第百二十話
武術大会の祝賀会はとても美しく絢爛豪華な宮殿で執り行われた。
「すげー、なんて煌びやかな宮殿だ。うわ!なんだ美味そうな料理!」
目の前に広がる豪華な料理を僕は遠慮なく食べると舌鼓を打った。
「うんまぁ〜〜い!」
周りにいる貴族たちは僕の事を見てクスクスと笑っている。しかし、僕はそんなことお構いなしでどんどんと料理を平らげていく。
「こんな美味い料理、遠慮していたら勿体無い」
僕は一心不乱にバクバク料理を食べる。すると少し離れた所から人々の歓声が聞こえた。
「ん?」
声がした方向を見る。どうやらウリアンと姫野さんが祝賀会の会場に登場したようだ。人々の歓声は二人に向けたものだった。
来たな…… 僕はモグモグと料理を食べながらチラリと二人を見る。
「みなさん、本日は我がゴランダ帝国の武術大会の祝賀会にお越しいただき、大変感謝いたします。存分に楽しんでいってください」
ウリアンの挨拶に周りの貴族たちが笑顔で拍手する。そして料理を食べ始めたりお酒を飲み始めたりするとガヤガヤと雑談をしだす。
祝賀会は大変な盛り上がりを見せていた。すると豪華な王座に座っていたウリアンが立ち上がり貴族たちに大きな声で話しかける。
「みなさん、盛り上がっている最中、大変申し訳ありません。王妃のハルカは現在、身重の大事な体です。今日の祝賀会はここまでにして、部屋に戻って休ませたいと思うのですが、よろしいでしょうか?」
ウリアンが微笑みながらそう言うと貴族たちは拍手で答えた。
「ありがとうございます。さっ、ハルカ。部屋で休んでなさい」
ウリアンに促されると姫野さんは笑顔を見せ、そして皆にお辞儀をすると、会場を後にした。
姫野さんがウリアンと仲睦まじい様子を見て僕はいたたまれない気持ちになった。
クソッ! ウリアンめ、姫野さんに何をしたんだ……
僕は憎悪の眼差しを一瞬だけウリアンに向けたが、すぐに思い直し無表情になりソッポを向く。
ぐっ、しまった…… 一瞬だけ我慢できず殺気をウリアンに放ってしまった…… 気づかれたか……
僕は気になって横目でチラリとウリアンを見た。しかし彼はこちらの放った殺気には気づいていないようだ。
危ない、危ない。怒りを抑えろ。感情をコントロールするんだ。ここで僕の存在が気づかれたら一巻の終わりだぞ。
僕は心の中で自分に叱咤した。
そして、そろそろ祝賀会も終わる頃になった。
おかしい…… もう祝賀会も終わるぞ。僕は少し焦りの気持ちでいると、一人の兵士が僕に話しかけてきた。
「 古井様」
僕は兵士の方を向く。
「なんですか?」
兵士は僕のそばにきて耳打ちするように話しかけてきた。
「今回の武術大会、古井様のおかげで大変な盛り上がりを見せました。なので、ウリアン王が直々にお礼を申し上げたいとのことで別室に来ていただいてもよろしいでしょうか?」
ホッ やっとか……
「ああ、もちろんいいとも」
僕は兵士に促され会場から出る。そしてしばらく宮殿の広い廊下を歩いていると大きな扉が見えた。
「あちらの部屋で王は待っています」
大きな扉の前に立つと扉の横に立ってた見張りの兵士が扉を開けた。
「さあ、どうぞ」
僕は兵士にお礼を言うと部屋に入った。部屋は金箔の装飾の施された豪華な作りをしていた。おそらくここは玉座の間だろう。
僕は赤く広い絨毯の上を歩き進んでいく。するとその先に玉座が見えた。そしてその大きく豪華な椅子にはウリアンが和かな表情で座っていた。
ウリアンは僕が近くにくると和かな表情のまま声をかけてきた。
「古井よ。この度の武術大会そなたのおかげで大変盛り上がった。礼を言うぞ」
僕は頭を下げた。
「大変ありがたきお言葉、手前の未熟な腕でウリアン王を喜ばせることができ、大変光栄でございます」
「いや、いや、未熟なんてとんでもない。世はお前ほどの実力者は見たことがないぞ。謙遜する必要はない。それでな古井よ、大会を盛り上げてくれたお前に褒美を与えようと思うのだ」
「褒美? とんでもございません。このような豪華な祝賀会に呼んでいただいただけで十分です」
「遠慮するな。私はこの褒美をぜひ、お前に受け取って欲しいのだ」
「そこまでおっしゃるのなら…… 断るのは逆に失礼に当たります。喜んで頂戴いたします」
僕の言葉にウリアンは満足そうに頷いた。
「おい、褒美をここに持ってこい」
ウリアンは近くにいた兵士に声をかけると兵士はお辞儀をして褒美を取りに行った。
「フフフ」
ウリアンは嬉しそうな顔で僕を見ている。そしてしばらくすると先ほどの兵士が戻ってきた。僕は兵士の後ろにいる人物を見て飛び上がりそうなくらい驚きそうになった。
「どうした? 古井、何かびっくりしているようだが」
ウリアンがニヤニヤと笑いながら僕に話しかける。
「いえ、何も……」
僕は誤魔化した。
「そうか、古井よ。さあ、褒美だ受け取れ」
ウリアンがそう言うと兵士の後ろにいる人物が僕の方に近づいてきた。
「ウリアン王、褒美とは…… まさか、この方ですか?」
ウリアンの差し出した褒美に僕はとうとう驚きの表情を隠せなかった。
僕の驚きの表情をウリアンは楽しそうに見ている。そして衝撃の言葉でさらに僕を驚かせた。
「そうだ、お前の知り合いだろう。そのリカルダは」
そう…… 差し出した褒美とはリカルダの事だった。
久しぶりの投稿です。前もお知らせしましたが、現在、転職活動中にて引き継ぎやらなんやらで大変忙しい状況です。とりあえず6月中は日曜休日なので何とか月曜日は更新できそうです。
7月の中旬になれば落ち着くので何とかそれまで滞る更新を我慢していただけると助かります。