変異しないのか?」


 魔王が言い返すとジャンは言った。


「私はこのままで大丈夫、まずは人間体で貴方の実力を確かめましょう。さあ、私に遠慮せず変異してください」


 ジャンはどうぞといった風に手を差し出した。


「そうか、ならジャンよ、お前の言葉に甘えよう」


 魔王がそう言うと、先ほどまで子供の姿だった魔王が、まるで粘土のようにグニャリと体が伸び白いゴムのようになった。


 そして、パン!と大きな音が鳴ると、同時に魔王の真の姿が現れた。


 その姿は白髪で長髪、スラリとした長身に甘いマスクの大人の男性の姿だったが、頭からは真っ黒の角が生え、人間ではないのが一眼でわかる。


 そしてその威圧感は魔王にしか出せないほど圧倒的なものだった。


「ほう、それが魔王様の真のお姿ですか…… なかなかの美形ですねぇ」


 ジャンはその圧倒的な威圧感を物ともせず涼しい顔で言った。

 

「いやいや、お前には負けるよジャン。じゃあ、早速始めようか」


 そう言いながら魔王が構えると、ジャンも魔王と同じような構えを取った。


「ええ、お手柔らかに」


 とジャンが言った瞬間、二人はその場から消えた。そして、ドン!と衝撃音が聞こえると部屋の中央に魔王とジャンが、まるで瞬間移動したかのように突如、現れた。


 二人はお互い右ストレートを繰り出しその拳ははお互いの左頬に激突していた。


 魔王とジャンは苦痛に歪んだ顔でお互いを睨んでいる。両者の戦いの火蓋が切って落とされたのだった。


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