第百三十五話
「アメデ! 貴様! 許さん!」
「フン! 怒りで我を失ったか?」
全身の血が沸騰するかのような今まで感じたことがない怒りの感情が沸き起こり、僕は叫びながらアメデに向かって走り出していた。
「くらえぇぇぇ!!!」
飛び上がりながら剣を振りかぶり、そのまま超光速で振り下ろす。
「なに!」
僕の剣の速さに驚いたアメデが思わず後ろへ飛びのく。そして自分の頬に手を当てた。手には血がついている。
「ほう、私の体に傷をつけるとは……」
「全身切り刻んでやる!」
柄を強く握りしめ剣を水平に向けアメデに突きを出す。
「無駄だ!」
アメデは右の掌を前に出すと剣先を受け止めた。しかし、僕の剣はアメデの掌を突き刺した。
アメデの手から大量の血が噴き出す。
「ぐぅ!! またしても! 何故だ! 貴様の攻撃は私には効かないはずだ!」
「知るか! お前を殺す!」
僕も何故、アメデに傷を負わせることが出来るようになったのかはわからない。おそらく身体中に湧いた怒りの炎が僕の力を押し上げているのだろう。僕はその怒りに身を任せアメデに攻撃をぶつける。
「うおおおおおおおお!!!!!」
「ぬう! き、貴様程度が私の体に傷をつけるとは許さんぞ! このボケが!」
先ほどまで穏やかな口調だったアメデだが、余裕がなくなったのか口汚い言葉で僕を罵る。
「くらえ!! 『 神・光輝鳳凰斬』!!!」
僕はここぞとばかりにスキルを発動した。剣から光り輝くオーラが発し、そのオーラが大きな鳳凰に変わる。
「馬鹿め! そのスキルは私には通用しな…… な、何! う、うおおおお!!!」
僕のスキルがアメデの胸に直撃すると、アメデの胸が焼け焦げ始めた。
アメデは両手で鳳凰の頭を掴み、押し返そうとする。
「な、何だこの力は! 先ほどのスキルとは威力が違いすぎる。う、うおおおおおおお」
アメデの胸から肩、腹へとどんどん火傷が広がっていく、どうやらアメデは僕のスキルを受け止められないようだ。
「アメデよ。僕の力を読み違えたな。僕は…… 勇者の力は思いの強さだ。怒りや悲しみ、希望、全ての感情は僕の力に変わっていく。お前の敗因は僕を怒らせたことだ!」
「クソがぁぁ。な、ナメるなぁ!! 私のスキルで跳ね返してやる!『獄龍魔真氷厳覇』!!」
アメデがスキルを発動すると両手からブクブクと黒い氷が泡が立つように湧いてきた。そしてその黒い氷が僕のスキルを覆い尽くす。
「はあああああ!!」
アメデが気合いの叫びを張り上げながら両手に力を入れ始めた。そしてバーン!という大きな音がなると黒い氷が粉々になって崩れ落ちる。
「ぐっ! ぼ、僕のスキルを!」
僕は粉々になった黒い氷を見て悔し気持ちを押し殺すように下唇を噛んだ。
「まだ、これで終わりではないぞ! 黒羽くん」
アメデがニヤリと口角を上げると、右腕を真っ直ぐ上げた。
すると、粉々になった黒い氷がフワフワと空中に浮かび始めた。そして浮かんだ氷が塊となり翼竜に姿を変えた。
「行け! そして奴の全身を粉々にしろ!」
アメデは上げていた右手を僕の方へと向けると、氷の翼竜が襲いかかってきた。
「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!!!」
その素早い翼竜の体当たりに為す術もなく僕は攻撃をモロに食らってしまう。僕は全身血だらけになりながら吹っ飛ぶ。だが、最後の気力を振り絞るなんとか立ち上がる。
「私のスキルを食らって立ち上がるとは、さすがは勇者だ。だが、次の攻撃でお前は死ぬことになる」
そう言いながらアメデは両手を広げるとまた、ブクブクと黒い氷が湧き出し始めた。
「ぐ、ぐぐ、ま、負けるか! こい! お、お前のスキルなど僕の力で跳ね返してやる!」
「フン! 小癪な。私のスキルを食らって死ね! 『獄龍魔真氷厳覇』!」
「はあああああ!!! 行け!『 神・光輝鳳凰斬』!!!」
僕のスキルとアメデのスキルが同時に発動されると二つのスキルが互いに衝突しあう。
僕はこれで勝負が決まると確信した。