第百二十五話
エーリカが放った源魔氷竜神砲がクレアを巻き込みながら地面に直撃した。
地面からドゴンと大きな音がなるとあたり一面、ドライアイスが溶けたような白い煙がもくもくと立ち込める。
「フフフ、やったな」
「ええ、お姉ちゃん。さすがの勇者のツレでも私たちの魔法を何度も食らって生きている訳が無いわ。きっと粉々になって死んでるわね」
エーリカとカルラが白い煙が徐々に薄れていくのを余裕の表情で見ている。そして煙が消えて地面にバラバラ死体となったクレアの姿を想像した。
二人はまるで誕生日プレゼントの箱を開ける子供のような顔で煙が消えていくのを見ている。
だが、驚くことに、二人の願望と違うことが目の前で起きた。何とその薄くなっていく煙に立っている女性の人影が見えたのだ。
「ちょ、ちょ、待って。お姉ちゃん」
「そ、そんな。ま、まさか!」
煙が完全に消え、その人影の正体がわかるとエーリカとカルラはまるで幽霊でも見たかのように青ざめた顔をする。
「フフフフフ、あんた達ねぇ。そんなフラグ立ててたら私が確実に生きてることになっちゃうって。ハハ笑える」
自身の魔法をまともに食らって平然としているクレアをみて二人は唖然としていた。
「て、てめー、なんで生きてる。そ、それにその青い眼は何だ! 貴様、何者だ!」
カルラはクレアが生きていた事にも驚いたが、煙が消え現れたクレアの目が青く輝いている事にも驚き、
思わず質問をした。
クレアはカルラの質問に正直に答えた。
「あら? あんた達知らないの? これは『蒼目族』特有の目。私は『蒼目族』なのよ。知ってる? 『蒼目族』?」
「な、なに、あ…… 『蒼目族』だと、貴様があの『蒼目族』!」
「お姉ちゃん!あいつがあの伝説の『蒼目族』であれが覚醒だとしても『蒼目族』の覚醒の時間は短い。私たちの素早い動きで撹乱すればあいつの覚醒はあっという間に時間切れになるよ!」
カルラの言葉を聞いてエーリカはほくそ笑んだ。
「そうか、そう言えばそうだったな。確かそうだった! カルラ、ならば行くぞ! 奴を撹乱して時間を稼ぐんだ。それとあいつは私の魔法を食らっても無事なほど頑丈なやつよ。気をつけろ!」
「オッケー!」
「行け!」
カルラが超スピードでクレアの周りを走り出した。
そのカルラをクレアは目で追う。
「おっと、妹ばかりに気を取られているとこっちがおろそかになるよ!」
そう言いながらエーリカがクレアの真正面から長爪で攻撃してきた。
ガキン!
すぐさまクレアは自身の弓武器を剣に変え、爪攻撃を受ける。と、その瞬間、カルラが後ろから攻撃してきた。
「ぐお!」
攻撃してきたカルラの鳩尾にクレアは後ろ蹴りを食らわせた。カルラは苦しそうな表情で呻き吹っ飛ぶ。
そして、今度はエーリカの鳩尾に前蹴りをクレアは食らわせるとエーリカも苦しそうな表情で吹っ飛ぶ。
「つ、つえぇ」
「カルラ、しっかりして。撹乱を続けて!」
「おう!」
カルラはすぐに起き上がり、先ほど同様超スピードでクレアの周りを移動する。
だが、同じ手は通用しなかった。驚く事にクレアはカルラ以上のスピードで移動し、簡単にカルラを捉えてしまった。
「なに!」
驚いたカルラだったが、その表情はすぐに苦痛に歪んだ顔に変わった。クレアの膝蹴りがカルラの鳩尾にヒットした。
「うぐっ」
カルラはその場にうずくまる。
「カルラ!」
エーリカがカルラの助けに向かおうとした。が、その瞬間、目の前にクレアが立っていた事に気づいた。
「い、いつの間に!」
クレアがエーリカの胸に掌底を当てると、エーリカは勢いよく後方に吹っ飛んだ。
「こ、これが『蒼目族』の覚醒、つ、強い……」
エーリカはクレアの強さに驚愕していた。
「お、お姉ちゃん。大丈夫!」
カルラが苦しそうな表情で立ち上がり、エーリカに声をかける。
「ええ、で、でもおかしい。そろそろ覚醒は時間切れのはずだ…… なぜ、まだ目が青いままだ」
エーリカが不思議そうに言うと、クレアはフッっと笑い種明かしをする。
「それは私と龍斗が修行したとある地下にあったアイテムのおかげ、そのアイテムの名は『能力強化の指輪』。この指輪は個々の特殊能力の効果を通常の5倍に引き上げることができるのよ。この指輪のおかげで私の覚醒はあと10分は持つわ」
「な、なんだと!」
エーリカとカルラはクレアの言葉を聞いて悔しそうに下唇を噛む。その二人の表情を見てクレアは口角を上げながら言った。
「さあ、そろそろ終わりにしましょう」