第百二十二話
「やっと、来たか。勇者さん」
「待ちわびたよ。勇者さん」
リカルダに飛ばされた亜空間は無限に広がる真っ白な空間だった。
そして、僕に声をかけてきたのはジャンの部下、エーリカとカルラだ。
僕は後ろを振り返りエーリカとカルラと対峙する。
「お前らは確かジャンの部下でエリノルさんとルイさんに倒された双子か。二人から聞いているぞ」
エーリカとカルラはエリノルとルイ、二人の名前を聞いて不機嫌な表情をする。
「チッ あの二人か、私達を殺しやがってあの時の礼はいつかしなきゃね。だがその前にお前だ」
エーリカがそういうと自身の背中にある大剣を抜いた。それに続いてカルラも腰に帯刀している。細身の片手剣を抜く。
「お前ら程度に構っている暇はない。さっさと終わりにしよう」
そう言いながら左手を高々とあげると僕の体が光り輝く。
「うお、な、なんだまぶしい」
エーリカとカルラが輝く僕を眩しそうに顔を背けた。光はしばらく煌々と輝く、そしてしばらくして光が消えると僕は全身に鎧と腰に剣を帯刀した状態で現れる。その姿を見て二人は驚いた表情を浮かべた。
「ほう、武器や鎧を変身装着できるのか。大したもんだ」
全身に鎧と剣を装備した僕の姿を見てエーリカが感心したように呟く。
「さあ、こい!」
僕が剣を構えるとエーリカとカルラも剣先を僕に向ける。すると突如、どこからともなく女性の声が聞こえた。
「ちょっと待って、龍斗。その双子は私が相手するわ」
「誰だ!」
その女性の声に驚いたエーリカとカルラが辺りを見回すが誰もいない。
「クレアさん」
僕がクレアさんの名を呼ぶと僕の髪の毛の隙間から1センチほどの小さな女性がひょこっと顔を出した。
「龍斗、時間がないわ。その双子は私が相手するからここから出て姫野さんの元へと向かいなさい」
その1センチほどの小さな女性はクレアさんだ。彼女は僕の頭から飛び降りるとすぐに元の大きさに戻った。
僕はモンジュ村のダンジョンで手に入れた体を小さくできる杖、「スモールワンド」を使ってクレアさんを小さくさせて僕の頭の髪の毛に隠れさせていたのだった。
クレアさんは呆れ顔で僕を見ながら言う。
「全く、こんな所に飛ばされるなんて油断しすぎよ、龍斗」
「悪い、クレアさん……」
「まあ、いいから早くここから出て姫野さんを助けて」
「わかった」
僕が頷くとエーリカがニヤニヤと笑いながら話しかけてきた。
「おいおいおい、何言ってんの? あんたここを何処だかわかってるの? ここはリカルダが作り上げた亜空間よ。どうやってここから出るつもりなの?」
エーリカの問いにクレアさんがニヤッと口角を上げ答える。
「それは簡単よ、私がこの亜空間に穴を開けてそこから龍斗を脱出させるのよ」
「あ?お前にそんなことできるわけねーだろ?」
カルラがクレアさんを睨みつけながら言う。
「できるわけない? そうかしら?」
クレアさんがそういいながら右手をあげるとその右手が光り輝く。
「またかよ」
エーリカが眩しそうに視線を逸らし毒づく。
光が消えるとクレアさんは弓武器『天之麻迦古弓』を手にしていた。
そしてすぐさま弓を引くと地面に向かって矢を放った。
矢が地面にぶつかるとドン!という大きな衝撃音が鳴り、地面に穴があいた。
「なんだと!」
地面の穴を見てカルラが驚きの声をあげる。
「残念、私の矢にはどんな空間も突き破る特殊な効果が付与されているのよ。さあ、龍斗、行って」
「ああ。頼んだ」
僕はクレアさんの腕を信用している。なので、迷わずその穴に飛び込んだ。穴はまるで無限に続いているかのように深かった。
「ちくしょう! 逃げやがった!」
そして、僕が穴に飛び込んだ瞬間、カルラが叫んで追いかけようとするのが見えた。
だがその瞬間、クレアさんが風魔法でカルラを吹っ飛ばしていた。
「任せたぞ、クレアさん」
僕はエーリカとカルラの相手をクレアさんに任せて姫野さん救出に向かって穴を落ちていった。
お待たせしました。いや〜、なかなか忙しく更新が出来ずにすみません。
7月も忙しく毎日投稿は難しいですが、なんとか頑張りますのでよろしくお願いします。