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第百三十七話


「こ、この部屋から物凄い禍々しいオーラを感じる……」


「ええ、私にもわかる。このオーラはきっと魔王……」


 クレアさんが息を飲みながら僕に話しかけた。

 

 大きな扉の前に立つ僕らにドス黒いオーラが纏わりついている。


「黒羽、中に入ろう。ここには何かがある」


 そう言いながらマリー王女が扉を開けようと取手に手をかけた、それを見たルイが慌てて王女を止める。


「王女! 待ってください。これは罠かもしれませんよ」


 マリー王女は困った顔でルイさんを見て答えた。


「ルイ…… しかし、急がねばならない。例えこれが罠でも行かなくてはならない。手遅れになる前に…… まあ、この禍々しいオーラが魔王のものであるなら手遅れかもしれんがな」

 

 僕はマリー王女の意見に賛同した。


「ルイさん。色々時間がない。マリー王女の言う通りだ。例えこれが罠でも僕たちは行かなくてはならない」


 僕の説得にルイさんは渋々だが、頷いてくれた。


「わかりました。だけど絶対に油断はしないでください」


「当たり前だ。この状態で油断などできるはずもない。行くぞ。いいか? 黒羽」


「ええ、マリー王女、行きましょう。クレアさんも大丈夫ですか?」


「うん、ここまできたら覚悟を決めたわ、終わらせましょう」


 クレアさんが神妙な顔で頷きながら答えてると僕も頷き返した。そしてマリー王女の方を向く。


「行きましょう。マリー王女」


 マリー王女は扉の取手を強く握り思い切り扉を開けた。





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「リカルダ!急いで回復魔法をアメデ様に!」


「む、無理よ。ジャン、残念だけど…… さ、流石にもう死んでいる」


「リカルダ。君はわかっていない。魔神の生命力は普通の人間とは比べ物にならないのだ。無駄かもしれんがやってくれ! 頼むリカルダ」


「わ、わかったわ」


 焼け焦げたアメデの死体を前にしてるジャンとリカルダ。二人は当初、丸焦げになって死んでいるのは黒羽龍斗だと思っていた。


 魔神に進化したアメデが倒されるなど露程も思っていなかったからだ。


 だが、ジャンは死体から発するオーラを感じ取り、焼け焦げた死体がアメデだと悟った。


「ジャン、下がっていて」


 ジャンがアメデの死体から少し下がるとリカルダが両手から大量の糸を放出した。糸はアメデの死体に巻きついた。


「糸よ! アメデ様の傷を治せ!」


 リカルダが魔力を込めると同時に糸が金色に輝き光だした。そして光が消えるとアメデに巻きついた糸が徐々に消えていく。


「ジャン、ありったけの魔力を糸に込めたわ。これで回復しなければ…… もう、アメデ様は……」


 ジャンとリカルダはしばらくアメデの死体を見つめていた。すると、ピクピクと黒焦げのアメデの死体が動きだした。


「う、動いたぞ! リカルダ。アメデ様は生きているぞ!」

 

 リカルダは確実にアメデは死んだとものと思っていたのでアメデが生きていたことに驚き言葉をなくしていた。


「アメデ様、大丈夫ですか? 今、回復魔法をかけます。リカルダ、魔力回復薬を飲むんだ。魔力が回復したらすぐにまたアメデ様の傷を癒してくれ」


「わ、わかったわ」


 リカルダはジャンから渡された回復薬を飲み干し右手をアメデに向け糸を放出しようとした。が、その時、驚くことにアメデが口を開いた。


「リ、リカルダ。や、やめろ…… 私はもう、もう助からない……」


 ジャンはアメデが喋ったことに驚いたがそれ以上に今言った言葉にもっと驚いていた。


「な、何を言ってるのですかアメデ様、魔神の生命力なら大丈夫です。気をしっかり持ってください」


 ジャンの言葉にアメデがフッと笑った。


「ジャンよ。残念だが私はもうだめだ。自分のことは自分が一番よくわかっている」


「そ、そんな、アメデ様」


「いいのだ、わ、私より、勇者が強かった。そ、それだけだ」


「しかし、我々の計画は、アメデ様の野望はどうなるのです……」


「そ、それは君が受け継いでくれ。ジャンよ」


「わ、私が…… そんな…… 私には無理です」


「た、頼む、私には時間がない、君に私の全てを託す、相手の力を吸収し、それを自分の力にする能力を持つ君なら私の力を託すことが出来る。た、頼む」

 

 口を真一文字に結び苦しそうな表情をしていたジャンだったが、覚悟を決めたように頷いた。


「わかりました。アメデ様の無念と野望、私がきっと叶えてみせましょう」


 ジャンの言葉を聞いてアメデは安心したようにフッと笑った。


「ありがとう。私は君と出会えてよかった。君なら全てを託すことが出来る」


 アメデは右手をジャンに向けて差し出した。


「アメデ様、私も同じ気持ちです」


 ジャンはそう言いながらアメデの右手を両手でしっかりと握った。その瞬間、ジャンの手から眩い光が放たれる。


「うおおおおおおおおおお!!!! こ、これが魔神の力! なんという力だ!!」


 光が徐々に薄くなってくると同時にアメデの肉体が塵となって消えていく。そして完全にアメデの肉体が消えるとジャンの手の光も消えていった。


「す、すごい力だ、途轍もない力が私の中に溢れている」


 ジャンは興奮した面持ちで自分の両手を見つめている。


「ジャン、アメデ様の力を受け継いでパワーアップしたのはわかるけど、油断しないで、坊やは魔神を倒した勇者、これからそれを相手にしなければならないのよ。それに私たちには()()()()()()がある……」


 ジャンはリカルダの言葉に口角をあげながら答えた。


「わかっている。相手は勇者、決して油断はしない。私を信じろ。さあ、行こう! 勇者を倒し我々の野望を果たすのだ」


 リカルダがジャンの言葉に頷く。そして二人は黒羽龍斗の後を追い始めた。

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