表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

117/161

第百十七話

 

「おら!」


 僕は朝霧に向かって右のストレートを放った。しかし、朝霧は尋常じゃないスピードで僕のストレートを呆気なくかわす。そしてかわすと同時に僕の顔面に右の回し蹴りを放った。


「うおっ」


 僕はその回し蹴りを思いっきり食らって吹っ飛ぶ。


「きゃ〜〜〜 素敵!! 智也樣!!」


「結婚して!智也樣!!!」


「死にさらせぇぇぇ!! 古井!!」


「古井ぃぃぃ! 貴様には死すら生ぬるいわ!」


 朝霧が僕の攻撃をかわして攻撃をヒットさせるたびに女性の黄色い声援と怒号が飛ぶ。

 

 しかし僕は諦めず何度も何度も朝霧に攻撃を繰り返す。だがその度に避けられ攻撃を食らう。その繰り返しに彼は呆れたようだ。


「おいおいおいおい、せっかく決勝戦なのに物足りないなぁ。君の実力はその程度なのかい?」


 そんな呆れ顔の朝霧に僕はニヤリと口角を上げながら答えた。

 

「そうだな、そろそろお遊びも飽きたな。じゃあ、少しだけ本気を出してみるか」


 僕の言葉に朝霧の眉がピクリと動いた。


「ほう、少しだけ本気、って事は今までは本気じゃなかったって、フン、とんだ負け惜しみを言うもんだね」


「朝霧…… とか言ったな、お前のその素早さは確かにすごい。恐らくお前の職業は騎士系の最上位職業『神聖十字騎士』だな」


 朝霧の表情が強張る。どうやら正解だったようだ。『神聖十字騎士』は武闘家系の最上位職業の『獄魔導拳士』と同じく素早さのステータスが異常に伸びる職業だ。


 そして朝霧のレベルはカンストまでしてなくてもかなり高いレベルだろう。


「私の職業を当てたのは褒めてやろう。しかし、それがわかったから何だというのだ。わかった所で僕には勝てないのはわかりきっている」


「それはどうかな?」


 確かに流石にレベルカンストした僕でも『神聖十字騎士』の素早さには敵わない。


 だが、敵わないのは素早さだけだ。それ以外は全てにおいて僕が優っている。


 ならばその素早さを活かせないようにすれば良い。


 僕はおもむろに右手を上げ、思いっきり地面を拳でぶっ叩いた。


 ドゴーーン!!!


 地面がまるで大きな地震でも起きたかようにグラグラと揺れる。


「きゃーー」


「うわぁぁ、地震だ。でかいぞ!」


 僕が地面を殴っておこした地震はコロッセオ全体をも揺らしため、観客達が騒ぎ出した。


「な、何だ。この力は、ば、化け物か!」


 朝霧は立ってられないほどの揺れにまるで酔っ払いの千鳥足のようにふらふらとよろめいている。


 そして朝霧のその表情には恐怖の色が見えた。


 僕はそれを見逃さなかった、素早く朝霧の目の前に移動する。


「き、貴様」


 朝霧はすぐさま移動しようとしたが、地面が揺れているので思うように動けない。


「フッ、流石のお前もこの状況では素早く動く事はできないようだな」


 僕はそう言うと朝霧の鳩尾に左右の突きを何度も食らわす。


「ぐぬおおおお!!」


 手加減したが地震を起こすほどの僕の突きを何度も食らった朝霧は苦しそうな声を上げながら白目をむいた。


 そしてその場に崩れ落ち気絶する。僕の勝利だ。


「審判!」


 地震がおさまり僕は審判に声をかけると、尻餅をついて怯えた表情の審判がハッと正気に戻り起き上がると朝霧の方へ駆け寄り彼の気絶を確認する。


「勝者! 古井 巧!!」


 審判は僕の右手を上げて勝ち名乗りを上げた。決勝戦は僕の勝利で幕を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ