第十三話
「ええ!黒羽くん。冗談でしょ!私、行きたいわ」
プク〜っとふくれっ面で怒る姫野さん。僕はその姿に可愛いなと思いながらも、ちゃんと説得をする。
「いや、今はまだ姫野さんはレベルが低い流石に危険すぎるよ」
僕が姫野さんを説得していると横からリカルダが口を挟んできた。
「ちょ、ちょっと石の塔なんて危険な所、私行かないわよ。魔力もないのにそんな所行ったら死ぬに決まってんじゃない! あんたアホなの? あの塔がどんなに危険な所かわかってるの?」
リカルダがものすごい剣幕で唸り立てた。
「ああ、わかってるさ。だが石の塔に一緒に行けばこの魔力回復薬で魔力を回復してやる。それにそこでゲットしたアイテムは君が持って帰っていいよ。どうだ? 石の塔には珍しいアイテムが結構ある」
僕の提案にリカルダは少し迷った顔をしたが渋々その提案を承諾した。
「わ、わかったわ。その提案を飲むけど。私は人質なんでしょ? アイテムなんてゲットした所で殺されてしまったら意味ないわ」
それを聞いた僕はニヤッと口角をあげる。
「僕が欲しいアイテムが手に入れば逃してやるよ。どうだ? これ以上の提案はないだろう?」
あまりの好条件な提案にリカルダは逆に怪しいといった目で見ている。だが、それを飲むしかないと思ったのだろう。改めて彼女は承諾した。
「いいわ。私にそれを断る理由はない」
「ちょっと待って黒羽くん、この人に魔力を戻したら黒羽くん。この人に殺されちゃうわよ!」
「大丈夫さ、石の塔は一度、入ると屋上にある昇降機を使わないと出る事ができないんだ。石の塔は彼女のレベルでも一人では屋上には行けない。それぐらい危険な所さ。だから僕の協力がなければ屋上の昇降機までたどり着けない。彼女は僕を殺せないよ」
それを聞いて姫野さんは強張った顔で頷く。
「そうなの…… わかったわ。そんな危険な所なら私がついて行ったら足手まといね。うん、黒羽くんの指示に従うわ」
「ありがとう」
僕は笑顔でお礼を言う。よかった!わかってくれて、僕はホッと胸をなでおろした。
「さあ、ここで石の塔を攻略するための道具を揃えよう」
僕たちが道具屋に向かうと、大きな建物の前に着いた。姫野さんがその建物の大きさに驚いた様子だ。だが、驚いたのは姫野さんだけではない、実は僕もその建物の大きさに驚いた。
「この道具屋、こんなに大きな道具屋に成長したのか…… 僕の前世では小さい古屋みたいな所だったのに……」
それを聞いた姫野さんが尋ねてきた。
「黒羽くん、この道具屋さん知っているの?」
僕は姫野さんの方を向くと頷いた。
「ああ、昔の知り合いがやっている道具屋なんだ。でも、僕が知っている時から随分と繁盛したようだね」
「へぇ」
姫野さんが感心した様子で僕を見ている。と、その会話をリカルダは不思議そうな顔で見ていた。
「ちょっと待って。あなた、この町に来るのは初めてのはずでしょ?」
僕はリカルダの問いを無視した。
「さあ、入ろう。実はこの道具屋には道具を買いにきただけではなく、その昔の知り合いに会いに来てんだ」
「昔の知り合い……?」
姫野さんが聞き返した。
「うん、まあとりあず入ろう」
僕たちは道具屋に入ると中は大勢の人でごった返していた。
「すごい人ぉ」
姫野さんがたくさんの人に驚いている。僕はこの道具屋の女性従業員らしき人に声をかけた。
「すみません。エレンミアさんは今もこの道具屋さんの店主ですか?」
忙しそうに働いている女性従業員だったが笑顔で答えてくれた。
「はい、エレンミアさんでしたらこの道具屋の店主であそこで品出しをしてますよ」
女性従業員が指をさした方向を見えると店主というには若すぎるぐらいの女性が一生懸命に品出しをしていた。
僕は女性にお礼を言うと店主の方へと歩き出し声をかけた。
「久しぶりだな。エレンミア」
僕の声に耳が長く尖っているとても可愛らしい女性がこちらを見た。彼女はエルフだ。
エレンミアが僕の方を見ると最初はわからないようだったがハッとした表情で大声で叫ぼうとした
「えええ! あ、あなた、も、もしかしてサリウ……」
そこまでの所で僕は咄嗟にエレンミアの口を塞いだ。
「しーー! エレンミア悪い。ちょっと頼みたい事があるんだ」