第百三十話
リカルダはマリー王女とジャンの方を見ながらルイに聞いた。
「あの女の持っている武器は神武器か…… なら私の糸を容易く斬ったのは納得ね。と言うことはあなたの武器も?」
リカルダの問いにルイは正直に答えた。
「ええ。私の双剣の名は『二天乃阿修羅』。戦闘神である阿修羅が所持していた最強の双剣」
「なるほどね。そんなすごい武器、どこで手に入れたのかしら? まあ、答えてはもらえないでしょうけど気になるわね」
「ええ、これから死ぬ貴方はそんな事を気にしてもしょうがありません。さあ、あなたも魔族なんでしょう? 本気にならないと私は倒せません。早く魔族変異したらどうですか?」
ルイに言葉にリカルダは少し驚いた顔をしていた。
「ふふふ、私が魔族? 何を言っているの、私は普通の人間よ。魔族なんかじゃないわ」
「そうですか。それは失礼しました」
「でも、魔族の力なんかに頼らなくても、ものすごい強いわよ」
「そうですか。なら試してみましょう!」
ルイはそう言うといきなり駆け出した。
「どりゃ!」
掛け声と共にルイは右手に持った剣でリカルダを突き刺そうとした。しかし、リカルダはすぐに糸を蜘蛛の巣のように広げその剣を防御する。
「無駄です、貴方はの糸は私の武器には通用しません!」
ルイは手首をぐるぐると回すとザクザクと言う音とともにリカルダの糸を切断していく。
「たぁぁぁ!!!」
ルイの剣がリカルダの脇腹を突き刺そうとした。が、リカルダは紙一重でそれを避けるとジャンプしてルイと距離を取った。
そして、地面に着地すると自分の脇腹を見る。リカルダは和服を装備しているが、避けた脇腹の部分だけ服がきれていた。
「フフ、危なかったわ。流石の斬れ味ね」
「もう、勝負はつきました。貴方では私には勝てません。今ならまだ命はではとりません、観念してください」
ルイの言葉にはリカルダは心外そうな顔をした。
「あらあら、驚いた随分自信過剰な娘さんね。さっきの攻防だけで私に勝てると思ってるわ」
「事実です」
ルイは冷静に答えた。リカルダは少し不愉快な顔をする。
「なら、この攻撃を食らいなさい! 『魔神絲』!」
リカルダが右手を前に出すと糸が大量に飛び出しグルグルと巻き付き始めた。そして大量に集まった糸は大きな人型になった。
人型の糸が右手を大きく振り上げ握り拳を作り、そのままルイに向かって振り下ろした。
「無駄です! 『炎炎乃式龍』!」
ルイはスキルを発動。双剣から龍の形をした黒い炎が飛び出す。炎はリカルダの糸の拳を容易く燃え溶かした。
糸は炎をまといながらチリジリになって宙に漂う。
「なかなかやるわね。だけどこれでは終わりじゃないのよ。私の糸は!」
そう言いながらリカルダが右手をグルグルと回し始めた。すると炎をまとい宙に浮いていた糸が意思を持ったかのように動き始めた。
「ちょっと斬ったぐらいで私の糸を破ったなんて甘いのよ。まだまだ私の糸は生きてるわ。行け!『魔神炎糸』」
炎を纏った糸がルイの周りを取り囲み、そして尖った刃物のような姿に変わると一斉にルイに向かって飛んで行った。
「逃げ場はないわよ! そのまま焼き斬れるがいい!」
糸の刃物は勢いよくルイに向かって飛んでいく。しかし、ルイは先ほど同様に冷静だった。
「だから無駄と何度も言いました。『風風乃式龍』!」
ルイがまたもスキルを発動した。今度は双剣から龍の形をした風が吹き荒れた。
龍はリカルダの糸を巻き込む。
「なに!」
リカルダは呆気なく自分の糸が吹き飛ばれたのを見て驚愕の表情だ。
「龍よ! 行け!」
炎糸を巻き込んだ風龍をルイはリカルダへと向かわせた。
「きゃああああ!!」
風龍がリカルダに直撃するとリカルダは全身が燃え上がり、そしてそのまま上空に吹き飛ばれた。
ドンと大きな音がなる。リカルダは燃え上がりながら地面に叩きつけられた。
リカルダはピクリとも動かない。
「だから言ったでしょう? 貴方では私には勝てないと……」
ルイは寂しそうな顔でリカルダを見ていたが、すぐに厳しい顔になるとマリー王女の応援に駆けつけようとした。